幕山での梅見物を終えて、午後は美術館に出掛けた。一度、行ってみたいと思っていたところ。湯河原駅から奥湯河原方面のバスに乗って、10分もすると湯河原町立美術館に着く。美術館内に”平松礼二館”があり、常設館もある。小さな美術館だが、これまた、唯、美しくの作品がいっぱいだった。
平松礼二館では”ジャパンデザイン/かざりの美学”展、そして常設館では”美・人”展の企画展示が開催されていた。
まず、平松礼二について。鎌倉にお住まいで、毎年、ぼんぼり祭に作品を出されている。それに、ぼくが箱根に行くと必ず寄る、成川美術館ではよく平松作品を観る。文芸春秋の表紙絵も10年ほど担当されていた。山種美術館賞、MOA岡田茂吉大賞も受賞している。
作品は、鮮やかな色彩で、装飾画的に描かれる日本の自然が多い。まさに飾りの美学、ジャパンデザイン。うっとりするくらい、唯、美しく。山水ジャポン、紅白富士、松竹梅ジャポン、海を渡る、などの作品がずらりと。さらに、梅のシーズンに相応しく”梅”の特集展示も。たぶん、幕山梅林を描いたと思われる、”梅の宴”(絵ハガキ購入)など5点。
そして、平松礼二というと、モネの睡蓮。パリ郊外のジベルニー村に四季折々に訪ね、そこの睡蓮を描いた。後に、モネ財団から”モネの池の睡蓮の株”を譲り受けた。その株分けが、ここの庭園の池に。睡蓮の咲く頃、また訪ねてみよう。
庭園の、睡蓮の池。寒桜も咲いていた。
平松礼二 ”梅の宴”
平松礼二 ”海を渡る”
そして、”美・人”展では、ポスターを飾る、室井東志生の”月映”や深水に師事した立石春美の”黒楽”などの美人画を楽しめる。そして、常設展でびっくり。竹内栖鳳の作品がずらりと並んでいる。何故かというと、栖鳳は、この付近の天野屋という旅館に逗留し、東本願寺の障壁画を作成していた。その後もここが気に入って、敷地内にアトリエをつくり、(リューマチの療養もあって)10年間ほど、亡くなるまで晩年を過ごしたのだ。そのアトリエはその後、安井曾太郎が引き継いだ。湯河原ゆかりの画家なのだ。ついでながら、平松礼二は曾太郎を尊敬していて、文春の表紙絵も曾太郎から何代かのちに引き継いだ。
六曲一双屏風の”喜雀”が目を惹く。28羽の雀が背景のない金屏風に描かれ、そのうち、22羽が左隻に、という面白い構図。対照的に動と静を表しているとのこと。金を拾う雀という、おめだたいものだそうだ。”うさぎ”のカワイイことったら。これぞ、栖鳳って感じ。絵ハガキもあったので購入した。そうそう、旅館で愛用してたという、鉄瓶に”風竹”を描いたものもありましたよ。
竹内栖鳳 ”宇佐義”
午前は梅見、午後は美術展と、”唯、美しく”の一日だった。湯河原はまだまだ見所がありそうなので、奥湯河原も含めて、いつか、探検してみようと思った。