ぶらり大阪の最終日は、朝から雨だった。4時の新幹線までたっぷり時間がある。ホテルでゆっくりしてから、環状線と東西線を乗り継いで、お昼前に藤田美術館に着いた。ここも、大阪に来たときには必ず寄るところ。
大阪大空襲で唯一残ったという藤田家の蔵をそのまま美術館にしているので、お宅に伺い、美術品を見せてもらっているという感じ。おまけに、その日は観客も少なく、ぼくら二人だけでワンフロワーを独占している時間帯もあった。そこで、目にしているのは、国宝とか重要文化財の名品ばかり。こんな贅沢はどこを探してもないな、と幸福感が胸に満ちあふれた。
60周年を記念して、3月からはじまった特別展は、6月15日までは、その”序章”である。序章といっても、前座クラスが展示されているというわけではない。いきなり真打登場のすごいラインナップなのだ。
漆黒に映える瑠璃色の宇宙と形容された、国宝・”曜変天目茶碗”もあれば、その横には、重文・白縁油滴天目茶碗がある。これに匹敵するのは、静嘉堂文庫美術館の国宝・曜変天目と重文・油滴天目のコンビくらい。ぼくは、どちらも観ていて、一度は東に軍配を上げたが、ここへ来て観ると、やっぱり西も負けない!水入りの引き分けとしよう、と考えを改めた。
曜変天目茶碗
白縁油滴天目茶碗
2階展示場にはこれらを含めて10点だけが置かれているというぜいたく。竹内栖鳳の”大獅子図”が向かいの壁で吠えている。東京の栖鳳展でみたライオンとよく似ている。ワイフはこれが気に入っている。
菱川師宣の”大江山酒呑童子絵巻”。源頼光らが、鬼たちに毒の入った酒を飲まして、退治する場面。今、描いたみたいにあざやかな色彩。
長澤蘆雪の”幽霊髑髏子犬白蔵主三幅対”もここ。応挙の弟子らしくそっくりな幽霊(笑)。
柴田是真作の筆筒や蕪村の猿鹿図双幅もここ。
そして、一階に降りると、また国宝が。玄奘三蔵絵。唐時代の玄奘三蔵の一生を描いた全12巻のうち第5巻。鎌倉時代14世紀の作。うつくしい彩色にびっくり。興福寺大乗院が所蔵していたもので、門主交代のとき、新門主が閲覧をゆるされたという特別な絵巻という。ありがたく拝見。
重文も5点。 継色紙(伝小野道風)、駿牛図など。
小倉色紙 (藤原定家)。 小倉百人一首の基になったもの。茶人の武野紹鴎が初めて茶席に掛けた和歌として知られてるとのこと。
こうして至福の時を過ごした。
蔵の美術館。隣の多宝塔も戦災を逃れた。
隣接する、藤田家の敷地内の太閤園の和食レストランでお昼を食べたのでごわす。もちろん、大徳利も。ここでも至福の時を過ごした。