おはようございます。昨日は藤沢浮世絵美術館へ。コロナ明け、はじめての訪問。厳重な関所を抜けると、そこは、華やかな”御上洛東海道”シリーズが並び、さらに艶やかな美人画も。どれから書き始めたらよいかと思うが、まず一番、印象に残った国貞の美人画、五衣色染分から。今、刷ったばかりのようなきれいな色。そして、画題の通り、五行説で重要な色とされている青、赤、黄、白、黒の5色の衣装をつけた美人たち。いずれも、有名な歌舞伎の登場人物のように描かれている。では、ご覧ください。
五衣色染分 黄
黄:お熊(『梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)』より)
黄色地に縞模様の黄八丈の着物を着た、材木問屋の娘である「お熊」が描かれている。この演目は「髪結新三(かみゆいしんざ)」の愛称で現在も親しまれていて、ぼくも見たことがある。左下にあるのは髪結いの道具で、物語の主人公、髪結い新三を象徴している。お熊は、店の手代である忠七と恋仲ながら、親に無理に縁談を結ばれそうになる。それを新三が聞いていて・・・。

五衣色染分 黒
黒:小梅(こうめ)(『隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)』より)
本作に描かれた美人は、侠客、梅の由兵衛の妻、小梅。歯には既婚女性の証である“お歯黒(はぐろ)”が見られ、褄の部分には梅の紋様が配されている。また着物はカラスの柄となっており、黒の色と対応している。

カラスの模様。

五衣色染分 青
青:照手姫(小栗判官の物語より)
小栗判官は一度毒殺され、蘇生したものの餓鬼(がき)のような姿になってしまう。この作品では、餓鬼状態の小栗判官を、照手姫が熊野の温泉まで荷車に乗せて引いていくという場面が描かれる。照手姫は物語中、”常陸小萩”と名乗り遊女屋で下働きをしたという話があることから、着物の柄として萩が配されている。なお、着物の色は緑に見えますが、江戸時代はこの色も青に含めている。

五衣色染分 赤
赤:八重垣姫(『本朝廿四孝』より)
華やかな赤い振袖を着た「八重垣姫」が描かれています。なお『本朝廿四孝』などの時代物の歌舞伎に登場するお姫様を“赤姫”と呼び、赤い着物を着ることが定番となっている。八重垣姫は上杉謙信のひとり娘、また武田信玄の息子、勝頼の許婚でもあるという設定。手に持っているのは武田家の宝の一つ「諏訪法性(すわほっしょう)の御兜で、物語中の重要なアイテムの一つ。兜の白い毛部分や着物の裾には空摺りが施されている。空摺りとは版木に絵の具をつけず、刷り圧だけで紙面に模様をつける技法のこと。

五衣色染分 白
白:役名未詳
白地に絣(かすり)の着物を着た美人が描かれています。役名は未詳ですが、髪型から芸者であると考えられ、屋根舟の後方に立ち、扇子を口にくわえながら帯を直すという仕草で描かれている。空には満月が輝き、その下の橋は、竹材問屋が見えることから江戸の京橋と推定されている。


それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!