「映画『靖国』公開を巡りなにが?」という番組を見た。
映画「靖国 YASUKUNI」公式サイト
750万円の文化庁所管の日本芸術文化振興会の助成を受けて作成された
映画「靖国」を週刊誌が「反日映画」と取り上げ、
稲田朋美衆議院議員が映画を見たいと言い出し、
これを受けた右翼が街宣車で抗議して、映画館に上映中止を迫った。
文化庁は、「政治的なものを扱っていても政治的意図はない」と
助成金の要件を満たしているとの見解。
当初上映を予定していた映画館は、次々に「上映中止」を決めたが、
上映の実現に向けての動きもある。
この話、どこかで聞いた筋書きだと思ったら、
福井・焚書坑儒事件や、国分寺やつくばみらい講演中止事件と同じ構図だ。
「保守系マスコミと右翼と政治家の介入」の三位一体で、
圧力をかけ自粛を迫る。
この手法、いまに始まったことではない。
昭和天皇死去の前後の自粛騒動のときや、
ゴルフ場問題などの環境問題でも経験済み。
気に入らないことがあると、言論ではなくて暴力的な手段で、
市民を「触らぬ神にたたりなし」いう不安に陥れるのが狙いだ。
そのうえ、「自主的に」中止したのだとうそぶく。
解決方法はひとつ。自粛しないでさいしょから毅然とした対応をすること。
今回の映画「靖国 YASUKUNI」めぐる動きでは、
その後、映画は上映され、月刊誌がすばやい特集を組んでいる。
『創』6月号/映画「靖国」上映中止騒動
配給強力・宣伝会社「アルゴ」担当者の思い
『論座』6月号/映画「靖国」騒動への疑問
『論座』6月号には上野さんも寄稿し、
ご自身が経験した具体的事例を挙げて論じている。
自主規制という名のファシズム 上野千鶴子
年寄りよ、早くくたばれ!が政治家と官僚の本音~この週刊誌がすごい71
元木 昌彦(オーマイニュース 2008-05-01 )
・・・・・・・月刊誌だが論座「『靖国』騒動への疑問」の中の、上野千鶴子さんの論文「『自主規制』という名のファシズム」が必読。のっけから「この国に『言論の自由』はない」で始まり、言論の自由が抑圧され、奪われていることを具体例として挙げて書き、最後にこう結ぶ。
「権力にとってノイズになる情報はシャットアウトし、情報を『自主的に』一色に変えていく……これをファシズムと言わずして何だろうか」
この危険な時代に、大声で警鐘を鳴らすことこそ週刊誌本来の役割ではないか。怒りを忘れ、権力と対峙することを放棄してしまった週刊誌など、新聞テレビと同じではないか。
人気ブログランキングに参加中
応援クリックしてね
字数が制限の1万字を越えそうなので、以下に関連の2紙だけ紹介します。
憲法記念日に表現の自由問う 映画「靖国」一般公開 朝日新聞 2008年05月03日 論議を呼んだドキュメンタリー映画「靖国」がこの日、各地に先がけて東京・渋谷のシネ・アミューズで一般公開された。 初回開始前から券を求めて列ができ、夜までの全上映回分が午後2時半ごろに完売。不測の事態に備え、スクリーン近くには警備員が観客と向かい合う形で座り、私服警官もそばで警戒した。夜までに英語字幕版を含めて8回上映された。渋谷署によると、大きな混乱はなかった。 午前6時に一番乗りした東京都文京区の大学生笹木陽介さん(18)は「話題が先行したが内容は過激ではなかった。なぜ問題になったのだろう」。元裁判所書記官の男性(75)は「この内容でなぜ上映中止にしたいのか分からない。国会議員が事前に試写を求めたのは思想検閲だ」と話した。公務員の夫と訪れた都内在住の女性(51)は「上映されてよかった。これをやらないなら日本は言論の自由がない国になってしまう」と語った。 上映を決めている各地の映画館でも準備が進む。 大阪・十三の「第七芸術劇場」は10日から上映する。松村厚支配人は「表現の自由を守ろうという大層なことではなく、映画館は上映してなんぼ。実害がないうちに中止すべきではない」。中止要求や抗議はなく、逆に上映時期などの問い合わせが急増した。「上映中止が相次いだと思えば、報道で取り上げられ『見たい』と電話が殺到した。流されやすい空気は怖い」 24日から上映する広島市の映画館「シネツイン2」の蔵本順子社長(57)は「内容に賛否があってもまず見てから議論するのが民主主義」。上映中止問題をめぐるメールや電話などは約200件に上る。95%は好意的内容だったが、「(上映中止に)応じないなら、こちらにも考えがある」という脅迫めいた電話もあった。でも、周辺の店やビルのオーナーらにあいさつに行くと、「気にせず頑張って」と励まされた。 京都シネマ(京都市下京区)は6月7日から上映。神谷雅子代表は「見てどう思うかは一人ひとり違うし、映画とじっくり対峙(たいじ)してもらえれば」と話す。3月末~4月上旬に約50件の電話やメールが寄せられた。抗議的な意見も1割弱あったという。 (2008.5.3 朝日新聞) |
現代かわら版 本当に怖いか 民族派政治団体 上映中止はなぜ?「靖国」に広がる波紋 (北海道新聞 2008/04/17) 大音量で軍歌を鳴らし、黒い街宣車がやって来るのではないか-。靖国神社を題材にしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓(リイン)監督)が全国各地の映画館で上映中止に追い込まれているのは、民族派の政治団体などの抗議活動を恐れているためだ。上映中止は「表現の自由の危機」との声が上がり、上映を決める映画館も出てきたが、道内は苫小牧市の「シネマ・トーラス」の一館にすぎない。政治団体は、そんなに怖いのだろうか。(佐藤千歳) 記憶に過去の暴力事件 「何をされるか分からないから、対応の方法も分からないんです」 「靖国」の上映を一時検討したという道央圏の映画館の支配人は、民族派政治団体の怖さをこう表現した。 これまで、政治団体が「靖国」上映に反対し、街宣車による抗議活動を行ったのは、東京・銀座の映画館一館に対してだけ。多くの映画館は「トラブルが起きる可能性がある」などと、その「影」におびえ、上映中止を決めた。 だからといって、上映中止を過剰反応とは決めつけられない。連綿と続くテロ事件の記憶があるからだ。映画関係者が口々に言う政治団体の「怖さ」は、むしろ過去の記憶に起因しているようだ。 一九九八年、南京大虐殺をテーマにした中国映画「南京1937」の上映中、映画の内容に反発したとみられる自称・右翼の男がスクリーンをカッターで切り裂く事件を起こした。故・伊丹十三監督の映画「大病人」も九三年、右翼の男に同じような被害に遭っている。 映画に限定しなければ、古くは六〇年の浅沼稲次郎・社会党委員長の刺殺事件や、昭和天皇の戦争責任に言及した本島等・長崎市長(当時)の銃撃事件(九〇年)など、右翼思想を理由にした暴力事件は、枚挙にいとまがない。 「今回も場内で暴れられ、ほかのお客さんが巻き込まれる最悪の事態だって、絶対にないとは言えない。かといって警備をものものしくすれば、他の作品の客足にも響きますし」。冒頭の支配人は困惑を深める。 上映を決めたシネマ・トーラスの堀岡勇代表(55)も「そんなに神経質になるのはどうか」としながらも「何かあるかもしれない、という覚悟はある」と明かす。 街宣車による活動も、関係者の懸念材料になっている。 街頭での拡声器の使用は、条例で規制されている。札幌市の商業地域なら、音量が七五デシベル以下、時間は午前八時から午後七時まで(地域によっては午後八時まで)と決められ、違反の疑いがあれば、警察に対応を求めることができる。 だが、音量が規制値以下だったとしても、政治団体の黒い街宣車が乗りつけただけで、地域住民の目には異様な光景に映る。映画館の周辺の住民や事業所が、騒音の被害を訴える可能性もある。 札幌市北区の映画館「蠍座(さそりざ)」の田中次郎代表は「雑居ビルに入った映画館の場合、ビルの持ち主から『他の入居者に迷惑だからやめてくれ』と言われたら、作品の上映を続けることは現実的には難しい」と話す。 ただ、街宣車による抗議活動がもたらすのは、恐怖というより、「うっとうしい」「うるさい」という感情を周辺の住民に巻き起こし、映画館が住民感情に配慮する、という構図。右翼対策を担当していた札幌市のある職員は「経験から言って、ばらばらに対応せず、業界で団結して方針を決め、条例に基づいて断固として対応すれば、被害を抑えられる」と話す。 より深刻なのは、暴力への恐怖かもしれない。 蠍座の田中代表は「右か左かにかかわらず、自分が絶対正義だという、狂信的な暴力が一番恐ろしい。その対応を映画館だけに任せ、『萎縮(いしゅく)するな、頑張れ』と期待するのは酷な話。あまりにも荷が重すぎる」と本音を漏らす。 思想を理由とした暴力への対応を映画館任せにするのは、無責任ということだ。 では、暴力と、それが引き起こす恐怖に社会はどう向き合うべきか。新右翼団体「一水会」顧問で評論家の鈴木邦男さん(64)を訪ねた。 <「一水会」顧問 鈴木邦男さんに聞く> 四十年にわたって右翼・民族運動を続ける鈴木邦男さんは、映画「靖国」について「監督はよく勉強している。反日かどうかは問題ではない」と理解を示している。民族派政治団体と暴力の関係をどう考えるのか? 街宣車が右翼唯一の表現活動。発言の場与えたらやめる。 四十年にわたって右翼・民族運動を続ける鈴木邦男さんは、映画「靖国」について「監督はよく勉強している。反日かどうかは問題ではない」と理解を示している。民族派政治団体と暴力の関係をどう考えるのか? ――鈴木さんは持論として、「発言の場を与えれば右翼は怖くない」と主張しています。 「右翼を街宣車に逃げ込ませちゃいけない。右翼に思想を主張する『リング』を与えるべきです。例えば『靖国』の上映館に街宣車が来たら、『どうしてなのか』と運転席の活動家にマスコミが問いただす。駅前に街宣車の優先ゾーンを作って、右も左も好きなだけ思想を訴えさせる。そうすれば、誰も聞いていない街宣車より影響力が大きいから、右翼は街宣をやめます」 ――右翼による暴力の恐怖はなくなると? 「現状では、街宣車が右翼にとって唯一の表現活動です。届け出をして規制の音量を守っていれば合法です。それを『顔が怖い』『言ってる中身が怖い』と抑圧されると、暴力しかないと考えてしまう。スクリーンを切る以外に、新聞やテレビに出る手段がないと思い詰める。右翼が暴力に訴えるのは、非常に後退した理屈です。発言の場を用意すれば、思想を語れない『自称右翼』は淘汰(とうた)され、右翼の恐怖をそぐことができます」 ――右翼団体が、昭和天皇を撮った映画「太陽」には目立った行動をとらずに、「靖国」で行動に出たのはなぜですか。 「最初に『週刊新潮』が報道したからです。保守系の新潮が報道すると、右翼は『愛国者は何をしている?』と責められたように思ってしまう。右翼は保守系メディアを百パーセント信じますから。さらに国会議員が『反日映画』と指摘したので、国のために命を賭けている自分たちも戦わなければならない、と強く思ったんです」 ――日本の右翼団体には「行動右翼」の流れがあり、暴力も「肉体言語」と言い換えて行使してきた歴史があります。本当に、怖くない、暴力を使わないと言い切れますか。 「確かに、現在もテロを否定する右翼は少ない。それに右翼も多種多様です。『靖国』について右翼団体に発言の場を用意しても、百パーセント安全に上映できるとは言えません」 社会の右傾化ではない。行動で映画館を守るべき。 ――ではどうすればいいのでしょう。 「そこは社会が守るべきなんです。報道機関も、安全地帯から『表現の自由』と言っているだけではだめ。『靖国』の上映中止に社説で抗議した新聞社は、自社のホールで上映会をやるくらいの覚悟を持ってほしい」 「『靖国』をめぐる問題は、一つの問題提起です。右翼団体の行動を止められなかった私自身の責任も感じています。上映中止が社会の右傾化の反映という専門家もいますが、そんな難しい問題じゃない。それ以前に、『どんな不愉快な意見でも、発言の場を与える』『レッテルを張って言論を封じない』こと。そして、映画館を『だらしない』と責めるのではなく、行動で映画館を守るべきです」 <略歴> すずき・くにお 1943年、福島県生まれ。大学時代から右翼・民族活動を始める。産経新聞勤務を経て、一水会代表などを歴任。釧路の日ソ友好会館建設反対運動や北方領土返還運動にも参加。著書に「愛国者は信用できるか」「公安警察の手口」などがある。 ------------------------------------------------------------- <映画「靖国」をめぐる動き> 2006年 文化庁所管の独立行政法人が映画「靖国」に750万円の助成を決定 07年12月 「週刊新潮」が「反日映画『靖国』は日本の助成金でつくられた」と報道 08年 3月上旬 北海道から沖縄までの映画館で上映が決まる 12日 配給会社アルゴ・ピクチャーズ(東京)が、稲田朋美衆院議員(自民)らの求めに応じ、国会議員向け試写会を開催 20日 東京の映画館「銀座シネパトス」に、民族派政治団体の街宣車が押しかけ、上映中止を求めて活動 31日 東京、大阪の4館が4月12日からの公開中止を決定 4月 4日 アルゴが苫小牧のシネマ・トーラスを含む全国21館で上映すると発表 -------------------------------------------------------------- |
ホテルに2泊して、明後日帰ります。
記事はホテルからアップする予定。
ではまた。
人気ブログランキングに参加中
応援クリックしてね