連日最低気温は-5℃を記録している。梅の鉢をベランダに置いてあるが、この寒さのなかで花芽を膨らませている。生命の神秘とでもいうべきか、一年でももっとも低い気温に耐えて、花を咲かせそうとする姿はけなげである。
新島襄に「寒梅」という漢詩がある。今年のNHK大河ドラマの「八重の桜」に登場する新島襄は、一躍脚光を浴びた格好である。詩吟の吟題に採用され、愛吟する愛好家も多い。
庭上(ていじょう)の一寒梅
笑って風雪を侵して開く
不争わず又力(つと)めず
自ら百花の魁(さきがけ)を占む
新島襄は安中藩の江戸藩邸で藩士の子として生まれ、長じて欧米の知識を得るため国禁を犯して渡米し、クリスチャンになる。後岩倉使節団の通訳に採用され、認められて帰国する。帰国後は、京都に同志社大学を開いた。
新島襄は庭に梅を植え、これを見るのを楽しみとしていた。妻の八重も同じく寒梅を好んだ。八重は女の身でありながら、父の家業である砲術を身につけていた。新島襄はこんな八重を時代のさきがけとして、愛しんみ、畏敬の念すら抱いた。
この「寒梅」の詩を、八重を詠んだ詩として読むこともできる。大河ドラマは始まったばかりだが、これからどんな展開をみせるのであろうか。