低気圧が抜けると寒気が入ってくる、という予報のなか、村木沢出塩にある文珠山に登る。予報に違わず雪が降る。夕べの新雪は30センチといったところか。知恵の神社、文珠堂への道はすでに車の乗り入れは不可能だ。斜面では膝上の雪をラッセルしながら登る。この年になって知恵を授からなくてもよいようなものだが、文珠堂にお参りをする。堂の前には、木の枝に合格祈願の絵馬が沢山下がっている。
参道には数えきれないアジサイの株が植えられ、春を待つ芽が脹らみを見せている。雪は山の斜面を覆いつくし、穢れたもの一切を浄化している。鳥の鳴き声をも聞えず、時おり仲間たちの笑い声が響いてくるだけである。頂上への50mほどが急勾配になり、ラッセルするうちに汗をかく。約1時間で373mの頂上に着く。
この山から数キロのところに鳥海山がある。秋田との県境にある有名な鳥海山と同じ名だが標高531mのこの山は、自動車で行くことができる神社がある。ここもメイン道路から神社への林道は、除雪が行われておらず、文珠山よりもさらに深い雪をラッセルする。9名の仲間が交代でラッセルをするうちに神社の奥の院に着く。
ここから山形盆地を見下ろす展望はまさに墨絵のモノクロトーン。わざわざデジカメをモノクロのモードに変えなくとも、白と灰色の景色が広がっている。神社の縁起を書いた看板が立っているが、東北平定も目指した源義家の軍旗を霊鳥が飛び廻ったため、義家はここに鳥海大物忌神社を勧請して祀ったと書いてある。
午後になって気温が下がる。カンジキの紐は氷つき、雪で濡れたリュックも凍って固くなっている。東屋で小憩するも、寒さに耐えられず、早々に車へ引き返す。風が吹くと、木に着いた雪が引き飛ばされ、吹雪のように目の前を塞ぐ。山頂の神社から車まで35分ほどでたどりつく。中山町でラーメンを食べた後、「いきいきの里」で温泉。じっくりと疲れを流す。