
早いもので、一月も最後の日になった。寒い日を耐えたことへの褒美をもらうように、穏やかな陽気になった。日ざしはぽかぽかとして、青空に白雲が季節の変わり目を現すようだ。梅の鉢は花芽がピンクを増し、クンシランの花芽が急に伸びてきた。カトレアの花芽も順調である。
ところで一月の古名は、睦月である。ある俳諧師によれば、知人や親戚が集い合って、睦合うからむつびあう月だから、これを縮めて睦月だという解説がある。この伝でいけば、わが家など、知人はおろか親戚も訪れない正月であったから、むつばない月、縮めて睦月というところか。
明日から二月、古名では如月だ。こちらはまだまだ余寒が厳しく、衣をさらに重ねて着るところから、「衣更着」の意味だという解説がある。睦月といい、如月といい、古名に味がある。
はだかにはまだ衣更着のあらし哉 芭蕉
芭蕉の句は、増賀上人の故事による。上人は自ら着ていた小袖を乞食に与えた。それには、衣更着はまだ寒すぎる。節分の豆まきまであと3日、大寒も残り少ないが、古名からすればまだまだ冬服を脱ぐ季節は遠い。
山がひの杉冴え返る谺かな 芥川龍之介
冴え返るとは、せっかく暖かになったと思って喜んでいると、寒中のような寒さが戻ってくること言う。三寒四温をへて春がやってくる。