きのうの小春から一転して曇り、肌寒い日だ。鉄砲町の光禅寺の庭に、薮柑子の赤い実の傍らに寒椿が咲いていた。冬椿や寒椿は冬に花をつける椿をさしていう。普通、椿は春に咲くが、早咲きの椿をこう呼んでいる。
火のけなき家つんとして冬椿 小林 一茶
江戸の長屋住まいが長かった一茶にとって、冬椿が咲くころの寒い冬は苦手であったし、自らのわびしい境遇が身にしみる季節であった。同じ椿の仲間に山茶花や侘助があるが、こちらは茶人など風流をこのむ人たちから愛されてきた。
今年の春新潟の残雪の低山を登ったとき、雪椿がたくさん咲いていた。小林幸子の「雪椿」のメロディが懐かしく思い出された。椿の花を見ると、こんな一年の思いが浮かんでくる。
やさしさと かいしょのなさが
裏と表に ついている
そんな男に 惚れたのだから
私がその分 がんばりますと
背(せな)をかがめて 微笑み返す
花は越後の 花は越後の雪椿