常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

年の始め

2014年01月01日 | 万葉集


新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ 吉事 大友家持

きのうの紅白歌合戦で大トリを務めたのは北島三郎であった。歌は「まつり」。この歌の詩を作ったなかにし礼は、市川団十郎の「にらみ」の役割を北島の演歌でやりたかったとその作詞の動機を語っている。団十郎の「にらみ」は悪霊を払う霊力として演じられた。「まつり」を唄う北島三郎もまたこの霊力で世のまがごとや病気、災害を打ち払うものとして唄われたのである。紅白出場50回で身を引き、その場を次の世代に受け継いでゆく節目にふさわしい歌といえよう。

一夜明けて新しい年。万葉集の掉尾を飾る予祝の歌がある。雪はやっかいなものではなく、降り続けば豊穣を約束すものとして捉えられている。歌の意味は、「新しい年の初めの初春、先駆けて春の今日この日に降る雪の積もりに積もれ、佳き事よ」と解釈されている。いやしけは、雪が降るという実景があとからあとから絶え間なく重なる意の「しく」の命令形。いやさかなどに通じるものがある。

家持は雪が降る風景を豊作の予兆とみて、天皇に代わって豊年の予祝の歌を巻末の歌に据えた。きょう、山形は雨である。この予祝とは違った風景が見られるが、元日と初春が重なった暦の上の話だ。昨夜の北島三郎「まつり」が、今年のまが事を払う霊力として働くのかもしれない。
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