夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『成瀬は天下を取りにいく』を読みました。

2024年06月16日 | 映画(番外編:映画と読み物)
地震が起きたら本に埋もれて死ぬだろうと思うぐらい本だらけだった実家。
幼少期からその状態を見てきたので、私の家はそんなふうにはしまいと思い続けてきました。
5千冊ほどあった父の蔵書を片付けたところでほとんどは買い取り不可で、
まったくたいした金額にはならなかったから、余計にそう思う。
それなら家に溜め込まなくて済むように図書館で借りればよいのですけれど、
読みたいときに読みたい本が手元にないと嫌な性分の私は、本は買う派
 
買った本を自分で読んだ後は、希望者がいればお貸しするなり差し上げるなりしますが、
ほしいと思えばすぐに買うから、読む速度が追いつかず、とりあえず家の一角は本だらけ。
単行本だと置いておくのも場所を取るため、基本的にな文庫本しか買いません。
そうしていたのに、まだしばらく文庫化しそうにないこの本がどうしても気になり、
さらには「買ったら貸してほしい」という複数の声があったこともあって(笑)、
ついに買ってしまったじゃあないですか。
 
三浦しをん森見登美彦に衝撃を受けたという著者だから、私が気に入るのは必至。
 
西武大津店閉店のニュースを聞いて、夏休みを西武大津店に捧げることにした女子、成瀬。
捧げるって、何をするのかと思えば、野球に興味もないのに西武ライオンズのユニフォームを着て、
取材にくる地元ローカル局の番組に映り込むのですよね(笑)。
そんな成瀬になんとなくつきあう幼なじみの島崎。
 
30頁程度の短編6つ。
成瀬と島崎メインの章のほか、彼女たちの同級生の視点から成瀬が描かれる章だったり、
かつて西武大津店に世話になった40代の男性たちが閉店のニュースを機に集まる話だったり。
 
読んでいるときはめちゃくちゃいいと思っていたわけではありません。
が、時折ふきだしてしまうほど可笑しい。「ほなミルクボーイやないか」なんて、もうツボ。
成瀬と島崎の漫才は微笑ましくて好きでした。あ、上記の台詞はまだ漫才じゃないか。(^^;
 
「膳所高校」と聞いて私が思い出すのは、たぶん小学生のときのこと。
家族で東福寺へ墓参りに行った帰りに寄った駅前の寿司屋で観た高校野球中継は、
膳所高校が0-18で負けた試合でした。いま調べたら、1978年のことなんですね。
あの膳所高校だと思うと、と一緒に過ごしたことも思い出し、懐かしいような、寂しいような。
 
成瀬はいわゆる空気の読めない人なのかもしれない。
でも、誰にも迷惑をかけていないし、誰かを傷つけてもいない。
人の顔色を窺ったり、嫌われることを恐れたりしないで、こんな生き方をするのはありだよと言われているかのよう。
成瀬について話すときに楽しそうな島崎のことも大好きです。
 
残りの頁が少なくなるにつれ、どうかこのまま終わらないでほしいと思いました。
ゼゼカラ解散じゃなくてよかった。で、買っちゃいましたよ、『成瀬は信じた道をいく』も。

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2024年5月に読んだ本まとめ

2024年06月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年5月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1288ページ
ナイス数:490ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/5

■黒仏 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
今から今月ちぃとも本が読めていないことについて言い訳をします(笑)。先月母が亡くなり、父は施設に入所中のため、実家を退去すべく片付けています。賃貸マンションにも関わらず、父の蔵書は約5千冊。んなもん整理をしはじめたら、本を読んでいる時間はありません。それでもこれはどうしても読みたくて。仏壇をどうするかなども考えたから、仏像の話はタイムリー。しかしこの仏像はおぞましすぎる。人の命が永遠であればと思ったこともあるけれど、命は限りあるからこそのもの。たとえ呪物だって寿命はある。結束力を増したミカヅチ班が嬉しい。
読了日:05月11日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/21867089

■アトムの心臓 「ディア・ファミリー」23年間の記録 (文春文庫 き 49-1)
この1カ月ほとんど本を読めていないことの言い訳を先日しました。でも5冊は計上したいよねと薄い本を求めて書店に寄ったら、劇場に行く度に予告編を目にする映画の原作ノンフィクションが平積みされている。お手頃な厚さにも惹かれて購入しました。心臓疾患を抱えて生まれてきた娘のために筒井さんがチャレンジしたことは、正直なところ、専門的すぎてさっぱりわかりません。だからこそ、文系学部出身の彼が人工心臓をつくるために学んだという事実に驚く。外科医を質問攻めにしてついには医療機器を開発するまでに至る。救った命があるのですね。
読了日:05月16日 著者:清武 英利
https://bookmeter.com/books/21826790

■お梅は呪いたい(祥伝社文庫ふ12-2) (祥伝社文庫 ふ 12-2)
本作を読んでいる途中で公開中の映画『キラー・ナマケモノ』を観たら、お梅とナマケモノのアルファがかぶって見えて笑ってしまいました。テレビやスマホに興味を示すところなど。だけどアルファよりもお梅のほうがずっと愛らしい。五百年前は武将一族を呪い殺すほどの力を発揮し、ようやくこの世に復活できたのに空回り。人を呪い殺そうとすればするほどその人が幸せになってしまうという、呪殺マシーン形無しの展開に読んでいるこちらも幸せになります。焦るお梅が可愛い。野良猫に追いかけられて逃げ惑うシーンなんかはアニメ化してほしいような。
読了日:05月25日 著者:藤崎 翔
https://bookmeter.com/books/21812180

■侠飯8 やみつき人情屋台篇 (文春文庫 ふ 35-9)
大好きなシリーズの続編が知らぬ間に出ているじゃあないか。いったい何作目まで読んだのか思い出せず、本屋で第7作を手に取ってしばし悩む。早く読みたくて買いかけたけれど、ダブって買うことが最近ありがちだから思いとどまる。正解。未読なのは第8作以降でした。今回柳刃&火野コンビと出会うのは底辺ユーチューバーの浩司。閲覧数を稼ぐために激旨屋台に撮影許可を求めてみれば……。まるでイメージが違うのに、終盤、私の頭の中では藤井風の『満ちてゆく』が流れていました。人は如何に見返りを求めているものか。与え、差し出せば、満ちる。
読了日:05月28日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/19892854

■侠飯9 ヤバウマ歌舞伎町篇 (文春文庫 ふ 35-13)
同じ著者の本は続けて読まないようにしていますが、知らぬ間に2冊出ていることに気づいてしまったら居ても立っても居られず。間を空けて読むと誰だったか思い出せない登場人物もすぐにわかるから、続けて読むのはアリですね。振り返れば、第1作を読んだときはそれほどは柳刃に魅力を感じていなかったような。今はもうゾッコン。なぜだか当初から柳刃の声は私の頭の中でジェイソン・ステイサム。彼が日本語を話しているところなど聞いたことがないのに変だな(笑)。内容はいつもと同じと言えば同じ。でも好きだ。見返りを求めない人間でありたい。
読了日:05月31日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/21511945

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2024年4月に読んだ本まとめ

2024年05月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年4月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1523ページ
ナイス数:652ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/4

■夏の終わりの時間割 (講談社文庫)
200頁ちょいの薄さに反して内容は厚い。誰しも行動の裏には理由があるのですね。さらっとうわべを見ているだけではわからないことがある。そこに考えを及ばせたとき、本作で「何かを起こした人」それぞれの気持ちに想いを馳せると切なくなります。生活の節約術だったり蜂避けのおまじないだったりは初耳で目からウロコ。それがまた切ない要因。余談ですが、先月から母が危篤状態にあります。死ぬ間際の人は嘘をつかない。もともと嘘はつかない人だけど、病床でいま言うことは本心でしょうね。最期の時間を大事にしたい。
読了日:04月05日 著者:長岡 弘樹
https://bookmeter.com/books/18098406

■晴れときどき涙雨 髙田 郁のできるまで (幻冬舎文庫)
不思議なもので、何気なく読み始めた本に、いま自分が置かれているのと同じ状況の描写が出てくることがあります。同じ状況ならば気づくというだけで、不思議でも何でもないことなのでしょうけれど。先月からずっと母が危篤状態にあります。本作のひとつめの話『抱擁』で高田さんの心配ばかりしているPさんが母と重なりました。93歳の母が残る私の心配をするのはおかしいと思うのに(笑)。心配をする相手がいるのはきっと幸せなことなのですね。タイトルだけで心に刺さる。高田さんがこんな人生を送られてきたとは知らず。明日はきっと味方だ。
読了日:04月06日 著者:髙田 郁
https://bookmeter.com/books/9020770

■ぎょらん (新潮文庫 ま 60-22)
先月から危篤状態が続いていた母。今朝病院から「意識が低下して呼吸が浅くなっている」と連絡があり、駆けつけました。それからおよそ1時間半、眠るように母逝く。母の手を握りながらいろんな話をして、あと50頁ほどだった本作を開き、「お母さん、これな、人が死ぬときに遺す珠の話やねん」とぽつぽつ声に出して読みながら過ごしていたら、ちょうど全部読み終わりそうになったときに、母の心拍数がゼロに近づきました。「お母さん、ありがとう」と言ったら、スーッと涙ひと筋。聞こえていたならいいなぁ。明後日のお葬式ではぎょらんを探すよ。
読了日:04月11日 著者:町田 そのこ
https://bookmeter.com/books/21308313

■20歳のソウル (幻冬舎文庫)
死にゆくの枕元で町田その子の『ぎょらん』を読み終えてから1週間と少しが経過しました。母は癌だったというものの、90歳を超える高齢でしたし、こちらの覚悟もできていたから、今の私は寂しいけれど悲しくはない。だけど本作を読むと、2年前に亡くなった弟のことを思い出し、弟の半分よりも短い生涯を閉じた大義くんを想って悲しさでいっぱいになります。ロードショーの折に劇場にて鑑賞しましたが、本作を読むと、市船に丹念に取材をしなければ書けない話だなぁという思いはひとしお強くなりました。空の上も音楽が溢れていればいいと思う。
読了日:04月22日 著者:中井 由梨子
https://bookmeter.com/books/18041920

■そこに無い家に呼ばれる (中公文庫 み 50-3)
母が亡くなってから2週間と少し。こんな話を読む心境ではないはずが、三津田さんにはスルスルと吸い寄せられ、母の遺影に見守られながら読みました。巷で大ヒットを飛ばしているいくつかのモキュメンタリーも読みましたが、やっぱり私は断然こっちが好き。なんとも言えない余韻があって、深い。何かが一つずつ減っていたり増えていたりしたら気をつけよって、わざわざそういうのを見つけて数えてしまうじゃあないですか(泣)。ラスト3頁は『逆転美人』並みの労力を感じました。というのは『逆転美人』の藤崎さんに失礼ですかね(笑)。怖かった。
読了日:04月30日 著者:三津田 信三
https://bookmeter.com/books/21364304

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2024年3月に読んだ本まとめ

2024年04月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年3月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:3328ページ
ナイス数:880ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/3

■52ヘルツのクジラたち (単行本)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】公開2日目に鑑賞しました。読了から約2年半経っているせいで記憶がおぼろげ。どれくらい原作に忠実かわかりません。映画版の上映時間の半分以上はキナコの話。原作はもうちょっと少年とのシーンも多かったかしらなどと思うのですが、それは単なる印象でしょうか。『パーフェクトワールド 君といる奇跡』のような恋愛もののヒロインを演じるときの杉咲花には違和感がありますが、『市子』や本作のような、凄絶な過去を持つ女性を演じるときの彼女には圧倒されます。52ヘルツのクジラの声、聴きたい。
読了日:03月05日 著者:町田 そのこ
https://bookmeter.com/books/15533416

■テロリストの家 (双葉文庫 な 47-02)
息子にかかる容疑は違えども、映画『望み』(2020)を観たときの気分にさせられました。あちらは「息子は殺人犯なのか」。こちらは「息子はテロリストなのか」。もしもそうなら、いっそ死んでくれたほうがいいという思いもよぎる父親と、どうであっても生きていてほしいと願う母親の姿が似ていて。妹がいるところまで同じだったからデジャヴに思えたほどです。このまま終わるわけはないと身構えてはいたけれど、残り10頁ほどで大どんでん返しを披露する七里センセ、やっぱり凄い。でもこれはいつになく嫌な終わり方。これからどう生きますか。
読了日:03月05日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/21730943

■変な家
へ〜、去年いちばん売れた小説なんですね。今まで怖くて手を出せず、しかもこんな話だとは想像もしていませんでした。何かがあるとおぼしき歪な間取り図が並んでいて、どこが変なのかを解説してくれる本だと思い込んでいたのです。全然ちがった(笑)。何しろ『近畿地方のある場所について』を読んだ後だから、いちばん怖かったのは柿が出てくるシーンです。柿を勧められると何かが起こるの!?って。とにかくこれなら、怖くてパスしようと思っていた映画版も耐えられそう。桃弥くんに泣かされかけたけれど、嫌なオチだなぁ。これってホラーですか。
読了日:03月10日 著者:雨穴
https://bookmeter.com/books/21776893

■木になった亜沙 (文春文庫)
芥川賞作家の頭の中はどうなっているのかわからなくて、たいてい私はついて行けずに疑問符だらけで読了します。だけどこの作家だけは怯むことも愕然とすることもなく読める。自分が手渡したものを誰にも食べてもらえない少女。的にされるのに絶対に当たらない少女。ずっと寝そべって暮らしてきた女性。今村さんの表現はいつもやわらか。彼女らを描写するとき、難しい言葉はちっとも使われていなくて、もしかしたら私にでも書けるのではと思うほど。でも絶対に書けない。やはりこの人の頭の中がどうなっているのか不思議。それでいて吸い込まれます。
読了日:03月11日 著者:今村 夏子
https://bookmeter.com/books/20770857

■四月になれば彼女は (文春文庫 か 75-3)
私はたぶん川村元気をやっかんでいます。手がけた作品は常にヒット。小説を書けば映画化確実、人気俳優を起用して大ヒットを飛ばす。『億男』なんて、億万長者のあなたが書いてもねぇと嫌みを言いたくなる(笑)。本作も間違いなく映像化ありきの小説。出てくるアイテムがとにかくお洒落で、住まいはタワマン、リーデルのグラスを傾けてミモレット、猫の名前はウディ・アレンかよ。焼酎飲みながら畳敷きの部屋で読んだらあかん気までしてきます。それでも映画は楽しみ。今まで敬遠していた藤井風なのに、『満ちてゆく』は聴くだけで泣きそうになる。
読了日:03月14日 著者:川村 元気
https://bookmeter.com/books/13885820

■ファミレス行こ。 上 (ビームコミックス)
映画『カラオケ行こ!』がツボにハマり、ついでに本作もポチッと。中学生だった聡実が大学生になっているのを見るだけで、保護者になったような気分で感慨深い。狂児に対してだいたいは「ですます」調でしゃべっているけれど、たまにものすごくくだけた感じになるところは笑ってしまう。「プレゼントがあるねん」とか。そうそう、もう親戚のおっちゃんだなぁ。狂児のキャラも相変わらず。漫画家先生のファンの真相にはふきそうになりました。漫画を読むこと自体、この間まで久しぶりだったのに、こんなにハマってしまうとは。下巻も楽しみです。
読了日:03月15日 著者:和山 やま
https://bookmeter.com/books/21573707

■変な家
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】公開初日だった昨日レイトショーで観ました。シネコンで客ひとりということも年に何度かあるなか、本作は大人気で8割の入り。原作よりもビビらせ要素が多い。調査を開始した雨宮が首を突っ込まぬように警告を受けるシーンなんて、ホラー苦手な私は直視できず。お面が怖いのよ。なのに雨宮と柚希と栗原は片淵家の間取り図を見て想像するだけではなく、現地に乗り込んじゃいます。いやいやいや、無謀やろ(笑)。案の定、洗脳された村人たちから襲いかかられる展開。最後はやっぱり嫌なオチが待ってます。
読了日:03月16日 著者:雨穴
https://bookmeter.com/books/21776893

■事故物件探偵 建築士・天木悟の執心 (角川文庫)
『変な家』を購入したさいにこれも目に留まってなんとなく。軽いけれど、ほどよい怖さのホラーでした。主人公は、中学生のときに修学旅行先の町で住宅地に迷い込み、目の前に現れた家に一目惚れ。その建築士に憧れて大学の建築学科に進みます。憧れの相手の特別講義を聴講する機会に恵まれたというのに、壇上の君にかぶさる幽霊。嬉しくもない「見える」能力のせいで、図らずも建築士の事務所でバイトをすることに。またシリーズものに手を出してしまったわけですが、心理的瑕疵物件の話にもかかわらず、心理的負担はなく読めそうなのがありがたい。
読了日:03月19日 著者:皆藤 黒助
https://bookmeter.com/books/21660960

■四月になれば彼女は (文春文庫 か 75-3)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】予告編を観たときからキャストにものすごく違和感がありました。佐藤健35歳の元カノが大学時代の後輩で森七菜22歳って。佐藤健の今カノは長澤まさみ36歳。原作を読んだときには気にしないようにしていましたが、映画を観るとやっぱり無理。原作のタワマンもお洒落なつまみもなければ、お色気たっぷりの妹はパチンコ店勤め。竹野内豊が見られるのは嬉しいけれど、この役が必要だったかどうか。ラストシーンはちょっと素敵。個人的にはそことエンドロールの曲だけがよかったという結果になりました。
読了日:03月23日 著者:川村 元気
https://bookmeter.com/books/13885820

■俺と師匠とブルーボーイとストリッパー (角川文庫)
久しぶりの桜木紫乃に、あぁやっぱり私が読みたい作家だと思っていたのに、しばらく進むと桜木紫乃を読んでいるということを忘れてしまいました。まるで高殿円の『グランドシャトー』を読んだときと同じ高揚感に駆られる。博打のためなら女房も売るような人でなしの父親が死に、母親とも離れてキャバレーに勤める章介。わずかな喜怒哀楽を表す場面もなかったような日々が、ドサ回りの芸人3人とひと月共同生活を送るうちに変わります。楽しくて、切なくて、永遠に読み終わりたくない気持ちに。北の国のキャバレーの話も最高だ。人生って、悪くない。
読了日:03月25日 著者:桜木 紫乃
https://bookmeter.com/books/21662385

■藩邸差配役日日控
時代小説に対する苦手意識はなくなったとはいえ、まだまだ自分から積極的に手を伸ばすほどではありません。それを知っている人なのにわざわざ貸してくれるのは、相当良い本ゆえのことでしょう。江戸藩邸の差配役が主人公。「何でも屋」と陰口を叩く者がいるとしても、『勤め』はおしなべて誰かが喜ぶようにできているものだという言い草に思わずにっこりしてしまう。聡い若君とのやりとりも楽しい。明るい話ばかりではなく、物騒な事件もたまに起きたりして、硬軟のバランスがちょうどいい。四季を通して藩邸を見ていたような気持ちになりました。
読了日:03月26日 著者:砂原 浩太朗
https://bookmeter.com/books/20918244

■おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行
ヤバイヤバイ、今月も10冊読めるかどうかの瀬戸際よと思っていたら「これどう?」と職場の先輩が貸してくれる。おおっ、すぐ読めるとときめきつつ開くと、ことわざのアタマの言葉とカラフルなイラストから成る目次からして楽しすぎる。どの国にもほかにいくらでもことわざがありましょうが、ここで取り上げられていることわざはホンマかいなと言いたくなる楽しげなもの。トップバッターが「表面に振りかけたパクチー」ですからね。どういう意味を想像されますか。冊数を取り繕うにも最適な絵本(笑)だけど、覚えておきたい名句多数。とても素敵。
読了日:03月27日 著者:金井 真紀
https://bookmeter.com/books/20439667

■オーシティ 負け犬探偵 羽田誠の憂鬱 (幻冬舎文庫 き 21-22)
木下半太に品を求めるつもりはないけれど、いつもこんなに下品でしたっけ(笑)。のっけから万力でキ○タマ潰されて、潰される痛みは女の私にはわからず、でも潰されても生きていられるものなんだわと妙に感心。想像したくないシーンの連続なのに、大阪生まれは惹かれるロケーションと、映画ネタも多ければ桂米朝の落語を聴く盲目の少女の登場にずるずると引きずられて最後まで。お宝の耳が何たるかを知らずにはやめられない。インドの天才数学者と聞けば映画『奇蹟がくれた数式』を思い出し、それも絡ませたわけじゃないよね半太、と思うのでした。
読了日:03月30日 著者:木下 半太
https://bookmeter.com/books/20272904

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2024年2月に読んだ本まとめ

2024年03月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年2月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3010ページ
ナイス数:996ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/2

■超怖い物件 (講談社文庫)
映画『変な家』の予告編を劇場で観るたび、怖い、観たい、怖いという思いの繰り返し。原作には手を出せなかったけど、これなら読めそうな気がして。書き手は魅力的な11人。曰く付きの家だったり部屋だったりが登場します。内藤了の“よろず建物”シリーズ中にあった座敷牢の話が凄く怖くて、以来座敷牢をイメージさせる物語にビビりまくり。ここにもひとつありました。全話読んで思うのは、「出られない家」は恐ろしいということ。当たり前か(笑)。怖くて飲酒しつつテレビで『アメトーク』をつけたまま読んだ最終話は読み直さなければ。(^^;
読了日:02月02日 著者:平山 夢明,宇佐美 まこと,大島 てる,福澤 徹三,糸柳 寿昭,花房 観音,神永 学,澤村 伊智,黒木 あるじ,郷内 心瞳,芦花 公園
https://bookmeter.com/books/20097635

■処方箋のないクリニック (小学館文庫 せ 2-10)
白衣高血圧の私は『血圧陰謀論』に興味を引かれて読み始めました。でも結果的にいちばんあれこれ考えさせられたのは『奇跡のメソッド』。長期間手指の湿疹に悩まされていましたが、約10年前、もうステロイドが効かなくなっていると感じ、思いきって脱ステ脱保湿に挑戦した過去があります。このタイトルにこの装丁ならばひたすら和みながら読める話だろうと思っていたけれど、弟が癌になったときには自由診療の医師の話も聴きに行ったこともあったりして、私にとっては心穏やかではいられない話となりました。これが自由診療でなくなればいいなぁ。
読了日:02月06日 著者:仙川 環
https://bookmeter.com/books/21489579

■夜明けのすべて (文春文庫 せ 8-5)
タイムリーすぎて笑ってしまいました。というのも、半分ほど読んだ後たまたま『ボヘミアン・ラプソディ』のScreenX版を観に行ったのです。私が劇場で観るのは31回目の『ボラプ』。で、帰宅して続きを読んでいたら、なんとなんと、観に行ってるよ美紗ちゃんが。こんな偶然がありましょうか。余計なお世話かもしれないけれど、『ボラプ』未見の方は観てから読んでと言いたくなる。そしてやっぱり優しく温かい瀬尾さん。手段はひとつじゃないと少し考えればわかりそうなものなのに、焦るとわからなくなるものだなぁ。明日の自分に聞かせたい。
読了日:02月09日 著者:瀬尾 まいこ
https://bookmeter.com/books/21509737

■夜明けのすべて (文春文庫 せ 8-5)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】まず「栗田金属」ではなくて「栗田科学」であることに驚く。夜明け→夜空→プラネタリウムなのかしら。栗田社長と山添の上司・辻本はグリーフケアの会で顔なじみ、山添の彼女はそのまんまで治療に口出し。いきなり散髪に来たんじゃなくてチャリをあげに来たんだし、雑草抜きではなく洗車する。そして『ボラプ』は観ない(笑)。山添は元の会社に戻る算段を辻本に頼み、藤沢は実家に戻るために転職活動をしている。原作にないことを詰め込み過ぎな気はするけれど、キャストはよかったと思います。景色も。
読了日:02月10日 著者:瀬尾 まいこ
https://bookmeter.com/books/21509737

■白日 (角川文庫)
月村了衛といえば『槐』のアドレナリン全開のイメージが強烈だったので、アクションシーン皆無の本作には乗れそうで乗れないまま、それでもなりゆきが気になって終盤まで引きずり込まれました。出版社の教育部門局長の息子の死亡は事故か自殺か。それが会社の新規プロジェクトの行方に関わるとはどういうことなのか。中学生の自殺がほぼ確定し、その理由が「大人の事情」によって秘匿される。人として恥ずかしくない行動をしようと覚悟を決めた主人公。だからこそのこの結果に現実の社会でもなればいいのに。最終章◎。ゲシュタポ飴屋、グッジョブ。
読了日:02月12日 著者:月村 了衛
https://bookmeter.com/books/21662372

■私の命はあなたの命より軽い (講談社文庫)
どの方向へ話が進むのか皆目見当がつかずにドキドキしながら読みました。里帰り出産することになって帰った実家。仲良し家族だったはずなのに、なんだか様子が変。新築の家を早くも手放そうとしている父親。ぎすぎすとした空気は、両親と妹の間に何かあった故なのか。それともこの家自体に問題があるのか。事故物件の可能性も当然頭によぎるけど、新築だもの。ならば曰く付きの土地に建てられたとか。見事にどれも外れ、最後は最近読んだどのホラーよりもゾワっとした嫌ミスになりました。あ、『スイート・マイホーム』よりは嫌じゃないか。(^^;
読了日:02月13日 著者:近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/11916807

■警官の道 (角川文庫)
「警官」という職業に焦点を合わせているのが面白い。するっと読むつもりだったのに、好きな作家が多すぎて没入。急いで読むことができなくて、思いのほか時間を要しました。まずひとつめの葉真中さんで掴みバッチリ。以降コロナに寄せた話もちらほらあり、余りに寄せすぎるのは私は苦手なのですが、世間がパニックになっている間に作家たちはなんとかこれに絡めた話を書けないものかと考えていたのだなぁと思ったりも。警官だって普通の人間。LGBTをカミングアウトする時期に悩む姿なども描かれ、その生き様が興味深い。柚月姐さん、好きです。
読了日:02月20日 著者:呉 勝浩,下村 敦史,長浦 京,中山 七里,葉真中 顕,深町 秋生,柚月裕子
https://bookmeter.com/books/21662351

■カラオケ行こ! (ビームコミックス)
子どもの頃はものすごく漫画を読んだものですが、今は映画と本にもっぱら時間をつぎ込んでいるため、漫画にまで時間を割けません。しかし本作に関しては映画版がめっちゃ楽しかったから。先に原作を読んでいたら、狂児も聡実も組長も、見た目のイメージが違うと思ったかもしれません。でもこの性格なら、これ以上になくピッタリのキャスト。映画版では聡実の悩みを後輩がまったく理解していなかったという点を除けば、とても忠実な映画化。本編後の描き下ろしまで映画版に上手く盛り込まれていました。愛すべき映画であり、愛すべき原作漫画でした。
読了日:02月20日 著者:和山 やま
https://bookmeter.com/books/16043727

■モネのあしあと (幻冬舎文庫)
以前も言ったことがありますが、私は世間で人気なほどにはマハさんファンではないんです。むしろ妹にすっかり追い越されて今やもう追いつけないほどの差をつけられた兄の宗典さんのほうが気になります。でも母の通院に付き添った際に病院の売店で買った本作はよかった。絵画の知識がまるでない者にもこの上なくわかりやすい解説で、強く興味を引かれます。モネの作品そのものについても、人生についても、浮世絵が印象派に及ぼした影響についても、面白く教えてくれる。易しくて優しい。モネ展ではリクエスト通りに《大睡蓮》が展示されていますか。
読了日:02月21日 著者:原田 マハ
https://bookmeter.com/books/17782834

■スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
慣れとは恐ろしい、いや、素晴らしいもので、あれだけ眉をひそめながら読んでいたウジがわくシーンも、今は素通りできるようになりました。それでもプチプチ踏んで歩くところはギョエ~と叫びたくなるけれども(笑)。およそ金持ちには見えず、人から恨まれることもなかった様子の老人が空き巣に狙われたのか殺される。今回も赤堀先生大活躍で心底惚れそう。さらには内藤了の藤堂比奈子シリーズの永久みたいな少年・夏樹も登場して、最後は泣いてしまいました。岩楯刑事はもちろんのこと、新相棒・深水も○。次巻はいったいいつですか。待てません。
読了日:02月28日 著者:川瀬 七緒
https://bookmeter.com/books/18098533

■ふしぎな図書館 (講談社文庫)
ごめんなさい。今月読んだ本をどうしても10冊にしたかったから、昨日書店で目についたいちばん薄い本を買いました。だって今年まだ2月なのに、ひと月10冊の目標をクリアできなかったら来月からテンションが下がる。初出から40年以上経っていて、昔読んだことがあるはずです。そのときは何も思わなかったけれど、なんと黒い話。羊男に体罰を加えるパワハラ老人職員。図書館にやってきた少年を拉致監禁して脳みそチューチュー予定って(笑)。ストップモーションアニメにしてくれたら、『オオカミの家』にも勝るホラーファンタジーになるかも。
読了日:02月29日 著者:村上 春樹,佐々木 マキ
https://bookmeter.com/books/546771

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