夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2024年1月に読んだ本まとめ

2024年02月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年1月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2874ページ
ナイス数:724ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/1

■その扉をたたく音 (集英社文庫)
はたして瀬尾さんは朝ドラ『ブギウギ』のヒットを見越して本作をお書きになっていたのか。主人公の宮路は全くもってアカン奴。29歳無職で資産家の親のスネを齧り、「仕事がカネのためならば、俺は働く必要がない」などとのたまう。老人ホームで働く渡部のサックスに魅了されたのはいいとして、自分だけの都合で渡部を振り回そうとします。だけどまるで振り回されない渡部が凄くイイ。宮路のことが好きになれずに読むのをやめたくなるところ、瀬尾さんだもの、最後はちょっといい奴になって泣かされることが目に見えている。私の心も揺さぶられる。
読了日:01月01日 著者:瀬尾 まいこ
https://bookmeter.com/books/21644016

■神戸怪談 (竹書房怪談文庫 HO 639)
阪急六甲駅前の書店で平積みされているのが目に入り、即座に手に取りました。怖いか怖くないかと聞かれたら、ホラーにあまり耐性のない私でも怖くない。どちらかといえば怪談としてよりもガイドブック的に読むほうが良いかと。何しろいちばん怖かったのは、登場人物の姓は鈴木さんのはずだったのにいつのまにか佐藤さんになってまた戻ること。入り乱れる鈴木さんと佐藤さんに、私の頭がおかしくなったのかと思って、その章だけは三度見ぐらいしました(笑)。三宮のセンター街を落武者が歩いているのを想像すると笑ってしまう。笑ったら祟られる!?
読了日:01月04日 著者:田中 俊行
https://bookmeter.com/books/21440780

■ルポ 国際ロマンス詐欺 (小学館新書 452)
インスタをやっていると、ちょっとネオンが綺麗なぐらいの画像に「これはどこで撮ったのですか」とコメントが付く。それだけではまだ怪しい人かどうかわからないから、どこそこで撮りましたと返信すると、途端に怪しい人まるだしに。あなたは写真を撮るのが上手、いろいろ教えてほしい、フォローし合いましょう。アホか、誰が乗るか。と思っていたけれど、乗ってしまう人がこんなにもいるのですね。そういうことかとは思わない。DV親父に金を借りてまで何百万と払うのはやっぱり不思議。ナイジェリアの若者の8割は詐欺で稼ぐって、目が点になる。
読了日:01月06日 著者:水谷 竹秀
https://bookmeter.com/books/21265987

■グランドシャトー (文春文庫 た 95-3)
大阪人なら、行ったことはなくとも名前は知っている京橋グランシャトー。「グランシャトー」やなくて「グランドシャトー」やったん!?と驚きましたが、実存するのは前者ですよね。どこまでがホンマなんですか。この著者のことだから、きっとモデルがいらっしゃいましょう。いわゆるお勉強はでけんでも、人生の機微を知る人たちがここにおる。ルーと共に何十年という時を私も過ごしたような気分になりました。すべての光景を思い浮かべることができるからこそ浸れる小説だという気もして、大阪人以外の人が読んでも面白いのかどうかは聞いてみたい。
読了日:01月14日 著者:高殿 円
https://bookmeter.com/books/20418565

■灼熱 (PHP文芸文庫)
帯の「一気読み必至」はホント。同著者の作品の中ではあまり好きだと思えなかったにもかかわらず、どうなるのかが読めなくて途中で止まれませんでした。自分の夫を殺したとおぼしき男に復讐するために、顔を変えてまで近づいて結婚する。でも相手の男はどうやらそれに気づいているらしい。怖っ。しかしその後は意外な展開。意外すぎてしばし目が点になりました。「ほおっ」というよりは「そんなん、あり!?」の気持ちのほうが本作に関しては強い。いつもの、かなりどんよりさせられる嫌ミスのほうが好きかもしれません。って、性格が悪いか(笑)。
読了日:01月15日 著者:秋吉 理香子
https://bookmeter.com/books/19773017

■ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)
文庫化された直後に読んでいるはずなのですが、当時は読メなし。先週映画版を観て申し訳なくも私は興ざめしてしまったため、原作は果たしてどんなだっただろうと再読(たぶん)することにしました。少なくとも私の思う東野圭吾ではないような。30年前ってこんな感じでしたっけ。登場人物の口調なども含めて好きになれる人は見当たらず、「私のせいよ」「いいえ私よ」みたいな応酬に「茶番だ!」と言いたくなりました。重岡くんをキャスティングしたのは面白いけど、原作とはかけ離れる。あの頃は、東野圭吾も若かった。そうさ私も若かった(笑)。
読了日:01月17日 著者:東野 圭吾
https://bookmeter.com/books/577402

■魔邸 (角川ホラー文庫)
怖がりのくせして好奇心に負けて読んでしまうホラー小説。三津田信三作品は特にお気に入りです。これまで読んだ中で私がいちばんビビった三津田作品は、『ついてくるもの』に収録されている「八幡藪知らず」でした。母親が再婚し、継父の海外赴任でひとり日本に残されることになった少年が預けられたのは、神隠しが噂される森近くの屋敷。「森」と聞いて八幡の藪を思い出し、背筋がぞわっとしたものの、追いかけられる怖さはあっちのほうが上。単なるホラーではなくて、幽霊も出るけどミステリー。最後の一文でものすごい嫌ミスになりました(泣)。
読了日:01月19日 著者:三津田 信三
https://bookmeter.com/books/16853515

■超短編! 大どんでん返し Special (小学館文庫 ん 2-2)
34人が1話4頁ずつ。ものすごくとっつきやすい。お目当ての作家もいれば、お初の作家に会えるのもこの手の本の良いところ。しかし、おそらくこのシリーズはいずれもそうだったかと記憶していますが、痛快爽快などんでん返しはほぼなくて、嫌ミス的などんでん返しばかりゆえ、少々どんよりします。想像したくないオチのものもあったりするけれど、軽いおかげで後を引くことはありません。タイトルひとつ取ってもセンスが感じられて、センスのない私は脱帽です。今年こそいっぱい本を読みたいから、月末あと読了冊数を稼ぎたいときにピッタリか。
読了日:01月23日 著者:
https://bookmeter.com/books/21641463

■うるはしみにくし あなたのともだち (双葉文庫 さ 50-02)
ルッキズムという言葉を頻繁に見かけるようになりました。私ももっと可愛く生まれたかったな〜とは思うけど、そんなのどうでもよい歳にもなりました(笑)。もしも自分がこんな力を使えるなら、身近にいる美人がブスになりますようにと祈るでしょうか。それとも、自分が美人になりますようにと祈るでしょうか。きっと後者だけど、それは叶わないというルールだなんて。終盤までいったい誰が犯人かわからず、引っ張られます。わかってみると、そんなもんかという思い。途中まで凄く面白かったけど、最後はちょっと無理くりの感が否めません。(^^;
読了日:01月27日 著者:澤村 伊智
https://bookmeter.com/books/21394070

■特殊清掃 (ディスカヴァー携書)
少なくとも私のまわりには映画『ヘドローバ』を観た人は私を除いていません。怪しげな新興宗教の信者に住まわせているアパートで自殺者が出るとそれを片付けるまさに特殊清掃人が描かれていました。誰にも薦めたくないほど不愉快極まりない作品で(すみません)、本作を読む前はあんな世界を想像していました。でもこの著者は亡くなった人に敬意を払っているのがわかります。凄絶な最期を迎えたであろう人の尊厳を守る。昨年観た香港映画『星くずの片隅で』の1シーンを思い出しました。人はいつ死ぬかわからない。「ありがとう」の気持ちを大切に。
読了日:01月30日 著者:特掃隊長
https://bookmeter.com/books/8286824

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2023年12月に読んだ本まとめ

2024年01月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年12月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2077ページ
ナイス数:631ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2023/12

■こちら空港警察 第4話 【単話】こちら空港警察 (野性時代連載)
第3話は思いっきり途中で終わってしまうので、第4話を続けて読まねばなりません。搭乗間際に慌てさせられたものの、なんとか無事搭乗したトラブルメーカーの客。しかしやっぱりそのままでは終わらず、爆弾テロ騒ぎに発展。が、仁志村署長が狙いを定めていたのはそいつだけじゃなかったんですねぇ。……なんて書きはじめると、15分あれば読めてしまう話を全部ネタバレしてしまうことになりそうです(笑)。毎回だいたい2話完結型の事件が発生すると思ってよろしいですかね。12月中に既刊の全話を読めば、読了冊数を荒稼ぎできるでしょうか。
読了日:12月01日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/20932600

■【2019年・第17回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】怪物の木こり (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
映画版は公開初日のレイトショーにて、この原作をまだ半ばほどまでしか読んでいない状態で鑑賞しました。そうですか、菜々緒演じる戸城を刑事ではなくプロファイラーということにしたのですね。それも含めて、登場人物を若干減らしたからか、映画版のほうがスッキリしている印象。原作の二宮よりも映画の二宮のほうがずっと好きだと思えるのは亀梨和也のおかげなのか。原作ではこうなる日が来るだろうと剣持から示唆されていたことが映画のラストシーンになっています。人の心を持った二宮が映美に対して取った行動がちょっぴり切なくもありました。
読了日:12月03日 著者:倉井 眉介
https://bookmeter.com/books/15100550

■僕が死んだあの森 (文春文庫 ル 6-7)
そうよ、あのルメートルだよと覚悟はできていたはずなのに、またしても絶望の底に叩き落とされました。友達のいない12歳のアントワーヌ。そんな彼に唯一なついていた6歳のレミを故意ではないとはいえ殺してしまった。いつバレるのだろうかと、私たちはアントワーヌと共に緊張を強いられることになります。しかしバレない。ずっとバレない。その年も、10年以上が経過しても。だけど、バレていなかったわけではないと知ったら。彼のことは好きになれません。でも、彼がこの先どう生きていくのかは気になる。確かにあの時、あの森で死んだも同然。
読了日:12月13日 著者:ピエール・ルメートル
https://bookmeter.com/books/21511805

■アイズ 猟奇死体観察官・児玉永久 (角川ホラー文庫)
あらっ、内藤さんの新シリーズ!?と一瞬思い、スピンオフかと少し遅れて気づく。名前を見ただけで気づかなきゃいけなかったよ、永久くん、ごめん。おそらくこの1冊だけを読んでも話についていけなくはないと思いますが、シリーズを読んでいた者にとっては感慨ひとしお。たぶん、親のような気持ちになる。さらにはオールスターキャストでウハウハ状態に。さすがに曳き屋までは出てきてくれませんけれども(笑)。生来邪悪なものというのは存在して、おそらくそれは変わらないと思っている派ですが、永久を見ていると、変わるのだと思う。思いたい。
読了日:12月17日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/21619038

■花腐し (講談社文庫)
やっぱり私には芥川賞を理解するアタマがありません。一字下げの段落にはなっているものの、行は詰まったままだから、どこで休めばいいのか困惑したまま最後まで一気に読む。きっと私にはわからないと思っていたので、先に映画版を鑑賞しました。そうしたら主人公の職業も違う、心中もしない、同じ女性を巡る話でもなくて再び困惑(笑)。わかりやすいぶん、映画版のほうに惹かれるものの、比べてみるのはとても面白い体験。映画版は芥川賞受賞作を直木賞にちょっと寄せたふうに私には思えましたが、最後だけは芥川賞。でもエンドロールは直木賞か。
読了日:12月19日 著者:松浦 寿輝
https://bookmeter.com/books/467202

■八月の銀の雪 (新潮文庫 い 123-13)
凄く良かったかと聞かれるとそうでもなかった気がするのに、妙な心地良さが残ります。ぎすぎすした世の中で、自分の思うようには事が運ばず、ふて腐れているところを人に見せたりはしないけれど、鬱々とした気持ちで毎日を過ごしている主人公たち。でも意外とまわりには幸せな瞬間が落ちていて、それを拾えば前向きになれるかもしれない。少なくとも、嫌いだった自分のことが好きになれそうに思います。どの話も好きでしたが、『アルノーと檸檬』が心に残りました。伝書鳩に詳しくなり、苦手だった鳩の見方が180度変わる。愛らしくすら感じます。
読了日:12月25日 著者:伊与原 新
https://bookmeter.com/books/21243042

■虐殺のスイッチ ――一人すら殺せない人が、なぜ多くの人を殺せるのか? (ちくま文庫 も-19-3)
ロングラン上映中の映画『福田村事件』の森達也監督。私が彼の名前を知ったのは20年以上前のこと、映画監督としてではなく『放送禁止歌』の著者としてでした。何も知らずに過ごした小学校時代。中学校に入って初めて同和地区の存在を知って驚いたものです。そして大人になって『放送禁止歌』を読み、また衝撃を受けました。本作でその衝撃再び。映画『シティ・オブ・ゴッド』のことも思い出す。平然と殺戮を繰り返す少年たちには、自分が生きるためなら良い悪いもないのだと。誰かの指示がなくても虐殺は起きる。ひとりひとりは優しいはずなのに。
読了日:12月26日 著者:森 達也
https://bookmeter.com/books/21349028

■BEAST 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花 (角川ホラー文庫)
“よろず建物因縁帳”の春菜のことをあまり好きでないという人は結構多かったかと思いますが、私は春菜のことは好きで、それよりもこっちの清花のことのほうが最初は鼻についたものです。それが今やこんなにも温かみのある人になっている。彼女の義母がまた素晴らしくて、私はひそかに澄江ファン。親による虐待が頻繁にニュースとなる昨今、少年のことを思うと胸が苦しい。襲ったわけではない、助けてくれたのだとわかったときは涙が溢れました。星が見えるほうが幸せだと人間の尺度で思いがちだけど、そうとは限らない。チームの決断に賛同します。
読了日:12月29日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/21619039

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2023年11月に読んだ本まとめ

2023年12月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年11月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2062ページ
ナイス数:810ナイス

■みかんとひよどり (角川文庫)
グルメ×ミステリー小説が溢れるなか、どのジャンルの料理を取り込むかはある種のニッチ産業のように思います。そうだ、ジビエ料理は今までにない。料理学校では優等生だったのに、いざシェフを任されると次々と店を潰してしまう主人公・潮田。ジビエを偏愛する女性オーナーの目にとまったものの、やはり閑古鳥。猟に入った山で遭難しかけたときに助けてくれたのが無愛想な猟師・大高。なんとも美味しそうな数々の料理。だけど予想していたよりもずっとミステリー。鹿の出没にうんざりするわが家の周辺ですが、本作を読むと少し見方が変わる。 
読了日:11月02日 著者:近藤 史恵

■銀座「四宝堂」文房具店 (小学館文庫 う 15-2)
なにせ一年半前まではガラケーすら持ったことがなく、弟の闘病をきっかけにようやくスマホを買った私は、いまだに電話よりも手紙を書くほうが気分的に楽です。特に文房具に思い入れがあるわけではないけれど、字は万年筆で書きたいし、ノートも絵葉書も常備アイテム。文房具店が舞台という小説は結構ありますが、本作は文房具店のオーナーが客に出すお菓子や、オーナー行きつけの喫茶店、あるいは客が勤める店の一品が登場する合わせ技が駆使されていて飽きません。特に好きだったのは最終章のメモパッド。わが家のメモパッドも勿論ずっとロディア。
読了日:11月06日 著者:上田 健次

■契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻(上) (ハルキ文庫 た 19-31)
スピンオフも2本立てですか。なんといってもいちばん知りたかったのは、あのとき消息を絶った惣次がどこで何をしていたのか。それが明かされる第1話を読むと、やっぱりこの人は悪人なのか善人なのか判断しかねます(笑)。善人なのに、あまりに出来る女房をもらったせいでひねくれちゃったのかしらん。罪作りな幸。佐助どんのご縁が嬉しく、お竹さんの老眼に失礼ながら笑う。しなびた大根が人の肌に似ているとは知らず、それで縫う練習とは驚いた。ずっと気になっていた賢輔がついに伝えましたね。スピンオフの最後に来る話かと思ったら、ここよ。
読了日:11月08日 著者:髙田 郁

■売春島~「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ~
海沿いの町の売春宿ということから映画『ブロー・ザ・マン・ダウン 女たちの協定』を思い出しつつ読む。しかしこの渡鹿野島は、1軒だけ売春宿があるなんてものではなく、島全体が売春に関わり、それで潤った島。借金の形に連れて来られた女性もいるけれど、進んで金を稼ぎに来た女性もいる。暗くて痛々しいイメージしかなかったのに、一度行ってみたいとすら思わされます。性風俗にまつわるノンフィクションを読むときは、私には好奇心しかないわけですが、その好奇心を十分に満たしてくれる1冊。だけどこんな感想を持っていいのかどうかは疑問。
読了日:11月14日 著者:高木 瑞穂

■しかもフタが無い (ちくま文庫 よ-32-1)
ヨシタケさんが絵本作家としてデビューしたのは2003年。そのデビュー作を筑摩書房が文庫化しちゃいましたというもの。ひとつひとつに脈絡があるのかないのか、なんとなくこちらは戸惑う。添えられた字も今と変わらないように見えつつも、上手下手とは関係なくちょっぴり読みにくかったりして、うん、確かに若かりし頃の作品だろうと思わされます。今よりもほんの少し悪意を感じる一節もある(笑)。だけど若くてもやっぱりヨシタケさんはヨシタケさん。いくつかはその言葉に感じ入り、いくつかはふきだしてしまう。そして切ない。そこが好き。
読了日:11月15日 著者:ヨシタケシンスケ

■刑事さん、さようなら (中公文庫)
『ぼくと、ぼくらの夏』にハマって大人買いしたけれど、積んだままにしているうちに著者が亡くなってしまった。そんな歳でもなかったのに。10年前に刊行された本作を読みはじめたら、そうそう、私はこの丁寧さが好きだったと改めて思う。若干の知的障害があるとおぼしき彼のワイズクラックな話し方には『枯葉色グッドバイ』を思い出したりも。小説家としてなかなか芽の出なかった著者が自宅で亡くなっているところを発見されたと聞くと、悲しい人生を想像してしまうけど、幸せかどうかは人が決めることじゃない。本作のヨシオを見てよりそう思う。
読了日:11月20日 著者:樋口 有介

■動機 (文春文庫)
余談ですが、父の蔵書を整理し始めました。たいした数ではなかろうと思っていたのに、数千冊は下らない。大型チェーンと老舗の古書店へ査定に出したものの、ネットでも読める今、小説は特に売れないそうで。これはそんな中の1冊で、父が21年前に読んだ印が。スマホもなかった頃に書かれたミステリーは、いま読むと時代遅れの感がありつつもなんだか安心できます。しかし今の時代の小説とは異なる暗さがあって妙に悲しくなる。そうか、本作はあの『64(ロクヨン)』と同じD県警の話か。『64』ですら刊行は10年前。感慨深いものがあります。
読了日:11月24日 著者:横山 秀夫

■こちら空港警察 第3話 【単話】こちら空港警察 (野性時代連載)
映画を観に劇場通いする日が続いていたらほとんど本を読めず、冊数稼ぎのためにこのシリーズに着手したのに、第2話まで読んだきりになっていました。読むのが速くない私でも15分あれば1話読了できるだけあって、たいした話じゃありません(笑)。でも第3話まで来ると、成田空港グランドスタッフの咲良がビビる仁志村署長にも興味が湧いてくる。第2話までに仁志村の外見についての描写ってありましたっけ。冴えないオッサンをイメージしていたらイケメンらしい。彼に目をつけられるとどんな人物も完全犯罪不可能と思われます。続きに急行する。
読了日:11月30日 著者:中山 七里

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2023年10月に読んだ本まとめ

2023年11月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年10月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1954ページ
ナイス数:495ナイス

■ルポ西成~七十八日間ドヤ街生活~
今春から毎月1回必ず動物園前に出かける機会があり、あの辺りに関心が向いています。とはいうものの、それは今に始まったことではなく、これまでもさまざまな映画を観ています。特に印象に残っているのは、本作同様に取材のために西成に移り住んだ映画監督による『解放区』でした。ノンフィクションのようなフィクションで、でもモキュメンタリーとは少し違う不思議な作品でしたが、これが西成なのだと放心した記憶があります。本作を読むとそのときのことを思い出す。今は外国人観光客でにぎわう新世界だけど、新世界国際劇場には絶対入れません。
読了日:10月01日 著者:國友 公司

■ほねがらみ (幻冬舎文庫 ろ 1-1)
先日『近畿地方のある場所について』を読んだばかりです。ホラーは苦手なのにどうしてこんな本ばかり手に取ってしまうのか(笑)。私は『近畿地方の~』のほうが怖かったですが、こちらのほうが断然好み。そもそも「はじめに」で挙げられた作家みんな好き。特に三津田信三に惹かれているとのことだから、私にとってハズレになるはずもなく。その昔、映画『シャイニング』を観て以来、確信していることがあります。視覚的に最も怖いのは同じ文字あるいは文章の羅列。そして澤村伊智の著作のタイトルにもあるような、異様な響きを持つ意味不明の言葉。
読了日:10月05日 著者:芦花公園

■ロックンロール・トーキョー (小学館文庫 き 14-2)
いつ読んでもそんなに文章が上手いと思えない。でもさっさか読めちゃうし、なんか楽しいのよねぇ、しかも不覚にも泣いてしまうこともあるし。そう思っていました。わかりやすさを狙っていたのだということ、バランスを大事にしているのだということを知り、ますます半太ファンになってしまった。実際の映画や俳優を思い浮かべながら、彼の人生そのまんまの物語を読むのは最高。『リトル・ミス・サンシャイン』など、タイトルが挙がる映画も私のツボ。ようやく自分で監督することが叶った『ロックンロール・ストリップ』、めっちゃ好きだよ半太さん。
読了日:10月10日 著者:木下 半太

■三日間の幸福 (メディアワークス文庫)
金に困って自分の寿命を売ることにした主人公。そもそも寿命はそんなに長くないことがわかって、それでも30年売れば何億円かせめて何千万円にはなるかと思っていたのに、30万円って。そりゃ凹む。余命が1年を切るころに自暴自棄になる人が多いという話に、私のが癌で余命宣告されたときのことを思い、自暴自棄どころか達観していたよと改めて思う。「阪神勝ったねとか、大谷打ったねとか、そんなことを喜びながら過ごして行けたらいい」と言っていたこと。あと3日、元気じゃないと幸せに過ごすことは難しいけれど、そんなふうに過ごせたら。
読了日:10月15日 著者:三秋 縋

■紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
凄惨な現場に転がる指3本。そして肝心の死体はない。どういうことだよと想像力をかき立てられるなか、毎度赤堀先生に振り回される岩楯刑事の姿が気の毒ながら面白い。今回の相棒ワニさんにはいつも赤堀先生への敬意が感じられるから好き。しかしイケメンではなさそうなのは残念(笑)。新たに設けられた捜査分析支援センターの面々も個性豊か。ムカデに咬まれたことはあるけれど、やけど虫は知りません。絶対にお目にかかりたくない。赤堀先生の過去が少し見えてきて、次巻への期待が高まります。ただの虫好きじゃないんだとしみじみ思ったこの巻。
読了日:10月20日 著者:川瀬 七緒

■迷塚 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
よろず建物因縁帳藤堂比奈子けっぺーちゃんと、次々シリーズにハマってはロスに陥るというパターンを繰り返してきました。隙間をしのいだフロイトもまぁまぁだったけど、イマイチだと思った微生物研究室は1冊で飛び、同様に最初はイマイチに思えた憑依作家は今はそれなり。そして現時点で大本命となり得るのは鳴瀬清花かこのミカヅチシリーズ。掴みの女性描写は夏に震えて読みたかったほどでしたが、以降は事件そのものよりも各者の背景が綴られて、三婆ズの出会いにも驚かされました。よろず建物の小林教授の登場が嬉しすぎる。もっと絡んで。
読了日:10月28日 著者:内藤 了

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2023年9月に読んだ本まとめ

2023年10月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年9月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2547ページ
ナイス数:795ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2023/9

■六人の嘘つきな大学生 (角川文庫)
『ノワール・レヴナント』が結構好きでした。それよりもこっちのほうが面白いとの噂。本当でした。こんなにも時代は変わっているのに、確かに就活だけは何十年も変わらない。私はスマホもエントリーシートもない時代に就活した世代ですが、面接やグループディスカッションなどはそのままなのですね。たったひとつの採用枠をめぐる争い。その最終選考で、自分を含む6人の中から採用に最もふさわしい人を自分たちで決めるとは。イヤミスの終わり方もあり得ると想像していたら、なんとも温かい気持ちになる「それから」。波多野くんの冥福を祈ります。
読了日:09月03日 著者:浅倉 秋成
https://bookmeter.com/books/21091110

■こちら空港警察 第1話 【単話】こちら空港警察 (野性時代連載)
最近ひと月の読書数が激減していて、なぜなのだと自問したら、ほぼ毎晩劇場に足を運んで映画を観ているからだと気づく。今月こそもうちょい読みたいと思ったときに、DMでしつこく薦められているこれなら冊数を荒稼ぎできるんじゃないかとひらめき、本は紙で読む派だけど手を出してみました。七里ファンとしてはそりゃ物足りない。でも、そんなに読むスピードが速くない私でも20分とかからずに読了できて、1冊にカウントできるお得感(笑)。そのうえなんとなく自分も空港に居合わせているような気分になれるのです。とりあえず既出の全話購入。
読了日:09月06日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/20488232

■こちら空港警察 第2話 【単話】こちら空港警察 (野性時代連載)
そんなわけで、毎晩劇場通いして映画を観て帰っても、これなら日付が変わるまでに2話ぐらい読めちゃいます。「冴子」ってどこかで聞いた名前だなと思ったら、『逃亡刑事』のアマゾネス刑事ですね。あれを読んだときにはただただガタイがよさそうで、ガル・ガドットのイメージしかありませんでしたが、これを読んだらもう少し和風な感じがしてきました(笑)。アマゾネスが冷酷非情な人と思っているふしのある警察署長の仁志村。彼の見立てに狂いはないみたい。今後どんな事件を片付けて行くのか、グランドスタッフの咲良目線で楽しめそうです。
読了日:09月06日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/20594173

■ハーメルンの誘拐魔 刑事犬養隼人 (角川文庫)
『こちら空港警察』に手を出した勢いで、長らく積んだままだった本作も読む。七里センセは著作が多すぎて、なかなか制覇できそうにありません。このシリーズは映画化されたのをきっかけにまず第4作を読んだから、綾野剛北川景子の顔しか浮かんでこない。第1作からようやく第3作に辿り着いた今も、そのおかげでより速く読めます。社会問題をいち早くご自身の小説で取り上げる腕はさすがとうなるばかり。子宮頸がんワクチンの副反応は、ちょうど本作の発行年に取りまとめられたようですね。このような思いをしている人は実際にいるかもしれない。
読了日:09月07日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/12453604

■潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
ハマり中のシリーズ。存在を数年前まで知らなかったおかげで既刊巻を大人買いしたから、まだ続けて読めるのが嬉しい。本巻の単行本が出版されたのは2016年。当時アカカミアリは硫黄島や沖縄島などでしか見られず、本巻発行の数年後に各地の港でも発見された様子。先取りしているのも凄い。今までの岩楯刑事の相棒に比べると今回の兵藤刑事にはあまり愛着が湧きません。でも赤堀先生に振り回されているうちにきっと変わる。「私を信じなさいって。悪いようにはしないから」「今まで、悪いようにしかしてこなかっただろうが」にふきました(笑)。
読了日:09月13日 著者:川瀬 七緒
https://bookmeter.com/books/13451358

■近畿地方のある場所について
感想を書くに当たり、記述を確かめたくても怖くて頁を戻れない(泣)。数々の怪異は黒丸の伏せ字にされたどこかで起こったこと。おいでおいでと呼ぶ人、意味のわからない言葉を叫ぶ人々、自殺が多発するマンション。ほら、こうして書いていると思い出してぞわぞわする。とにかく終始暗くて不気味。オカルトなんだからそれも当然か。しかも残りのページが少なくなってくると、本が「きゅるる」と軋む音がするのよ(涙)。中扉は黒地に白抜きの文字、巻末の取材資料なるものも同様で袋とじ。怖くて開けられません。読み返したくないモキュメンタリー。
読了日:09月15日 著者:背筋
https://bookmeter.com/books/21248687

■私の唇は嘘をつく (二見文庫 ク 12-2)
冒頭、ジャーナリストのキャットの様子を見て、不動産業者のふりをするメグはとんでもない詐欺師なのだろうと想像する。ところがいまいちキャットに肩入れできないまま進むうち、メグもある人物に騙された過去があり、目的があって詐欺を繰り返していることがわかります。同著者の『プエルトリコ行き477便』のほうが好みではあるものの、これも心が震える読み応え。最近は国内小説ばかり読むようになったけれど、こんなのを読むともっと海外小説を読みたくなる。落ち込むだけなら誰でもできる。「正義」と「復讐」は違うということ。これは正義。
読了日:09月22日 著者:ジュリー・クラーク
https://bookmeter.com/books/20526344

■スイート・マイホーム (講談社文庫)
斎藤工が齊藤工名義で撮った映画を観たとき、まったく予想できなかった超バッドエンドに戦慄し、これの原作は決して読みたくないと思いました。しかしやっぱり気になるじゃないですか。平屋であること、天井裏と往復するルート、妻が夫の浮気にもともと気づいていたことなど、映画版と原作では異なる点がいくつかありますが、斎藤工は巧い。本田が恐ろしいのはもちろんですが、妻が狂っていくさまが何よりも怖い。どちらもオチそのものが映し出されなくてよかったけれど、ついついユキの眼を想像してしまいます。読後感は最悪。でも面白いのが困る。
読了日:09月27日 著者:神津 凛子
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