夜な夜なシネマ

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『受験のシンデレラ』

2009年03月03日 | 映画(さ行)
『受験のシンデレラ』
監督:和田秀樹
出演:寺島咲,豊原功補,田中実,浅田美代子他

モナコ国際映画祭グランプリ受賞作なんですけど。
映画祭がマイナーすぎる。

監督は東大医学部卒の精神科医であり、
かつ、「受験の神様」と呼ばれる受験アドバイザー。
映画を撮ることが悲願だったそうです。

東大医学部卒の五十嵐は、
圧倒的な東大合格率を誇る人気塾のカリスマ講師。
授業料をいくら値上げしようとも増える一方の生徒たちに、
五十嵐は熱く語りかけるが、気持ちは冷めている。

ある日、五十嵐は末期癌を宣告される。
同窓生である医師の小宮によれば、余命は約1年半。
「密度を上げて要領のいいやり方をすれば、試験前の1カ月は6カ月になる」。
それが口癖だった五十嵐に、
小宮は、残された期間の密度を上げるべきだと言う。

気力を保てない五十嵐が車を運転していると、
よろよろと飛び出してきたのが真紀。
五十嵐は、以前、彼女をコンビニで見かけたことがあった。

父親は家を出て行き、母親にはまったく働く気がない。
やむをえず高校を辞めて働いている真紀は、
まとめて買うよりも1点ずつ買うほうが安くなるからと、
1点毎に支払いをさせろとコンビニの店長に詰め寄っていたのだ。

その数日後、交際中の男子高校生から貧乏くさいとフラれ、
自暴自棄で車に当たりにきた真紀を見て五十嵐は決意する。
真紀に高卒認定試験および大検を受けさせ、東大に合格させると。
「おまえ、東大に行かないか。人生は変えられる」。

監督本人の著書がぞろぞろ出て来る本作を、
宣伝が目的の作品と見る向きもあるようですが、
この監督、まちがいなく映画作りが好きです。
壮快、爽快、痛快。笑いも涙も。宣伝はオマケ。

五十嵐が真紀に伝授する受験のテクニックの数々。
何ができるかではなく、何ができないかをより正確に知れ。
考えるための道具をできるだけ多く持て。
思わずうなずかされます。

真紀がとにかくめちゃくちゃけなげ。
いつか五十嵐に見捨てられるのでは心配になり、
自分の出せる精一杯である500円を差し出します。
500円が、次も来てくれる約束。

母親が改心するシーンなんぞは一切ないのも良し。
そんなシーンは興ざめです。

「充実した人生を送れば穏やかな最期を迎えられる。
そう言ったけれど、嘘だな。
充実した人生を送れば……余計に死ぬのが怖くなる」。
五十嵐の言葉がしみじみと。

元気、いっぱい貰えます。

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