夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『イントゥ・ザ・ワイルド』

2009年03月27日 | 映画(あ行)
『イントゥ・ザ・ワイルド』(原題:Into the Wild)
監督:ショーン・ペン
出演:エミール・ハーシュ,マーシャ・ゲイ・ハーデン,ウィリアム・ハート,
   ジェナ・マローン,キャサリン・キーナー,ヴィンス・ヴォーン他

観終わったときには「ふーん」ってな感じ。
なのにずっと心を離れず、ジワジワと効いてきて、
ひと月経った今、どうしてもまた観たくなっています。

ジョン・クラカワーのベストセラー『荒野へ』が原作。
アラスカの荒野へたったひとりで足を踏み入れた青年が、
その4カ月後に死体となって発見されます。
裕福な家庭に育ち、大学を優秀な成績で卒業し、
ハーバードのロースクールへの進学も決まっていた青年の謎の死は、
全米に波紋を呼びました。
登山家でもあるクラカワー氏が、残された日記や関係者の証言を基に、
彼の軌跡を辿ったノンフィクションです。

1990年の夏、ジョージア州。
クリストファー・マッカンドレスは、家族に何も告げずに旅立つ。
預金はすべて引き出して慈善団体に寄付。
オンボロのダットサンは途中でぶっ壊れてヒッチハイク。

彼が出会うさまざまな人たち。
ヒッピーのカップル、ジャンとレイニー。
サウスダコタの大農場主で大人の悪ガキ、ウェイン。
はみ出し者の集う場所の危うげな少女、トレイシー。
カリフォルニア州の独居老人、ロン。
その誰もから愛されたクリストファーは、
やがてすべての人間関係を断ち切り、アラスカの荒野へと向かう。
打ち捨てられたバスの中で始めるひとりきりの生活。

先日のアカデミー賞で主演男優賞を受賞したショーン・ペンの監督作。
役者が本業の人がメガホンを取る場合、自ら主演したり、
主演ではなくても、どこかにちらりと顔を出したりなんて人が多いですが、
ショーン・ペンは一切出ません。そういう主義のようです。

クリント・イーストウッドのように、
監督・主演を兼ねても素晴らしい人だっていますから、
その主義がいいかどうかは言い切れませんが、
作り手に徹するショーン・ペンの姿は、なんとなくカッコイイ。
しかも、悪ガキのイメージとはかけ離れた、
荘厳でありながら温かい眼差しが感じられる本作を撮るんだから、脱帽です。

エミール・ハーシュ演じるクリストファーは終始笑顔。
もしも、あんな笑顔を浮かべる人が身近にいたら、
私はまちがいなく惚れますが、それと同時に、
いつ離れて行ってしまうんだろうと切なくなることでしょう。

俳優としてのショーン・ペンは、来月公開の『ミルク』で。

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