夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マルタのやさしい刺繍』

2009年04月21日 | 映画(ま行)
『マルタのやさしい刺繍』(原題:Die Herbstzeitlosen)
監督:ベティナ・オベルリ
出演:シュテファニー・グラーザー,ハイジ・マリア・グレスナー,
   アンネマリー・デューリンガー,モニカ・グブザー他

出演者の中に「ハイジ」なんて名前の女優さんがいるのが
いかにもスイスの作品。
チーズで有名なエメンタール地方のお話です。

トループ村に住む80歳のマルタは、
一緒に雑貨店を営んでいた夫を半年前に亡くして以来、
すべての気力を失って、家にこもりっきり。

友人たちはマルタのことが心配でならない。
ことある毎に彼女を誘い出そうとするが、
マルタはさっぱり乗って来ない。

牧師である息子は、外面が良いだけの男。
義母の店をどうするつもりなのかと妻に聞かれ、
とっとと店を片付けるようにとマルタに告げに行く。

店の整理を始めたマルタは、
戸棚の奥底にしまい込んでいた箱を取り出す。
箱の中には美しいランジェリーの上下セットが。
それは、かつて洋裁の勉強をしていたマルタが、
いつかパリでランジェリーショップを開くことを夢みて、
自分でデザインしたものだった。

マルタを慕うリージは、そのランジェリーを見て目を輝かせる。
どうしてこんな技術を持っていることを
今まで黙っていたのかと尋ねるリージに、
「言わないほうがいいと夫に言われたから」と答えるマルタ。

この店をランジェリーショップにしようと意気込むリージに背中を押され、
マルタは昔の勘を取り戻しながら、
次々とランジェリーの製作を始めるのだが……。

保守的な村では、マルタの夫が生前に懸念していたとおり、
派手な下着専門店を開店するなんてもってのほか。
ハレンチ極まりないと嘲笑する男性陣。
そんな男性陣の奥様方は、本当は興味津々なのに、
噂になるのを怖れて店に近寄れません。

村の有力者から妨害を受け、息子にも激しく非難されて、
マルタは開店をあきらめかけますが、
息子の不倫現場を目撃し、
自分のことを棚に上げて恥さらしだと罵る息子なんぞに
夢を壊されてたまるものかと奮起します。

最初は遠巻きに見ていた友人たちも、
段々とマルタから勇気をもらったかのように、
言われっぱなしじゃない人生へと踏み出します。
車の免許取得、インターネット。
ちっちゃなことだったとしても、そこから開ける人生が。
何事も、始めるのに遅すぎることはなし。

ラストはとっても小気味よく。
いまどきの女の子のフォローも鮮やかに。
ナイス、おばあちゃん。

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