夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『冷たい熱帯魚』

2011年03月16日 | 映画(た行)
『冷たい熱帯魚』
監督:園子温
出演:吹越満,でんでん,黒沢あすか,神楽坂恵,梶原ひかり,渡辺哲他

こんなときに映画もどうなんだと思いながら。
明るいものと暗いものと迷い、暗いほうにしたら、気分が撃沈。
さまざまな悲惨な事件を盛り込んだ実録犯罪物というべき作品で、
それについては『映画秘宝』の3月号で紹介されています。

2009年1月14日。
小さな熱帯魚店を経営する社本信行は、妻と死別。
まだ若い妙子と再婚するが、前妻との間の娘である美津子は
妙子のことをとことん嫌い、折り合いは最悪。
気まずい空気の中で3人は暮らしている。

ある晩、男友だちと出かけた美津子が万引をして捕まる。
スーパーからの電話で、妙子とともに慌てて車を走らせた社本は、
警察へ通報しようとする店長になんとか詫びを聞き入れてもらおうと必死。
しかし、美津子には反省の色がまったく見えない。

そこへやって来たのが、店長と懇意らしい村田幸雄という男。
社本の店の何倍もの敷地の熱帯魚店を営む村田は、
寮を完備する自分の店で美津子を預かることを提案して、その場をとりなす。
責任を持って更生させるからと言われ、
社本と妙子もその申し入れを受けることに。

美津子は上機嫌で寮生活を開始。
いろいろなことが上手く行くかに見えたが、
村田から高級熱帯魚の繁殖による儲け話に誘われ、断れずにいたところ、
猟奇殺人事件の共犯となることを余儀なくされて……。

1993年に起きた埼玉愛犬家連続殺人事件が大きなベースとなっています。
経営者夫婦は、詐欺のような儲け話を顧客に持ちかけて、バレれば毒殺。
遺体を風呂場で解体してドラム缶で焼却。
「遺体なき殺人」と呼ばれるに至ったその工程は、
想像するだけでもおぞましいものですが、
本作では直視できないほどのリアルさをもって撮影されています。

寂しい町並み、冷たい雨。不安を煽る蛍光灯の白さ。
登場人物はみんなどこか異常。
実際の事件が本当にこの通りだったとは思えないのに、
リアリティーを感じてしまいます。
キャッチコピーの「この素晴らしき世界。」が本当に怖い。

人にはお薦めできないし、自分でも二度と観たくありません。
エロもグロもてんこ盛りで最悪だと思うのに、
おもしろかったと言わざるを得ない、とても困った作品です。

最後ぐらいはホロリと来るかと見せかけて突き落とされます。
だけど、これが救いでもあるのかと思ったりして。
「生きるってことは、痛いんだよ」。

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