夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『繕い裁つ人』

2015年02月11日 | 映画(た行)
『繕い裁つ人』
監督:三島有紀子
出演:中谷美紀,三浦貴大,片桐はいり,黒木華,杉咲花,中尾ミエ,伊武雅刀,余貴美子他

有休を取ったレディースデーに3本ハシゴの2本目。
前述の『エクソダス:神と王』を観たあと、
1階の成城石井に買い物に行き、戻ってきてちょうど良い時間。

同じ高校の卒業生であると知ってから、応援したい三島有紀子監督。
だけど、なんだかのめり込ない。
しかも、三島監督の作品には「嫌い」と言ってはいけない何かがあるようで、
そこがまたちょっと苦手だったりします。

同監督が脚本を担当した『二流小説家 シリアリスト』(2013)ならば、
駄作だと言っても冷たい目で見られたりしないと思うんですけど
(私的には楽しめたので、駄作だなんて言いませんが)、
『しあわせのパン』(2011)も『ぶどうのなみだ』(2014)も本作も、
とっても文句を言いづらい雰囲気。言うと悪人みたいで。(^^;

神戸の街を見渡す坂の上に建つ小さな仕立て屋“南洋裁店”。
初代店主の祖母から志そのままに店を引き継いだ二代目の市江(中谷美紀)は、
着る人に寄り添う、客にとって一生ものの服をつくることに拘っている。
神戸大丸に勤める藤井(三浦貴大)はそんな市江の服に惚れ込み、
ブランド化を提案するが、「顔の見えない人の服などつくれない」と市江は一蹴。
何度店へ足を運ぼうとも、まるで頑固じじいの市江からは相手にされず、
市江の母親(余貴美子)が出してくれる団子を食べて帰るだけ。

それでも藤井は足繁く市江のもとへと通い、市江の行くところどこへでもついてゆく。
市江が服を置くことを許している唯一の店“ナイーフ”のオーナー(片桐はいり)や、
市江の恩師(中尾ミエ)とも知り合いになり、信頼も得るが、市江の気持ちは一向に変わらず……。

嫌いなわけではないのです、三島監督の作品。
こういうのを自然体というのでしょうか。
しかしたとえば、本作で気に入らなかったのは、とことん標準語。
神戸が舞台なのに徹底して標準語、しかも上品な。
あえて全員に標準語でしゃべらせていることから、
現実感の希薄なメルヘンとして捉えればいいのかもしれませんが、
そのわりに女子高生がしゃべるのは「着れる」なんて「ら抜き」言葉だし、
オッサンが阪神の法被姿で騒いでいるシーンがあったり。
リアルとファンタジーのどっちに持っていきたいのかわからない。
これは同監督のこれまでの作品を観ていても思ったことでした。

でも、仕立て屋の仕事には見入りました。
お直しを引き受けた服の肩幅で客が老いたことを感じるシーンは素晴らしい。
神戸大丸のお直しコーナーの仕事を引き受ける別の仕立て屋(伊武雅刀)に
市江が涙ながらに訴えるシーンは私も涙。
なんだかんだ思いながらもしっかり泣かされている自分が可笑しくて。

次回の監督作のタイトルはなんと『破れたハートを売り物に』。
ど、どうして甲斐バンドの曲と同じなの。
どうやら複数の監督による短編作品集のようだけど、
こんなタイトルを付けられたら、また観にいってしまうやないの。
やっぱり応援してるで~。

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