夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『パーソナル・ソング』

2015年02月17日 | 映画(は行)
『パーソナル・ソング』(原題:Alive Inside)
監督:マイケル・ロサト=ベネット

梅田で『さよなら歌舞伎町』を観たあと、十三の第七藝術劇場へ。
年会費1万円を払うと8枚もらえる招待券で観るつもりが、
この日は上映終了後に大谷昭宏氏のトークショーがあるとかで、
イベント開催日につき招待券は使えませんと言われてしもた。
トークショーは聴かずに帰らないといけないけれど、映画だけは観ることに。

“パーソナル・ソング”、すなわち、「その人の好きな歌」。
治療法がないと言われる認知症に、音楽が有効である。
そんな音楽療法を提唱するソーシャルワーカー、ダン・コーエン氏の活動に密着。
症状が改善した患者や関係者に取材したドキュメンタリーです。

アメリカの認知症患者は500万人。
ダンはある介護施設の認知症患者にiPodで音楽を聴かせます。
すると、多くの患者の症状が劇的に改善。

ほんまかいなと若干疑いの目を持ちながら見ました。
劇的な効果を狙って撮られたところもあるでしょうから、
すべての人に有効かどうかはわかりませんが、
話を聴いてみると、なるほどと思わずにはいられません。

人間の脳のうち、音楽が記憶される部分というのは、
認知症による影響を比較的受けにくい部分なのだそうです。
80歳や90歳という年齢になり、日がな一日どこを見つめているのか、
何を考えているのかわからなかった老人が、
青春時代に聴いた歌に触れて、当時の様子をありありと思い出す。
歩行器に頼っていた人が歩行器を放して踊り出す。凄いことです。

確かに、音楽を聴いて掘り起こされる記憶は多そうです。
あの歌を聴いていた頃、あんなことをした、こんなことをした。
自分のことを振り返ってみても、音楽とともに思い出す光景はたくさん。

いくら有効だとわかっても、国からは助成金がなかなか出ません。
医師が1000ドルの薬を処方することには誰も何の疑問も持たないが、
40ドルの音楽機器を提供することには疑問を持たれるのだと。
最初は0.2%に満たない施設にしか提供されなかったiPodですが、
症状の改善がYouTubeにアップされたことから、
試してみたいと願う人びとの声が大きくなり、
ずいぶん多くの施設に提供されるようになったそうです。

私の“パーソナル・ソング”は何だろう。
そんなことを考えるのも楽しい。
簡単に試すことができるこの治療法、もっと取り入れられるといいなぁ。

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