6月と7月は気づかなかった、古い順に並べられるということを。
で、8月は読んだ日付の古い順に並べます。
2017年8月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5336ページ
ナイス数:1660ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly
■ザーッと降って、からりと晴れて (河出文庫)
初読みの著者名に既視感あると思ったら、『アンフェア』の原作者。そして映画監督デビュー作が昨年公開された『クハナ!』。キーワードが「ニューカレドニア」の短編5つ。話のきっかけとなる島名だったり、オヤジ風ダジャレだったり。最後は本当にその島で。年齢も職種も異なる人たちが繋がる話はもはや珍しくないけれど、サラッと読めて読後感も良し。いっぱい泣いたらいっぱい笑おう。そんな意味が込められた素敵なタイトルだと思います。読まずに消してくれと男から言われたメールを「素直に読まずに消す女がいたら紹介して欲しい」には笑った。
読了日:08月02日 著者:秦 建日子
https://bookmeter.com/books/11910675
■どこの家にも怖いものはいる (中公文庫)
ホラーは苦手なのですが、そこそこ年を食って、怖いモノへの耐性がそれなりにできたからか、ここ数年はたまに手を出しています。三津田さんお得意のモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)。著者の大ファンだという編集者・三間坂から受け取った5つの幽霊屋敷の話には奇妙な共通点が。「異変を感じたら一旦本を閉じたほうがいい」って、怖いがな(笑)。結果、相当怖がりの私でも大丈夫。相変わらず昭和な雰囲気が入りまじるところも好き。但し、もともと怖がりで、このさき一人暮らしや引っ越しの予定がある人は、読むとビビる、たぶん。
読了日:08月03日 著者:三津田 信三
https://bookmeter.com/books/11905068
■ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ (集英社文庫)
女子高生やOLが主人公の『うさぎパン』や『株式会社ネバーラ北関東支社』がよかった著者。本作の主人公・誠は、PCオタクの小夜子と幼なじみ。同校生のPC関係のお悩みを誠が受けて小夜子が解決ということを密かにおこなっていたが、何か大きなトラブルが起きそうだからと廃業。美人上級生の頼みを断れずに再開したところ、やはりその先にトラブルが。男子を主人公に据えると悲しいかな駄目みたい。テンポ悪くてテンション上がらず。タイトルにまつわる話だけはちょっと感動的。うっかり送信しちゃったメールを止めてくれる友人はほしい(笑)。
読了日:08月05日 著者:瀧羽 麻子
https://bookmeter.com/books/10915953
■夢をかなえるゾウ文庫版
TVドラマ版もアニメ版も未見。自己啓発本の類はなんとなく敬遠気味ながら、関西弁のガネーシャというところだけに惹かれて読み始めました。ガネーシャが「僕」に課すお題は決して新しいものではなく、社会人なら誰もが心がけているだろうけれど忘れてしまいがちなことばかり。人は楽しいと思うことしか頑張れない。ならば何でも楽しいと思えるように自分に仕向けよう。これを読むとなんだかものすごくポジティブ思考になれます。ガネーシャと釈迦の「今生のお別れごっこ」、好きです(笑)。神様だってグッとくる。神様を喜ばせるような神頼みを。
読了日:08月06日 著者:水野敬也
https://bookmeter.com/books/3085196
■ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
初版購入後5年放置していたのは、当時これを読んだら次に読む森見さんがなくなるのが寂しかったからです。小学4年生の「ぼく」が暮らす町の公園に突如出没したペンギン。とっても賢いぼくは、歯科のお姉さんがコーラ缶からペンギンを作り出せることを突き止める。って、何なのだこの奇天烈な話は。ひたすらニヤケる私。と同時に森見さんが苦手だという人の気持ちもなんとなくわかる。だってこんなにもウダウダ。だけど最後はきっちり切ない。私、女ですけれど、怒りたくなったら「おっぱい」のことを考えれば落ち着けるでしょうか。やってみよう。
読了日:08月08日 著者:森見 登美彦
https://bookmeter.com/books/5586115
■侠飯4 魅惑の立ち呑み篇 (文春文庫)
このシリーズが良いのは、心持ちデカめの文字で分厚くないところ。気楽な料理が並び、数時間で読めて、前向きな気持ちに。4作目の主人公は国会議員の秘書・旬一郎。彼が唯一くつろげるのが、気になる女将のいる立ち呑み屋。ところが女将が新しく雇い入れた男がどう見ても堅気ではない柳刃と火野。疑念と嫉妬に駆られる旬一郎だが、柳刃のつくる料理が旨すぎて。説教くさい本は好きじゃありませんが、柳刃になら説教されたい。今を楽しんで生きろ。しかしやっぱり生瀬さんよりも『バイプレイヤーズ』の誰かのほうが適役だと思う。生瀬さん、ごめん。
読了日:08月10日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/11917018
■プラージュ (幻冬舎文庫)
昨日からWOWOWにて星野源主演でドラマ版放映中。読了したら、このドラマを観るために契約したいと思うほど好きでした。主人公の貴生は、鬱憤を晴らしに飲みに行った店で覚醒剤に手を出して逮捕される。執行猶予付きになったものの、火事で家消失。何もかもなくした彼を住まわせてくれたのは、シェアハウス「プラージュ」。訳ありの住人ばかりということで不穏なだけの話を予想していたらなんのなんの。心を打たれました。信じて、赦して、認める。ざっくり大きな愛で住人を包むオーナー役には石田ゆり子。渋川清彦も気になる。やっぱり観たい!
読了日:08月13日 著者:誉田 哲也
https://bookmeter.com/books/12018728
■無名最強甲子園: 興南春夏連覇の秘密 (新潮文庫)
夏の高校野球が始まり、沖縄の興南高校はとうぶん勝つだろうと本を開いた日に負けてしまってガクッ。2010年の選手たちと指導者をつぶさに追ったという触れ込みですが、当時の監督で現理事長の我喜屋優氏についての話といったほうがいいかも。四季のない沖縄。四季を知る人に来てほしいと招かれた我喜屋監督。彼の言葉は時に耳が痛い。「なんくるないさ~」が、本来は「くじけずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来るさ」という意味だと初めて知りました。準備せずしてどうとでもなるわけじゃない。高校野球ファンならばどうぞ。
読了日:08月14日 著者:中村 計
https://bookmeter.com/books/10489979
■水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)
「言わなわからん」が私の持論です。この短編集の主人公たちは、察してもらえないからといっていらついているわけじゃないけれど、言えなくてつらい思いをしていたり、言ってもらえなくてもやもやしていたり。表題作はなく、各短編のタイトルには話中に登場する植物の名前が付いています。それを上手くまとめているのがこの表題。毎日におびえ、自己嫌悪しながら暮らす主人公たちが、心のうちを思いきって言葉にしてみることでちょっとだけ前を向けるようになる。窪美澄の紡ぐ物語は苦しくても絶望的ではなくて好き。やっぱり、言うてみなわからん。
読了日:08月16日 著者:窪 美澄
https://bookmeter.com/books/11728277
■入らずの森 (祥伝社文庫)
ホラーは苦手なくせして、なんでこんな本を買ってしまうのか。意味深な瞳の表紙に煽る帯。家に置いておくだけでも怖いやんか。ビビりつつ読み始めたら、終盤は怖いどころか、いい話でホロリ。森の話なら三津田信三の『ついてくるもの』の「八幡藪知らず」のほうがよほど怖い。Iターンした男が狂ってゆく過程がいちばん恐ろしい。表紙の金髪の不良少女とその同級生、それに彼女の祖母に泣かされて、こんなホラーなら大歓迎!と思いきや。このエピローグは私は要らん。せっかくの話が一気に世俗的に。ホラーならばこの〆ということになるのかしらん。
読了日:08月18日 著者:宇佐美 まこと
https://bookmeter.com/books/4693807
■魚のように (新潮文庫)
現在40代の著者が高校3年生のときに書いたという、80頁足らずの短編2つ。表題作は、姉が家出をしてバラバラになった家族の弟の語り。どうしてよいのかわからない「僕」も家を出て、歩きながら考える姉のこと。もう1編の『花盗人』は、嫌われ者の祖母を亡くした孫娘の語り。副題に「隔世遺伝」と付けたくなります。どちらの話も読みはじめてしばらくは「僕」や「私」の年齢がわからずとまどう。なるほど高校生のときに書いた話なのだからと納得。この突き放した感覚。みずみずしいというべきか、ひややかというべきか。心にぽっかり穴があく。
読了日:08月19日 著者:中脇 初枝
https://bookmeter.com/books/9793611
■明日のマーチ (新潮文庫)
人気作家なのに今まで読まなかったのはみうらじゅんのせいです。みうらじゅんの「いやげ物」、石田衣良の似顔絵皿を貰ったがために、読もうとするたびにその顔がちらついて。で、このたびやっと。山形県鶴岡市の会社を解雇された派遣社員の若者4名。急いで帰ってもしゃあないと、東京まで歩くことに。単純な理由で始めた徒歩の旅が、やがて政治的意味合いまで持たされるように。素直じゃない私は、優等生的展開を冷め気味に見ていたのに、終盤数カ所で涙。読み終われば、彼らと一緒に歩きたい自分がいるのでした。困ったとき、苦しいときは誠実に。
読了日:08月20日 著者:石田 衣良
https://bookmeter.com/books/7842128
■イノセント・デイズ (新潮文庫)
名門高校野球部の補欠部員を主人公にした映画『ひゃくはち』(2008)が大好きでした。その原作者がこんなミステリーも書けるなんて。放火殺人の罪で死刑囚となった幸乃が処刑される日の描写からスタート。冒頭が処刑の日の朝だから、これがくつがえるとは思えず、途中どう展開しようが彼女は命を絶たれてしまうのだと覚悟して読まねばなりません。そう、覚悟。幸乃以外は覚悟を決められなかったのかも。彼女の前では何もかもが傲慢に思えます。誰にも「生まれてきてごめんなさい」なんて思わせちゃいけない。彼女にありがとうと言葉をかけたい。
読了日:08月23日 著者:早見 和真
https://bookmeter.com/books/11546655
■徘徊タクシー (新潮文庫)
著者は「0円ハウス」の人なので、てっきりノンフィクションだと思い込んでいました。だって主人公は著者の名前そのまま、躁鬱病だというのも著者そのままだし。そうしたら妄想シーンがやたら多いわ『流星ワゴン』みたいな話になるわで、ようやくフィクションだと気づく。認知症の曽祖母を残して逝ってしまった祖父。その祖父の蜜柑色の愛車で徘徊タクシーを始めようとする主人公。周囲からボケ老人の徘徊と思われていても、ボケ老人なりの目的地がちゃんとあるのではという考え方は良いなぁ。そう考える余裕を持って介護に臨めたらいいのだけれど。
読了日:08月24日 著者:坂口 恭平
https://bookmeter.com/books/11544201
■初恋素描帖 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
中学2年生、20人、各8頁。恋心を綴る。目次が出色で、2年2組の名簿形式。出席番号・名前・部活欄と、備考に掲載頁を表記。出席番号順に登場しないところもイイ。大半が片想い。好きだと言いたいのに言えなくて、憎まれ口を叩いてばかりのところをほかの誰かに見られていることが、ほかの生徒の章で判明したりして、ニヤけて苦笑。どちらかといえばクラスの目立つ組の生徒の章よりも、地味めの生徒の章のほうに好感。と言いつつも私がいちばん好きだったのはおちゃらけ男子・武田くん編でしょかね。く〜、「チキショー、やっぱり好き」だって。
読了日:08月26日 著者:豊島ミホ
https://bookmeter.com/books/4046558
■ひとなつの。 真夏に読みたい五つの物語 (角川文庫)
あかん、夏が終わってしまうと焦って読む。5人の作家による、書き下ろしではないアンソロジー。『ペンギン・ハイウェイ』のレビューに、森見さんを好きすぎる私は、読むのがもったいなくて長らく取っていたのだと書きました。先日やっと『ペンギン』を読んで「おっぱい」に魅せられ、6年前に読んだ本書収載作『郵便少年』を再読したら、初読時はおっぱい未体験で気づかなかった、なんとこれはあの「ぼく」とハセガワくんの前日譚ではないですか。それだけでコーフン(笑)。嬉しさに他の4人の印象が薄れてしまいましたが、どれもひと夏の良い話。
読了日:08月29日 著者:森見 登美彦,瀧羽 麻子,大島 真寿美,藤谷 治,椰月 美智子
https://bookmeter.com/books/8171925
■黒百合 (創元推理文庫)
「騙される率100%」と帯にあります。ホンマかいなと思いつつ、アホですから100%騙される自信があります。語り手を替えて綴られる、昭和10年から27年にかけての出来事がどう繋がるのか。みごとに騙されたけれど、キンキンに張り巡らされた伏線に、鮮やかというよりは戸惑う。美形と足を引きずっている人、多すぎ(笑)。阪急電鉄の小林一三氏がモデルの翁を仮名にしている以外は地名等そのまま。むかし六甲で夏を過ごした経験を持つ私は懐かしい。著者は両眼失明の可能性を嘆いて失踪したため、これが最後の作品とか。その事実が悲しい。
読了日:08月31日 著者:多島 斗志之
https://bookmeter.com/books/9789486
で、8月は読んだ日付の古い順に並べます。
2017年8月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5336ページ
ナイス数:1660ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly
■ザーッと降って、からりと晴れて (河出文庫)
初読みの著者名に既視感あると思ったら、『アンフェア』の原作者。そして映画監督デビュー作が昨年公開された『クハナ!』。キーワードが「ニューカレドニア」の短編5つ。話のきっかけとなる島名だったり、オヤジ風ダジャレだったり。最後は本当にその島で。年齢も職種も異なる人たちが繋がる話はもはや珍しくないけれど、サラッと読めて読後感も良し。いっぱい泣いたらいっぱい笑おう。そんな意味が込められた素敵なタイトルだと思います。読まずに消してくれと男から言われたメールを「素直に読まずに消す女がいたら紹介して欲しい」には笑った。
読了日:08月02日 著者:秦 建日子
https://bookmeter.com/books/11910675
■どこの家にも怖いものはいる (中公文庫)
ホラーは苦手なのですが、そこそこ年を食って、怖いモノへの耐性がそれなりにできたからか、ここ数年はたまに手を出しています。三津田さんお得意のモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)。著者の大ファンだという編集者・三間坂から受け取った5つの幽霊屋敷の話には奇妙な共通点が。「異変を感じたら一旦本を閉じたほうがいい」って、怖いがな(笑)。結果、相当怖がりの私でも大丈夫。相変わらず昭和な雰囲気が入りまじるところも好き。但し、もともと怖がりで、このさき一人暮らしや引っ越しの予定がある人は、読むとビビる、たぶん。
読了日:08月03日 著者:三津田 信三
https://bookmeter.com/books/11905068
■ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ (集英社文庫)
女子高生やOLが主人公の『うさぎパン』や『株式会社ネバーラ北関東支社』がよかった著者。本作の主人公・誠は、PCオタクの小夜子と幼なじみ。同校生のPC関係のお悩みを誠が受けて小夜子が解決ということを密かにおこなっていたが、何か大きなトラブルが起きそうだからと廃業。美人上級生の頼みを断れずに再開したところ、やはりその先にトラブルが。男子を主人公に据えると悲しいかな駄目みたい。テンポ悪くてテンション上がらず。タイトルにまつわる話だけはちょっと感動的。うっかり送信しちゃったメールを止めてくれる友人はほしい(笑)。
読了日:08月05日 著者:瀧羽 麻子
https://bookmeter.com/books/10915953
■夢をかなえるゾウ文庫版
TVドラマ版もアニメ版も未見。自己啓発本の類はなんとなく敬遠気味ながら、関西弁のガネーシャというところだけに惹かれて読み始めました。ガネーシャが「僕」に課すお題は決して新しいものではなく、社会人なら誰もが心がけているだろうけれど忘れてしまいがちなことばかり。人は楽しいと思うことしか頑張れない。ならば何でも楽しいと思えるように自分に仕向けよう。これを読むとなんだかものすごくポジティブ思考になれます。ガネーシャと釈迦の「今生のお別れごっこ」、好きです(笑)。神様だってグッとくる。神様を喜ばせるような神頼みを。
読了日:08月06日 著者:水野敬也
https://bookmeter.com/books/3085196
■ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
初版購入後5年放置していたのは、当時これを読んだら次に読む森見さんがなくなるのが寂しかったからです。小学4年生の「ぼく」が暮らす町の公園に突如出没したペンギン。とっても賢いぼくは、歯科のお姉さんがコーラ缶からペンギンを作り出せることを突き止める。って、何なのだこの奇天烈な話は。ひたすらニヤケる私。と同時に森見さんが苦手だという人の気持ちもなんとなくわかる。だってこんなにもウダウダ。だけど最後はきっちり切ない。私、女ですけれど、怒りたくなったら「おっぱい」のことを考えれば落ち着けるでしょうか。やってみよう。
読了日:08月08日 著者:森見 登美彦
https://bookmeter.com/books/5586115
■侠飯4 魅惑の立ち呑み篇 (文春文庫)
このシリーズが良いのは、心持ちデカめの文字で分厚くないところ。気楽な料理が並び、数時間で読めて、前向きな気持ちに。4作目の主人公は国会議員の秘書・旬一郎。彼が唯一くつろげるのが、気になる女将のいる立ち呑み屋。ところが女将が新しく雇い入れた男がどう見ても堅気ではない柳刃と火野。疑念と嫉妬に駆られる旬一郎だが、柳刃のつくる料理が旨すぎて。説教くさい本は好きじゃありませんが、柳刃になら説教されたい。今を楽しんで生きろ。しかしやっぱり生瀬さんよりも『バイプレイヤーズ』の誰かのほうが適役だと思う。生瀬さん、ごめん。
読了日:08月10日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/11917018
■プラージュ (幻冬舎文庫)
昨日からWOWOWにて星野源主演でドラマ版放映中。読了したら、このドラマを観るために契約したいと思うほど好きでした。主人公の貴生は、鬱憤を晴らしに飲みに行った店で覚醒剤に手を出して逮捕される。執行猶予付きになったものの、火事で家消失。何もかもなくした彼を住まわせてくれたのは、シェアハウス「プラージュ」。訳ありの住人ばかりということで不穏なだけの話を予想していたらなんのなんの。心を打たれました。信じて、赦して、認める。ざっくり大きな愛で住人を包むオーナー役には石田ゆり子。渋川清彦も気になる。やっぱり観たい!
読了日:08月13日 著者:誉田 哲也
https://bookmeter.com/books/12018728
■無名最強甲子園: 興南春夏連覇の秘密 (新潮文庫)
夏の高校野球が始まり、沖縄の興南高校はとうぶん勝つだろうと本を開いた日に負けてしまってガクッ。2010年の選手たちと指導者をつぶさに追ったという触れ込みですが、当時の監督で現理事長の我喜屋優氏についての話といったほうがいいかも。四季のない沖縄。四季を知る人に来てほしいと招かれた我喜屋監督。彼の言葉は時に耳が痛い。「なんくるないさ~」が、本来は「くじけずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来るさ」という意味だと初めて知りました。準備せずしてどうとでもなるわけじゃない。高校野球ファンならばどうぞ。
読了日:08月14日 著者:中村 計
https://bookmeter.com/books/10489979
■水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)
「言わなわからん」が私の持論です。この短編集の主人公たちは、察してもらえないからといっていらついているわけじゃないけれど、言えなくてつらい思いをしていたり、言ってもらえなくてもやもやしていたり。表題作はなく、各短編のタイトルには話中に登場する植物の名前が付いています。それを上手くまとめているのがこの表題。毎日におびえ、自己嫌悪しながら暮らす主人公たちが、心のうちを思いきって言葉にしてみることでちょっとだけ前を向けるようになる。窪美澄の紡ぐ物語は苦しくても絶望的ではなくて好き。やっぱり、言うてみなわからん。
読了日:08月16日 著者:窪 美澄
https://bookmeter.com/books/11728277
■入らずの森 (祥伝社文庫)
ホラーは苦手なくせして、なんでこんな本を買ってしまうのか。意味深な瞳の表紙に煽る帯。家に置いておくだけでも怖いやんか。ビビりつつ読み始めたら、終盤は怖いどころか、いい話でホロリ。森の話なら三津田信三の『ついてくるもの』の「八幡藪知らず」のほうがよほど怖い。Iターンした男が狂ってゆく過程がいちばん恐ろしい。表紙の金髪の不良少女とその同級生、それに彼女の祖母に泣かされて、こんなホラーなら大歓迎!と思いきや。このエピローグは私は要らん。せっかくの話が一気に世俗的に。ホラーならばこの〆ということになるのかしらん。
読了日:08月18日 著者:宇佐美 まこと
https://bookmeter.com/books/4693807
■魚のように (新潮文庫)
現在40代の著者が高校3年生のときに書いたという、80頁足らずの短編2つ。表題作は、姉が家出をしてバラバラになった家族の弟の語り。どうしてよいのかわからない「僕」も家を出て、歩きながら考える姉のこと。もう1編の『花盗人』は、嫌われ者の祖母を亡くした孫娘の語り。副題に「隔世遺伝」と付けたくなります。どちらの話も読みはじめてしばらくは「僕」や「私」の年齢がわからずとまどう。なるほど高校生のときに書いた話なのだからと納得。この突き放した感覚。みずみずしいというべきか、ひややかというべきか。心にぽっかり穴があく。
読了日:08月19日 著者:中脇 初枝
https://bookmeter.com/books/9793611
■明日のマーチ (新潮文庫)
人気作家なのに今まで読まなかったのはみうらじゅんのせいです。みうらじゅんの「いやげ物」、石田衣良の似顔絵皿を貰ったがために、読もうとするたびにその顔がちらついて。で、このたびやっと。山形県鶴岡市の会社を解雇された派遣社員の若者4名。急いで帰ってもしゃあないと、東京まで歩くことに。単純な理由で始めた徒歩の旅が、やがて政治的意味合いまで持たされるように。素直じゃない私は、優等生的展開を冷め気味に見ていたのに、終盤数カ所で涙。読み終われば、彼らと一緒に歩きたい自分がいるのでした。困ったとき、苦しいときは誠実に。
読了日:08月20日 著者:石田 衣良
https://bookmeter.com/books/7842128
■イノセント・デイズ (新潮文庫)
名門高校野球部の補欠部員を主人公にした映画『ひゃくはち』(2008)が大好きでした。その原作者がこんなミステリーも書けるなんて。放火殺人の罪で死刑囚となった幸乃が処刑される日の描写からスタート。冒頭が処刑の日の朝だから、これがくつがえるとは思えず、途中どう展開しようが彼女は命を絶たれてしまうのだと覚悟して読まねばなりません。そう、覚悟。幸乃以外は覚悟を決められなかったのかも。彼女の前では何もかもが傲慢に思えます。誰にも「生まれてきてごめんなさい」なんて思わせちゃいけない。彼女にありがとうと言葉をかけたい。
読了日:08月23日 著者:早見 和真
https://bookmeter.com/books/11546655
■徘徊タクシー (新潮文庫)
著者は「0円ハウス」の人なので、てっきりノンフィクションだと思い込んでいました。だって主人公は著者の名前そのまま、躁鬱病だというのも著者そのままだし。そうしたら妄想シーンがやたら多いわ『流星ワゴン』みたいな話になるわで、ようやくフィクションだと気づく。認知症の曽祖母を残して逝ってしまった祖父。その祖父の蜜柑色の愛車で徘徊タクシーを始めようとする主人公。周囲からボケ老人の徘徊と思われていても、ボケ老人なりの目的地がちゃんとあるのではという考え方は良いなぁ。そう考える余裕を持って介護に臨めたらいいのだけれど。
読了日:08月24日 著者:坂口 恭平
https://bookmeter.com/books/11544201
■初恋素描帖 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
中学2年生、20人、各8頁。恋心を綴る。目次が出色で、2年2組の名簿形式。出席番号・名前・部活欄と、備考に掲載頁を表記。出席番号順に登場しないところもイイ。大半が片想い。好きだと言いたいのに言えなくて、憎まれ口を叩いてばかりのところをほかの誰かに見られていることが、ほかの生徒の章で判明したりして、ニヤけて苦笑。どちらかといえばクラスの目立つ組の生徒の章よりも、地味めの生徒の章のほうに好感。と言いつつも私がいちばん好きだったのはおちゃらけ男子・武田くん編でしょかね。く〜、「チキショー、やっぱり好き」だって。
読了日:08月26日 著者:豊島ミホ
https://bookmeter.com/books/4046558
■ひとなつの。 真夏に読みたい五つの物語 (角川文庫)
あかん、夏が終わってしまうと焦って読む。5人の作家による、書き下ろしではないアンソロジー。『ペンギン・ハイウェイ』のレビューに、森見さんを好きすぎる私は、読むのがもったいなくて長らく取っていたのだと書きました。先日やっと『ペンギン』を読んで「おっぱい」に魅せられ、6年前に読んだ本書収載作『郵便少年』を再読したら、初読時はおっぱい未体験で気づかなかった、なんとこれはあの「ぼく」とハセガワくんの前日譚ではないですか。それだけでコーフン(笑)。嬉しさに他の4人の印象が薄れてしまいましたが、どれもひと夏の良い話。
読了日:08月29日 著者:森見 登美彦,瀧羽 麻子,大島 真寿美,藤谷 治,椰月 美智子
https://bookmeter.com/books/8171925
■黒百合 (創元推理文庫)
「騙される率100%」と帯にあります。ホンマかいなと思いつつ、アホですから100%騙される自信があります。語り手を替えて綴られる、昭和10年から27年にかけての出来事がどう繋がるのか。みごとに騙されたけれど、キンキンに張り巡らされた伏線に、鮮やかというよりは戸惑う。美形と足を引きずっている人、多すぎ(笑)。阪急電鉄の小林一三氏がモデルの翁を仮名にしている以外は地名等そのまま。むかし六甲で夏を過ごした経験を持つ私は懐かしい。著者は両眼失明の可能性を嘆いて失踪したため、これが最後の作品とか。その事実が悲しい。
読了日:08月31日 著者:多島 斗志之
https://bookmeter.com/books/9789486