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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『83歳のやさしいスパイ』

2021年07月27日 | 映画(は行)
『83歳のやさしいスパイ』(原題:El Agente Topo)
監督:マイテ・アルベルディ
 
学生時代は毎日かよっていたのに、今はちょっと遠く感じる京都。
えいっ!と気合いを入れなきゃなかなか向かえないのですが、
この日は朝から京都シネマに4本予約。行くぞ。
 
ところがオンライン予約後に電車の時間を調べたら、
なぬ!?阪急電車の京都線で人身事故があった模様。
目的地の烏丸まで阪急で行くのは無理っぽくて、
JRと京都市営地下鉄を乗り継ぐなら今すぐ出てもキワキワ。
涙目になりながら慌てて家を出たところ、
宝塚線に乗っている間に京都線復旧。間に合いました♪
 
チリ/アメリカ/ドイツ/オランダ/スペイン作品。
なんとも風変わりで楽しく、心に沁みるドキュメンタリーです。
そうだと知らずに観たら、きっとフィクションだと思うはず。
 
チリにて、ある日の求人広告。募っているのは80歳〜90歳の老人。
こんな年齢層への求人なんて、見たことがない。
応募者との面接段階から撮影されています。
 
仕事を射止めたのは83歳のセルヒオ。
4カ月前に妻に先立たれ、今は独り暮らしをしています。
彼の任務は老人ホームへの潜入捜査。
入居者である母親への虐待を疑う女性から依頼を受けた探偵事務所が、
セルヒオをスパイとして送り込もうというもの。
 
求人の条件には、年齢のほかに「電子機器を扱えること」もありました。
83歳といえどもスマホはちゃんと使えます。
それでも、音声メッセージの送信機能などは使ったことがなく、
まずその操作を覚えるのがなかなか大変。
本件を担当する探偵ロムロがイライラする姿も可笑しい。
毎日の報告は周囲にバレないよう、暗号も駆使せなあかんし(笑)。
 
さてさて、こうして潜入捜査が始まるわけですが、
ホームはほぼ女の園で、入居者は男性数名に対して女性は何十人もいる。
そこにお洒落で知的な紳士セルヒオがやってきたからさぁ大変。
セルヒオはモテモテになっちゃいます。
 
女性にちやほやされて悪い気はしないでしょうが、
セルヒオはちっとも偉そうじゃない。どの入居者にも親切で優しい。
この人、カウンセラーの資質があるんじゃないかと思うほど。
自分の記憶が薄れて行くことに気づいて苦しむ女性とのやりとりなど、
あまりにも温かく切なくて、涙なしでは聴けません。
 
しかしこんなふうに入居者の誰も彼ものことをセルヒオが案ずるから、
肝心の対象女性の捜査は遅々として進まない(笑)。
 
「ターゲットは手厚く介護されている。
僕がこんなことを言う立場にないのはわかっているが、この捜査に意味はあるのか。
虐待を疑っていると言いながら、娘は一度も面会に来ないじゃないか」。
 
ユーモアに満ちていて、かつ介護についても考えさせられる良作でした。
ぜひぜひご覧ください。

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