夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『痛いほどきみが好きなのに』

2009年09月07日 | 映画(あ行)
『痛いほどきみが好きなのに』(原題:The Hottest State)
監督:イーサン・ホーク
出演:マーク・ウェバー,カタリーナ・サンディノ・モレノ,
   イーサン・ホーク,ローラ・リニー,ミシェル・ウィリアムズ他

昨年公開された2006年の作品。
俳優のイーサン・ホークが、若かりし頃の失恋体験を基に
自らメガホンを取った自伝的青春映画です。

原題は“The Hottest State”。つまり、最も暑い州。
それがテキサス州を指していることは最初から推測できますが、
原題そのままが台詞として出て来るシーンには、ちょっぴりジワ~ン。
それにしても、原題とは全然関係のないこの邦題、
内容とバッチリ合っています。最近の邦題のなかで1等賞。

幼少期をテキサス州で過ごしたウィリアム。
両親の離婚が原因でテキサス州を離れ、
20歳を少し過ぎた今はニューヨークでひとり暮らし。
俳優を目指している彼にはぽつぽつと仕事が舞い込むようになり、
女にも不自由することなく、毎日がお気楽ながら充実。

しかし、時折、演技をすること=人のフリをすることが
いちばんの特技である自分が虚しくなる。
そんなことを考えているときにバーで出逢ったのが、
歌手を目指してニューヨークにやって来たばかりのサラ。
ウィリアムは、説明不能なほど彼女に強く惹かれる。

誰とでも寝るくせに、その日、サラには手を出せなかったウィリアム。
引っ越し予定の部屋に入居できるようになるまで、
一緒に住まわせてほしいと言うサラの申し出に驚喜するが、
サラから体を許す気はないと断言される。
やがて、サラには辛い失恋の過去があることを知り……。

ほんとに情けないんです、ウィリアムが。
これがイーサン・ホークの実体験に基づいているのかと思うと、
あぁ、彼にもこういう恋愛があったんだなぁと余計に可笑しい。
理由なんてわからないけどたまらなく好きだった女性がいる人なら、
この心の痛みがわかって泣きたくなるでしょう。
女性としては、笑っちゃうぐらい情けないので、逆に抱きしめたくなります。

彼女が一緒じゃないと何をしていいのかわからなくて、
3日で13本もビデオを観てしまったと言う彼。
電話に出ようとしない彼女に電話をかけまくり、
留守電に毎回長い長いメッセージを残す彼。
こうして書くとストーカー張りなのですが、
あまりにもバカっぽくて愛おしい。

たまに眠気に襲われながらも、
観終わると、甘酸っぱい感情でいっぱいに。

もう一度、誰かに失恋するなら、きみがいい。

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『きみの友だち』

2009年09月03日 | 映画(か行)
『きみの友だち』
監督:廣木隆一
出演:石橋杏奈,北浦愛,吉高由里子,福士誠治,森田直幸,柄本時生,
   華恵,中村麻美,大森南朋,柄本明,田口トモロヲ,宮崎美子他

重松清の同名小説を映画化。
そう、あれほど苦手だった、『その日のまえに』(2008)と同じです。
結論から言って、重松清を映画化するなら、
SABU監督は最高、廣木監督はなんとなく好き、
大林監督はごめんなさい。(;_;)

だけど、重松清を読みたいと思わせてくれたのは大林監督です。
まだ1冊も読んだことのない重松清は、
おそらく私のストライクゾーン。ど真ん中かも。

フリースクールの20歳のボランティアリーダー、和泉恵美。
いつも仏頂面でとっつきにくそうなのに、
子どもたちからは「もこちゃん先生」と慕われている。
取材に訪れたジャーナリストの中原が興味を惹かれて声をかけると、
恵美はぶっきらぼうに、ぽつぽつと、大切な友だちのことを話し始める。

恵美は10歳のとき、交通事故に遭い、重傷を負う。
以来、杖なしでは歩けなくなった。
縄跳び大会では、強制的に縄の持ち役が回ってくる。
仕方のないことだがおもしろくない。
そんな彼女とともに縄の持ち役となったのが、
生まれつき体の弱い楠原由香。

怒ってばかりの恵美に対し、由香は明るく穏やかに接する。
恵美の態度は変わらないが、ふたりはいつも一緒に過ごすようになる。
しかし、5年後の中学校卒業を目前にした日、由香の病状が悪化。
恵美の高校受験が終わるまで、見舞いには来ないでほしいと由香は懇願。
晴れて再び病室を訪れたとき、そこに由香の姿はなく……。

長い闘病生活で、雲が友だちになった由香は、
自分が「もこもこ雲」と呼んでいる雲の話を恵美にします。
由香の「もこもこ雲」を探し続ける恵美。
空が、雲が、本当に素敵な作品です。

この作品に心を持って行かれたのは、たったひとつの台詞ゆえ。
ある日、気分のすぐれない由香に保健室で会った同級生のハナは、
「和泉さんといつもふたりだね」と話しかけます。
「友だち、いっぱいいるほうが楽しくない?」と聞くハナに、由香の答えは
「う~ん。でも、私は、恵美ちゃんといっぱい一緒にいるほうがいい」。
ごく自然に由香の口から出てきたこの台詞と、
その幸せそうな表情に参りました。

原作の短編を織り交ぜた映画で、
恵美の弟とその友だちが登場するエピソードも◎。
すっかり秋空の今日このごろ、観たい作品です。

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