夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『きみの友だち』

2009年09月03日 | 映画(か行)
『きみの友だち』
監督:廣木隆一
出演:石橋杏奈,北浦愛,吉高由里子,福士誠治,森田直幸,柄本時生,
   華恵,中村麻美,大森南朋,柄本明,田口トモロヲ,宮崎美子他

重松清の同名小説を映画化。
そう、あれほど苦手だった、『その日のまえに』(2008)と同じです。
結論から言って、重松清を映画化するなら、
SABU監督は最高、廣木監督はなんとなく好き、
大林監督はごめんなさい。(;_;)

だけど、重松清を読みたいと思わせてくれたのは大林監督です。
まだ1冊も読んだことのない重松清は、
おそらく私のストライクゾーン。ど真ん中かも。

フリースクールの20歳のボランティアリーダー、和泉恵美。
いつも仏頂面でとっつきにくそうなのに、
子どもたちからは「もこちゃん先生」と慕われている。
取材に訪れたジャーナリストの中原が興味を惹かれて声をかけると、
恵美はぶっきらぼうに、ぽつぽつと、大切な友だちのことを話し始める。

恵美は10歳のとき、交通事故に遭い、重傷を負う。
以来、杖なしでは歩けなくなった。
縄跳び大会では、強制的に縄の持ち役が回ってくる。
仕方のないことだがおもしろくない。
そんな彼女とともに縄の持ち役となったのが、
生まれつき体の弱い楠原由香。

怒ってばかりの恵美に対し、由香は明るく穏やかに接する。
恵美の態度は変わらないが、ふたりはいつも一緒に過ごすようになる。
しかし、5年後の中学校卒業を目前にした日、由香の病状が悪化。
恵美の高校受験が終わるまで、見舞いには来ないでほしいと由香は懇願。
晴れて再び病室を訪れたとき、そこに由香の姿はなく……。

長い闘病生活で、雲が友だちになった由香は、
自分が「もこもこ雲」と呼んでいる雲の話を恵美にします。
由香の「もこもこ雲」を探し続ける恵美。
空が、雲が、本当に素敵な作品です。

この作品に心を持って行かれたのは、たったひとつの台詞ゆえ。
ある日、気分のすぐれない由香に保健室で会った同級生のハナは、
「和泉さんといつもふたりだね」と話しかけます。
「友だち、いっぱいいるほうが楽しくない?」と聞くハナに、由香の答えは
「う~ん。でも、私は、恵美ちゃんといっぱい一緒にいるほうがいい」。
ごく自然に由香の口から出てきたこの台詞と、
その幸せそうな表情に参りました。

原作の短編を織り交ぜた映画で、
恵美の弟とその友だちが登場するエピソードも◎。
すっかり秋空の今日このごろ、観たい作品です。

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