夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『9〈ナイン〉 9番目の奇妙な人形』

2010年06月10日 | 映画(な行)
『9〈ナイン〉 9番目の奇妙な人形』(原題:9)
監督:シェーン・アッカー
声の出演:イライジャ・ウッド,ジェニファー・コネリー,
     クリストファー・プラマー,ジョン・C・ライリー他

現在、ミニシアター系で公開中。
そろそろ終映してしまいそうですが、オススメ。

もともとは11分の短編アニメで、YouTubeで観ることができます。
それにあのティム・バートンが惚れ込み、
監督の背中を押して長編リメイクしたもの。
そんなわけで、ティム・バートンがプロデューサーとして名を連ねています。

麻布を縫い合わせて作られた人形が、とある研究室の片隅で目を覚ます。
お腹にはジッパーが付き、背中には“9”と書かれている。
自分はいった何者なのか、なぜここにいるのかもわからず、
外へ出てみると、目の前には廃墟と化した世界が。

おそるおそる足取りを進めると、背中に“2”と書かれた人形と遭遇する。
警戒する9に、2は仲間であることを告げ、
壊れていた9の発声装置を修理してくれる。

ほっとしたのも束の間、邪悪な雰囲気に満ちた巨大マシンが現れ、
懸命に9を逃がそうとした2は、どこかへ連れ去られてしまう。

失神していた9は、他のナンバーを付けた人形たちに助けられる。
リーダーの“1”、そのボディーガードを務める“8”、
職人気質の“5”、不思議な絵ばかり描いている“6”。

みんなに状況を説明し、2を捜しに行こうと言う9に、1は断固反対する。
1曰く、世界が荒んでからというもの、自分がリーダーとなって、
なんとか安全に生きる方法を追求してきた。
マシン相手に戦うのは得策ではない、2のことは放っておけと。

あきらめきれない9は、5を誘って、マシンの住処へと向かう。
そこへ、仲間のもとを去ったはずの女剣士“7”が現れて……。

決して子ども向きとは言えない生々しさもありますが、
素晴らしいダーク・ファンタジーです。

安全を確保できる場所で息を潜めて暮らすべきだという1に対し、
仲間を見殺しになどできないと正義感に燃える9。
どちらがヒーローにふさわしいかといえば9なのでしょうけれど、
独裁的に見える1はとことん慎重。
9はいささか軽率な行動で危険を招き、
アンタ、何してくれるねん!とツッコミたくなることも。

あり合わせのもので作られた人形の出来は秀逸。
また、吹きすさぶ風の冷たさすら感じられそうなアニメーションに
思わず唸らされました。

ティム・バートンがぞっこんなことに大納得。

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『告白』

2010年06月07日 | 映画(か行)
『告白』
監督:中島哲也
出演:松たか子,岡田将生,木村佳乃,西井幸人,藤原薫,橋本愛他

封切り日の朝イチで。

湊かなえの同名原作は、数カ月前に偶然手に取りました。
読みかけだった別の本を置き忘れて出かけ、
出先で読む本がほしくなったので、手頃な厚さに惹かれてこれを購入。
そうしたら、厚さに比例しない内容の重さに撃沈。

けれど、非常に面白かったのと、興味を持たざるを得ない監督―
『下妻物語』(2004)、『嫌われ松子の一生』(2006)の監督、
『ララピポ』(2008)の脚本担当―による映画化ということで、
観に行かずにはいられませんでした。

原作にかなり忠実な構成となっています。

某中学校の終業式の日。
騒々しい1年B組の教室で、担任の女教師、森口は淡々と話し出す。
口調とは裏腹に衝撃的な内容に、生徒たちは息を呑み、
ざわついていた教室は異様な雰囲気に包まれる。

その話の内容とは。
数カ月前、シングルマザーである森口の幼い娘が校内のプールで溺死する。
事故として片付けられるが、森口は、あれは事故ではなく、
このクラスの生徒2人によって殺されたのだと言う。

警察に通報したところで、犯人は少年法に守られて、
ぬくぬくと生きていくだけ。
そこで、自らの手で復讐することにしたと。

誰が犯人なのか、また復讐がどんな方法で始まるのかは、
映画の序盤で明らかにされます。原作も然り。

で、ネタバレにはならないだろうと書いてしまいますが、
森口のパートナーはHIV感染者。
そのパートナーの血液を犯人の飲む牛乳に混ぜたと森口は「告白」します。
こうして、森口から生徒への告白で始まり、
以降は、学級委員、犯人の生徒2人、そのうちの1人の母親ら、
それぞれの手紙、日記、ホームページ等への独白の形式で進められてゆきます。

終始、状況に合っているとは思えない音楽が流れ、
そのせいで余計に不安に駆られます。
ポップで美しい映像も、恐怖を煽る効果抜群。

これを良い映画だと人に薦めるのもどうだか。
ただ、面白かったことはまちがいなく、
あの原作をこんなふうに映画化した監督はやはりスゴイと思います。
松たか子は新境地を開拓したのでは。
映画終了後、「松たか子、見直したわ」という感嘆の声も聞きました。

この後味は、なんとなく『ドッグヴィル』(2003)に似ています。
……なんて言うと、自分がすごい極悪人みたい。(--;

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『琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。』

2010年06月03日 | 映画(ら行)
『琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。』
監督:當間早志,福永周平,大城直也
出演:幸地尚子,吉田妙子,与那国宙,アルベルト,新城愛理,
   神谷健太,カッチャン,ジョニー宜野湾,桃原遥,仲田幸子他

2007年に劇場公開、先月末にDVD化されました。
「沖縄の皆様、世界の皆様、これがホントの琉球映画でゴザイマス!」と
キャッチコピーで謳われているとおり、
沖縄が舞台であるのはもちろんのこと、
スタッフ、キャスト、企画、製作、配給にいたるまですべて、
沖縄の人だけで手がけたという、100%、沖縄の映画なのだそうな。
3本の短編から成るオムニバス作品です。

1本目は『See Me?』(監督:當間早志)。
夏子は、ヒゲ面のおっさんバンド“ひじひじ”のマネージャー。
アルバム発売記念のインストアライブが予定されている日、
車でメンバーを迎えに行こうとしていると、
その車に見知らぬおばあさんと少年が乗り込んでくる。
夏子の車をタクシーと勘違いしている様子で、なんとなく断れない。
一方、“ひじひじ”のメンバーは、珍しいトカゲを追いかけるうちに、
清明祭(しーみー)と呼ばれる祖先供養の行事に出くわし、演奏することに。
「See Me」と「しーみー」なんて駄洒落もいいところですが、
それを活かした温かいオチになっています。

2本目は『Happy☆Pizza』(監督:福永周平)。
宅配ピザ屋で働くマリオは、配達先のアパートで、
泣いている住人アイリを見かけて、そっとハンカチを手渡す。
以来、アイリが毎日ピザを注文するようになり、ドア越しに進展する恋。
ところが、ある日、アイリの元カレが現れて、
凹んだマリオは宅配をほかの従業員に任せてしまう。
台詞なし、心地よい音楽とともに進みます。
まさかお笑い路線に落ち着くとは。(^^;

3本目は『マサーおじいの傘』(監督:大城直也)。
小学生の海斗は、母親の死のことで父親を恨んでいる。
父親は海斗に言い訳もせず、ただ毎日にぎりめしを作る。
強くなりたい海斗は、伝説の空手家であるマサー爺に弟子入りを志願。
しかし、肝心の技をいつまで経っても教えてもらえず、
本当にマサー爺が強いのかどうか疑念を抱き始める。
糸満に伝わると言われる格言「意地ぬいじらぁ手引き、手ぬいじらぁ意地引き」。
この意味を知ったとき、グッと来ました。
強さとは、優しさとは。考えてみたくなる作品です。

「琉球カウボーイフィルムス」プロジェクト、
これからも琉球映画をどんどん発信して行ってください。

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『チェイサー』について、訂正とお詫び。

2010年06月02日 | 映画(た行)
2010/05/18の日記に書いた『チェイサー』。
お読みくださった方のひとりから、
昨日、「違いますよ」というメールをいただきました。

このくだりです。↓

> 韓国映画のリメイクといえば、
>『インファナル・アフェア』(2002)のリメイク、
>『ディパーテッド』(2006)がありますが、
> 本作も同じくレオナルド・ディカプリオがリメイク権を獲得して、
> ハリウッド・リメイクが決定しているそうです。

本当にすみません。
『インファナル・アフェア』は韓国映画ではなく、香港映画です。
私も大好きな映画なのに、
なぜかこのときは韓国だと思い込んでしまっていました。

『インファナル・アフェア』は、
私が「ブリーフのもっとも似合う男」だと思っている、
トニー・レオン主演だというのに、
こんなまちがったことを書いてしまってごめんなさい。

2004/10/22の日記にこのように書いています。↓

> トニー出演の最近の作品でイチ押しは
> なんといっても『インファナル・アフェア』(2002)。
> ブラピがリメイク権を獲得したことでも話題になっています。
> 警察の動きをかぎつけるために、
> 香港マフィアでありながら警察学校に送り込まれたラウと、
> 同時期、在校中に警視に見込まれて、
> 素行不良での退校をカムフラージュ、
> マフィアへの潜入スパイとなったヤン。
> ヤン役を演じたトニーは、まるでズタボロ雑巾のよう。
> 男泣きの逸品です。

なお、香港映画でのブリーフについては
その後もたびたび書いていますので、
興味がおありの方は、こちらこちらもどうぞ。

メールをくださった○○○さん、どうもありがとうございました。
そして、本当に失礼いたしました。

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