夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『アイガー北壁』

2010年09月14日 | 映画(あ行)
『アイガー北壁』(原題:Nordwand)
監督:フィリップ・シュテルツェル
出演:ベンノ・フユルマン,ヨハンナ・ヴォカレク,フロリアン・ルーカス他

35年近く前、欠かさず聴いていたNHK「みんなのうた」に、
ハイ・ファイ・セットが歌う『いつかある日』という曲がありました。
「いつかある日 山で死んだら」という歌詞で始まるこの曲は、
「死んだら」なのに長調で、暗くなくて、力強くて、
山に登る人ってこんな覚悟ができているんだと、
小学生だった私の心に強く残りました。

その曲が頭に浮かんだ本作は、今年春に公開されたレンタル新作。
ドイツ/オーストリア/スイスの作品です。
猛暑の休日に、吹雪く冬山に圧倒されて。

1936年、ベルリン・オリンピックを目前に控えた夏。
ナチス政府は、国家が優位であることを示す手段として、
ドイツ人によるアイガー北壁初登頂を目標に掲げている。
成功者には、オリンピックと同じく金メダルを授与することを約束。

さて、金メダルには興味がないが、山をこよなく愛し、
これまでも数々の壁を制覇してきた若き2人の登山家、トニーとアンディ。
慎重なトニーはアイガー北壁への挑戦を躊躇するが、
楽天家のアンディに結局つきあうことに。
経費を削るために何百キロという距離を自転車でスイスへと向かう。
そこには、オーストリアの登山家2人も訪れていた。

トニーとアンディの幼なじみで、
都会の新聞社に勤務する新米記者ルイーゼは、上司と共に現地へ。
初登頂に成功するのはドイツ人かオーストリア人か。
マスコミや観光客が麓で見守るなか、4人はアイガー北壁に挑む。

実話に基づいています。
ネタバレになりますが、初登頂に成功する話ではありません。
先に行かれてなるものかと、同じルートを採択して追い抜こうとするオーストリア人。
安全な間隔を空けていなかったせいで、
ドイツ人の足下から落ちた石に当たって1人が大けがをします。
結果、最後まで彼を見捨てられなかった一行全員が命を落とすことに。

他の登山映画でもありましたが、
ザイルを切る瞬間というのは、胸に迫るものがあります。
死ぬ覚悟はできている。でも、死にたくないと叫ぶ自分もいる。

『いつかある日』は、古い山の友にこう伝えてくれと言います。
母親には、安らかだったと。父親には、男らしく死んだと。
愛しい人には、俺が帰らなくても生きて行けと。
この映画に恋愛話は蛇足の感はありますが、
残ったルイーゼはこう言われた気持ちだったかな。

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『BECK』

2010年09月09日 | 映画(は行)
『BECK』
監督:堤幸彦
出演:水嶋ヒロ,佐藤健,桐谷健太,中村蒼,向井理,
   忽那汐里,カンニング竹山,倉内沙莉,松下由樹他

先週末に公開。
現在売れまくりの向井くん目当てのおばちゃんが
平日の映画館に押し寄せている模様。
終映後には「向井くんにばっかり目が行ってしもた」という声も。
かく言う私も深夜ドラマの『傍聴マニア』を観て以来、
向井くん、大好きです。(^O^)

原作は、ハロルド作石の全34巻なるコミック。
そのうちの10巻までを基にしたものが本作。

高校生のコユキこと田中幸雄は、
不良軍団のパシリ役に使われ、いじめられることもしばしば。
それを除けば平々凡々な毎日を送っていたが、
街で1匹の犬がいじめられているのを助けたのが縁で、
その犬の飼い主であるNY帰りの天才ギタリスト、竜介と知り合う。

ライブ会場で竜介の演奏を聴いたコユキは度肝を抜かれ、
竜介にギターを教えてほしいと頼む。
すると竜介は微笑んで、自分の古いギターをくれてやると言う。

同じバンドのギタリスト、栄二と仲違いした竜介は、
最高のバンドを結成するために、新しいメンバーを探し始める。
ベースの平をスカウトし、悪友でラッパーの千葉をボーカルに誘うと、
バンド名を飼い犬にちなんで“BECK”とする。

ギターの練習に打ち込むコユキに親しげに声をかけてきたのは、
転校生のサクこと桜井裕志。
“BECK”の集うスタジオを訪れ、コユキがギターを弾いてみせると、
わずかな期間での上達ぶりに、みんな舌を巻く。
竜介はコユキの可能性に賭けてみることに。
また、サクが確かな腕のドラマーであることも判明し、
こうして5人となった“BECK”が始動する。

メンバーたちには素晴らしい才能があるけれどコネはない。
そこへコネのあるビジュアル系が現れて、“BECK”を潰しにかかります。
昔、やんちゃをしていた頃のツケもまわり、ひたすらヤバイ状況へ。
高校生の甘酸っぱい恋も描かれて、
やがて期待どおりのクライマックスへ。
なんとなく想像はできるストーリーだけれども、
だからこそ安心の145分。

観た人のほぼ全員が訝るであろう某部分については、
肩すかしを喰らった気はしますが、それでもライブシーンは圧巻。
映画館で観た甲斐がありました。

ジョン・サイクスを敬愛する私としては、
悪役の名前がレオン・サイクスであったことが気がかりだったりして。

向井くんのハダカのおまけ付き。但し、上半身のみ。(^^;

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『ソラニン』

2010年09月06日 | 映画(さ行)
『ソラニン』
監督:三木孝浩
出演:宮崎あおい,高良健吾,桐谷健太,近藤洋一,伊藤歩他

浅野いにおの同名漫画の映画化。
何を観に行ったときだか忘れてしまったのですが、
上映前の劇場ロビーで、『告白』の文庫本に読みふけっていたら、
本作の予告編がエンドレスで流れ始めて、
ほとんど鬱陶しいぐらいの気持ちになったのを覚えています。(--;
先週末からレンタル開始。

都内の会社に勤務するOL2年目の芽衣子。
大学時代、軽音サークルで知り合った種田とつきあって6年。
ふたりは多摩川沿いのアパートで同棲中。
なかばヒモのような生活を送っている種田。

同じくサークル仲間だったビリーと加藤。
ビリーは実家の薬局を継ぎ、加藤は留年を繰り返して今も学生の身。
種田、ビリー、加藤の3人は、メジャーデビューを夢みながら、
“ロッチ”という名前でバンド活動を続けている。

仕事に嫌気が差して悶々としていた芽衣子は、
種田のある言葉に救われて、思いきって辞表を提出。
ところが、芽衣子が本当に辞めると予測していなかった種田はうろたえる。

今度は種田のほうが悶々とし、音楽から逃避するようにバイトに励む。
それを芽衣子から指摘された種田は、バイトを辞めてレコーディングに集中。
デモCDを完成させると、いくつかのレコード会社に送付。
もし、これでチャンスが巡ってこなければ、音楽をあきらめることを決意する。
しかし、あまりに承諾しがたい話が持ちかけられた以外は無反応。

アパートを出たまましばらく戻らなかった種田からようやく連絡があり、
帰りをまちわびる芽衣子と仲間たち。
ところが、種田はバイク事故に遭って帰らぬ人となる。

ちょっとオシャレな構成にこだわったのか、
間に挟まれる、時間をさかのぼった長めのシークエンスが、
前後をわかりづらくして、あまり親切ではありません。

宮崎あおいはめちゃめちゃかわいくて、
彼女のファンなら気に入ることはまちがいなし。
彼女のための長編PVと言っても過言ではないような。

ただ、それでも、いいシーンはたくさんあります。
学生時代に音楽をやっていた人なら、懐かしさでいっぱいになるでしょう。
ビリーと加藤を演じる桐谷健太とサンボマスターのベーシスト、近藤洋一が
とてもいい味を出しています。

薬局前のカエルをポストだと思って手紙を投函しにくるおじいちゃんと、
種田の父親役で登場するチューリップの財津和夫には泣かされます。

ゼロとゼロで無限大。

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『エスター』の夫婦、夫のほう。

2010年09月03日 | 映画(番外編:映画とこの人)
さて、『エスター』(2009)の夫婦の夫役、
ピーター・サースガードが出演しているのは『17歳の肖像』(2009)。
英国の女性ジャーナリスト、リン・バーバーの自叙伝の映画化です。

舞台は1961年のロンドン郊外。
16歳の美少女ジェニーは、ラテン語以外は成績優秀。
特に小論文は、こんな生徒がいることを教師が幸せに思うくらい、
素晴らしい才能を見せています。

両親は、ジェニーがオックスフォード大学に入ることを切望し、
父親に至っては、入学に有利なことのみしていればよいという考え。
趣味のチェロも、楽団に在籍することは協調性を表すからと始めさせられたようなもの。

ジェニーは、優等生の自分が嫌いではありませんが、
何の変化もない毎日が退屈でたまりません。
本当はパリに死ぬほど憧れ、想いを馳せています。

ある日、チェロを抱えてバス停にいると、急に降り出す雨。
近づいてきた車の運転席から顔を出したのは、30代とおぼしき男性。
「怪しい奴だと思うかもしれないが、僕は君のチェロが心配だ」。
デイヴィッドと名乗るその男は、チェロだけ車に乗せてはどうかと言います。

それが可笑しくて、結局は車で家まで送ってもらうことにしたジェニー。
美術に詳しく、知的で、会話術に長けているデイヴィッドに、
同級生にはない大人の魅力を感じ、ジェニーはたちまちイカレてしまいます。

紳士的な物腰で、ジェニーの両親の信頼をも得たデイヴィッドは、
ジェニーを音楽会やナイトクラブへと連れ出し、
これまでの人生にはなかったきらびやかな体験が次々と。
次第にジェニーは勉学に身が入らなくなるのですが……。

ピーター・サースガードに対する私の印象は、よく脱ぐ人。(^^;
『エスター』のときも脱いでいましたし、
『愛についてのキンゼイ・レポート』(2004)では
内容が内容ですから当たり前とも言えますが脱ぎまくり。
今回は、17歳の誕生日になったら……と決めているイタイケなジェニーを
優しいふりして「いてこます」みたいな感じで。

ちょっとトロ~ンとした目が色気を感じさせるのと同時に、
怪しい雰囲気を醸し出すのかもしれません。
実はこんな人でしたという展開や、本当は頼りない人なんですということが多くて、
あらら~と気の毒になってしまうこともしばしば。
でも、需要は衰えない役者さんだと思います。

「あの頃に戻っても、私は私を止めたりしない」。
このキャッチコピー、好きです。

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