夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『最高の人生をあなたと』

2012年03月19日 | 映画(さ行)
『最高の人生をあなたと』(原題:Late Bloomers)
監督:ジュリー・ガヴラス
出演:イザベラ・ロッセリーニ,ウィリアム・ハート,ドリーン・マントル,
   ケイト・アシュフィールド,エイダン・マクアードル,アルタ・ドブロシ他

シネ・リーブル梅田にて。

フランス/ベルギー/イギリス作品で、
英語のタイトルは“Late Bloomers”で「遅咲き」の意。
配給はアルバトロス・フィルムです。

ロンドンで結婚生活30年のアダムとメアリー夫妻。
アダムは著名な建築家で、このたび栄えある賞を受賞。
式典でのスピーチを聴くため、一族は着飾って会場に集うが、
メアリーだけはなんだか晴れない表情。

イタリア人の父親とイギリス人の母親を持つメアリー。
渡英して、仕事に忙しいアダムに愚痴をこぼすでもなく、
2人の息子と1人の娘を育て上げた。
子どもたちはすでに独立、孫に恵まれて、母親ノラも健在。
還暦を前に教師の職を退き、悠々自適の老後を送るはずだった。

ところが、最近気になる「記憶の抜け落ち」。
自らアルツハイマーを疑い、病院で検査を受けるが異常なし。
体を動かそうとスイミングスクールに行くと、
周囲は若くてピチピチの女性ばかりで気が滅入る。
自分の年齢としっかり向き合おうと考えたメアリーは……。

自分が認識している年齢は実年齢より8歳若いというデータがおもしろい。
メアリーは実年齢を実年齢として認めようと、
老人対応の電話機を買ってみたり、お風呂場に手すりをつけてみたりします。
けれども、あなたも認めなさいと強要されるアダムはたまったものではありません。
自分はまだまだ現役。若いヤツにだって必要とされているんだからと。

不安をひとりで抱えこみたくない、あなたと一緒にと思うのはわかるけれど、
メアリーのあれやこれやがかなり押しつけがましくて、
そこまでやられたら嫌だろうなぁと思ったりして。

迫力のある体型(失礼(^^;)になっているイザベラ・ロッセリーニが
胸元をはだけて誰か声をかけてくれないかしらと念じるシーンや、
そのおかげで射止めたインストラクターを誘うシーンはちとイタイ。
それはウィリアム・ハートが事務所の若い女性に誘われるシーンも同じ。

鑑賞する側の年齢にもよるのでしょうけれど、私は入り込めず。
見たくないものを見せられてしまった感もあります。
でも、両親を見守る子どもたちが良いし、毒舌のノラはサイコー。

長男が父親を優しく抱きしめるシーンがよかったなぁと思ったら、
『ぜんぶ、フィデルのせい』(2006)と同監督でした。道理で。

ついでに。
夜を徹しての仕事中、若い社員から差し入れられた缶にとまどうアダム。
「俺は要らないよ」と断ったものの、「まぁまぁ、そう言わずに」と言われて1本。
これでやみつきになったのか、後日、アダムがパックで買ってきたのはレッドブルでした。

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『ライアーゲーム 再生(REBORN)』

2012年03月16日 | 映画(ら行)
『ライアーゲーム 再生(REBORN)』
監督:松山博昭
出演:松田翔太,多部未華子,高橋ジョージ,濱田マリ,要潤,春海四方,
   新井浩文,野波麻帆,池田鉄洋,小池栄子,船越英一郎他

映画をハシゴするとき、まず何を観たいかを考えるのは当然ですが、
ノーマークの作品だった場合でも、
時間の効率さえよければそれに決めることがあります。

ここ数回、ハシゴの機会があるたびに目に留まる効率ベストな作品が『ドラえもん』。
これが『クレヨンしんちゃん』なら観に行くのですが、ドラえもんは……。(^^;
てなわけで、前述の『おとなのけんか』とハシゴしたのが、効率2番目だった本作。

ご存じ、甲斐谷忍の人気コミック実写化したTVドラマの劇場版、第2弾。
TV版も劇場版も大ヒットだったようですが、私はまったく観たことがありません。
このまま観に行くことが気がかりだったため、ネットで少しだけ調べてから行きました。
ほとんど何も知らない状態で観てこれを書いています。
率直な感想は「スルーしていてごめんなさい。めちゃオモロイや~ん」。

篠宮優は成績優秀な女子大生。
卒業式で答辞を述べるという大役を終えて帰寮すると、ライアーゲームの招待状が。
何気なく招待状を開封したところ、この開封時点で参加の意思ありとみなされ、
開封後に不参加を主張しても認められず、莫大な借金を背負わされると判明する。

どうやら逃げられないと悟った優は、
大学で教鞭を執る天才心理学者、秋山深一に助けを求める。
つれない素振りを見せる秋山だったが、やがて秋山のもとへも招待状が届く。
これは、前回、秋山の勝利により屈辱を味わったライアーゲーム事務局が、
秋山への復讐のために計画したことだった。

ライアーゲームの会場に集った参加者20人。
そこには事務局の思惑どおり、優を見捨てられない秋山の姿も。
こうして今回のライアーゲーム、“イス取りゲーム”が始まる。

いや~、やっぱり世間で人気なものには理由がある。
観てみないといけませんね。

廃墟のどこにあるかわからない、それぞれ番号の付いたイス15脚でスタート。
参加者たちは30分間でイスを見つけて座らなければなりません。
タイムアップ時に座っていない者が脱落者ですが、
その後、ゲームの親を決める投票がおこなわれ、脱落者にも投票権はあります。
最多票を獲得した親は、消去したいイスの番号をコールできます。
こうしてイスが徐々に減ってゆくわけです。

同じイスに連続して座ってはならないなんていうルールもあり、
自分専用のイスを隠し持って座りつづけることはできません。
暴力行為は禁止というのもいいところ。
自分が確保したイスの番号を他者に知られれば消去される可能性も出てきます。

ただのイス取りゲームかと思いきやそうではない、これはつまり国盗りゲームだと、
何人かずつのチームを組んでゲームが繰り広げられます。
それぞれのチームリーダーは、松田翔太、新井浩文、船越英一郎といずれも強烈な個性。
国の治め方も三者三様で、船越英一郎はまるで独裁者。
『セイジ 陸の魚』にも主演していた新井浩文がここでもいい味。

20人もいると、誰かに肩入れしたくなるものでしょうけれど、
人となりについてはさらりと流して描かれているため、
優役の多部ちゃんにすら同情できないシーンがあり、
あまり思い入れが強くなりすぎずに楽しめるのも娯楽作として○。

エンドロールの後もお見逃しなく。

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『おとなのけんか』

2012年03月13日 | 映画(あ行)
『おとなのけんか』(原題:Carnage)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ジョディ・フォスター,ケイト・ウィンスレット,クリストフ・ヴァルツ,ジョン・C・ライリー

大阪ステーションシティシネマにて。
上映時間が長い作品が増えるなか、本作はなんと79分の潔さ。

フランス/ドイツ/ポーランド作品です。
第63回トニー賞の演劇作品賞を受賞した舞台劇を、巨匠が映画化。
原題は“Carnage”で、「修羅場」の意。
ちなみに舞台の原題は“God of Carnage”で、『大人は、かく戦えり』と訳されています。
なんだかウディ・アレンっぽいタイトルだし、内容もそれっぽい。
『ゴーストライター』(2010)の次にこんな作品を撮っちゃうなんて、
どれだけ引き出しが広いんでしょ、ロマン・ポランスキー監督。

ニューヨーク、ブルックリン。11歳の男の子同士が喧嘩。
片方がもう片方から木の枝で顔をはたかれて前歯を折る怪我をする。
「加害者」の両親であるアランとナンシー、カウアン夫妻は、
「被害者」の両親であるマイケルとペネロペ、ロングストリート夫妻のもとへ。
詫びるカウアン夫妻をロングストリート夫妻がもてなし、
友好的に和解の話し合いが進むかに思われたが、いつしか本音が飛び出し……。

これだけの話です。
タイトル・シークエンス(冒頭のタイトルと出演者名が流れるヤツ)の背景に、
公園で子どもたちが喧嘩するシーンが遠巻きに映し出され、
それが終わればいきなりロングストリート夫妻宅へと移ります。
撮影場所は99%と言ってもいいほどアパートの一室、
残り1%がアパートのエレベーターホールと公園なので、
製作費は前々述の『昼間から呑む』より安く済みそう。
しかし、役者の顔ぶれを見れば、ギャラは相当払わなきゃならんでしょう。
そして、2組の夫婦4人とも、ギャラが高いのは仕方なしと思える快演です。

いずれもモンスターペアレントなどという印象はありません。
子どもたちの喧嘩のいきさつを冷静に紙にまとめ、
怪我をさせたことを詫びて詫びられて、一件落着。
と行きたいところですが、体面だけを保ったやりとりは続かない。

親がいくら謝ろうとも、子ども自身が反省しなければ意味がないと片方は考えるし、
うちの子だけが悪いのか、はたくには何か理由があったのではともう片方は考えます。
しかも、とりあえずは懸命に詫びるナンシーの隣で、アランがしょっちゅう携帯をいじるから、
ペネロペは誠意がないとイライラ、ナンシーもアランの態度に辟易。
ひとり能天気にかまえるマイケルがウイスキーを持ち出して、
全員が飲みはじめたものだから、場はしっちゃかめっちゃかに。
最初は夫婦対夫婦だったはずが、女性対男性になったり、1人対3人になったり。
「良識あるのは私だけ」というペネロペの叫び声がむなしく響きます。

そんなおとなたちをよそにした、エンロドールの背景が秀逸。

本作で思い出したのは『サイドウォーク・オブ・ニューヨーク』(2001)でした。
そうよ、女はこうなっちゃうんです。

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『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

2012年03月11日 | 映画(ま行)
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(原題:Extremely Loud & Incredibly Close)
監督:スティーヴン・ダルドリー
出演:トム・ハンクス,サンドラ・ブロック,トーマス・ホーン,マックス・フォン・シドー,
   ヴァイオラ・デイヴィス,ジョン・グッドマン,ジェフリー・ライト,ゾー・コードウェル他

相当な話題作なので、もうあらすじは要らんでしょうけれど。

9.11アメリカ同時多発テロで父親トーマスを失った少年オスカー。
母親リンダとともにその悲しみから立ち直れずにいたある日、
トーマスのクローゼットの上隅にあった花瓶を落としてしまう。
すると、割れた花瓶の中から1本の鍵が。

トーマスとしょっちゅう調査探検ゲームを繰り広げていたオスカーは、
ここに父親からの最後のメッセージが込められているにちがいないと考える。
この鍵に合う鍵穴を見つければ、父親の伝えたかった何かがあるはず。

鍵が入れられていた袋には“ブラック”の文字。
これはきっと誰かの姓で、その人こそ、この鍵について知っていると確信。
オスカーは電話帳と地図を広げ、ニューヨーク中の「ブラックさん」を尋ね歩く。

一方、オスカーのことが気がかりでならない、向かいに住む祖母。
オスカーからの夜中の連絡にもきちんと応えてくれるが、
最近、祖母のアパートに間借りしはじめた老人とは話すなと言う。

祖母の留守中、オスカーは間借り人とひそかに対面。
初対面の口の利けない間借り人に、誰にも言えなかった思いをまくし立てるオスカー。
間借り人は意外にも調査に同行することを申し出て……。

間借り人を演じるのはマックス・フォン・シドー。
『ニードフル・シングス』(1993)では問題の店主、
『10億分の1の男』(2001)ではボスのサムを演じていたのが彼でした。
9.11テロ事件を取り上げた本作に彼が出演しているのを見ると、
なんともいえない特別な気持ちが呼び起こされるのは、リンク先のとおり。
同じ陰のある役でも、以前はとてつもなく不気味に思えました。
それが本作では嬉しくなるおじいちゃんぶり。

ここから、もろネタバレ。
残念ながら鍵はオスカーの思っていたようなものではなく、
私はなぜか『市民ケーン』(1949)の“バラのつぼみ”の正体を思い出しました。
何か意味があると信じていたけれど、実際はそんなもんだよという。(^^;
それはさておき、大事なのはこの鍵に合う鍵穴を見つけることではなく、
探す過程なんだなぁとしみじみ。

サンドラ・ブロックはやはりいつまでもラブコメの女王でいてほしいですが、
この母親役には『しあわせの隠れ場所』(2009)同様、泣かされましたねぇ。
あまりの話題作で期待が大きすぎたのが難点。静かに感動。

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『昼間から呑む』

2012年03月08日 | 映画(は行)
『昼間から呑む』(英題:Daytime Drinking)
監督:ノ・ヨンソク
出演:ソン・サムドン,キム・ガンヒ,タク・ソンジュン,イ・ラニ,
   シン・ウンソプ,ユク・サンヨプ,イ・スンヨン,キム・ガオン他

2009年の韓国作品、レンタル最新作。

いいでしょ、このタイトル。
キャッチコピーも私好み、「女に溺れ、酒に溺れる、煩悩だらけの男一人珍道中」。
ちなみに、英語タイトルもそのまんま、“Daytime Drinking”。
1000万ウォン(日本円で約100万円)で撮られたという、超低予算のロードムービーです。

運命の相手だと信じていた女と別れて凹む20代の男ヒョクチン。
友人3人は彼を囲んで飲みながら、元気を出せと慰める。
景気づけに旅行にでも行こうじゃないかという話になり、
いつも計画倒れに終わるからと、すぐに決行することに。
明朝、市が立つはずの江原道のチョンソンで落ち合う約束をする。

ところが、ヒョクチンが待ち合わせ場所に行くと誰もいない。
友人のギサンに電話すると、まだ家にいると言う。
どうやら3人とも酔いつぶれて爆睡してしまったらしい。

ソウルへ戻ろうとするヒョクチンに、
ギサンは数日後に合流するからと、とりあえず一人旅を勧める。
チョンソンにはギサンの先輩が経営するペンションがあり、
そこは本当に良いところで、先輩も旨い肉でもてなしてくれるぜと。

ペンションまでは普通はバスを利用する距離だが、
歩きたい気分だったヒョクチンは、徒歩で向かう。
あまりに遠すぎて、徒歩を後悔しはじめたころ、目の前にペンションが。
しかし、ぶっきらぼうな主人からは鍵を渡されただけで……。

低予算だけあって映像は荒いですが、愛すべき作品です。

ヒョクチンを次々と襲う不幸は可笑しくてたまりません。
ペンションの隣室に一人で滞在中の美女と一緒に飲むべく誘いに行けば、
いつからいたのかガラの悪そうな男が出てくる。
ちょっといい雰囲気になったと思えば眠らされて下着姿で放り出され、
拾ってくれたトラックの運転手には後ろから抱きつかれる。
バスで隣り合ったお世辞にも美人と言えない女には
まるで趣味に合わない音楽を聴かされ、俳句まで詠まれる。
これには『タナカヒロシのすべて』(2004)を思い出したりして。

最初は嬉しかった昼間から飲む酒も、
飲む相手が替わるたびに断れずに飲みつづけると辛くなってきます。
風邪気味でも「風邪に効くから」と言われて酒を飲む姿に漂う悲壮感。
飲めば飲むほどドツボにハマるヒョクチン。

それでも昼酒は楽しそう。
市などどこにも立っていない寂れた町の食堂で、じゃがいも蕎麦と焼酎。
バス停で寒さに震えながら飲むウイスキー。
冬の海辺にはカップ麺と焼酎が似合う。
その近くの露店ではホタテやヒラメの刺身にこれまた焼酎。
ようやく会えたギサンとは、豚カルビと焼鱒、薬草酒。

笑える勘違いのオチをつけて、ほっこり幸せ気分。
これでヒョクチンの失恋気分もぶっ飛んで。
昼酒が飲みたくなること必至。

『春の日は過ぎゆく』(2001)のロケ地だったバスターミナルが登場します。
バス停のヒョクチンを見て、『春の日は~』に出てくる名言を思い出しました。
「去ったバスと女は追ったらいかん」。

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