夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スタンリーのお弁当箱』

2013年07月21日 | 映画(さ行)
『スタンリーのお弁当箱』(原題:Stanley Ka Dabba)
監督:アモール・グプテ
出演:パルソー,ディヴィヤ・ダッタ,ラジェンドラナート・ズーチー,
   ディヴィヤ・ジャグダレ,ラフール・シン,アモール・グプテ他

梅田ガーデンシネマにて3本ハシゴの2本目。
『きっと、うまくいく』がものすごくよかったので、こちらのインド映画も拝見。

小学生のスタンリーはお話が上手、4-Fクラス(男子のみ)の人気者。
しかし、家庭の事情からお弁当を持参することができない。
何人もの同級生がスタンリーにお弁当を分けてくれるが、
国語教師のヴァルマー先生(♂)はそれを卑しいとさげすみ怒る。
自分こそ、生徒のお弁当を奪って回っているというのに。

友だちみんなの気遣いは嬉しいが、ヴァルマー先生の目も気になる。
スタンリーは自宅に帰って昼食を食べると嘘をつき、
昼休みは外で時間をつぶしては、水だけで空腹を満たすように。

スタンリーの様子がおかしいと感じた同級生のアビシェークは、
ある日そっとスタンリーのあとをつける。
昼食を抜いていることを知り、アマンをはじめとする他の同級生らに相談。
ヴァルマー先生にさえ見つからなければ大丈夫だと、
昼休みになると教室から抜け出し、日替わりの場所でお弁当を食べることに。

しかし、食い意地の張ったヴァルマー先生は、血まなこになって彼らを探す。
やっと見つけたと思ったら、そこにはスタンリーの姿もあるではないか。
「弁当を持って来られない生徒は学校に来る資格などない」と言い放つ。

翌日からスタンリーは学校に来なくなる。
学校では、地域で大々的におこなわれるコンサートへの出演者を選定中。
お話も歌も踊りもスタンリーがいちばん上手いに決まっている。
アビシェークらはコンサート出演者の練習場所をスタンリーにこっそり知らせ、
必ず行くようにと声をかけるのだが……。

のほほんとした作品だろうと思っていたら、
スタンリーが弁当を持って来られない理由が想像以上にヘヴィー。
エンドロール前にインドのこうした事情がテロップで流れ、
穏やかな気分だけで観ていてはいけない作品であることを思い知らされます。

ヴァルマー先生が信じがたいほど嫌なヤツだと思っていたら、
本作の監督・製作・脚本をすべてこなした本人でした。
オイシイ役ではなく、こんな役に自分を据えたのはポイント高し。

子どもたちが素晴らしい。
お弁当を持って来られない同級生には分けることが当然と思っているのか、
誰も出し惜しみなんてしないし、上から目線でもない。
「一緒に食べよう」、そう当たり前のように言うのですね。

観終ってからもこのままでいいのだろうかと考えます。
「いいんだ、楽しかったから」、そういうスタンリーの声が聞こえてきそうで、
そのときの彼の顔を思い出すと、救われたような気持ちにもなり、
いやいや、断じてこんなままではあかんやろとも思うのでした。
私たちに何ができますか。どうすればいいんでしょう。

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『嘆きのピエタ』

2013年07月19日 | 映画(な行)
『嘆きのピエタ』(英題:Pieta)
監督:キム・ギドク
出演:チョ・ミンス,イ・ジョンジン,ウ・ギホン,カン・ウンジン,クォン・セイン他

久々の梅田ガーデンシネマで3本ハシゴ。1本目がこれです。

キム・ギドク監督の作品は、体力のあるときにしか観られません。
たいていが凄惨でバッドエンド、やるせなさでいっぱい。
残酷な場面が直接描写されることはほぼないのに、
直前のシーンや周囲を映し出したシーン、そこに響く声だけで非情が伝わるのも凄い。

生まれてすぐに親に捨てられ、天涯孤独の身で30年を生きてきたイ・ガンド。
消費者金融の冷酷な取り立て屋として日々を送り、
法外な利息を払えなくなった債務者のもとを訪れると、
生涯残るほどの重傷を負わせてその保険金で借金を返済させる。

そんなガンドの前に、ある日、チャン・ミソンと名乗る女が現れる。
彼女はガンドの母親であると言い、見捨てたことを必死に詫びる。
最初は彼女の話を信じられず、邪険に扱っていたガンドだが、
彼の部屋に居着いて子守歌を歌い、食事をつくり、微笑む彼女を見るうち、
母親としての無償の愛を受け入れるように。

やがてガンドはミソンが突然消えてしまうのではないかと不安に思いはじめる。
すると本当にミソンがいなくなり、ガンドに救いを求める電話が。
債務者のうちの誰かに拉致されたと疑い、ガンドはミソンを探すのだが……。

見せないことで、より悲惨に見せるのが上手い。勘弁してと言いたくなるほど。
指やら手やらを切断されるところは映らないのに目を覆いたくなるし、
母親の証しに食べてみろとガンドが差し出したものも映らないのに、
その前後のシーンと滴る血で、観る者は想像してしまいます。

ここからネタバレ。

これはミソンの復讐劇で、彼女はガンドのせいで息子を失った人物でした。
母親の愛を知らないガンドに、ありったけの母親の愛を知らしめたあと、
彼女はガンドからそれを奪い去るのです。

母親の愛を失ったガンドは打ちひしがれ、
最期はガンドのことを車で引きずって殺してやりたいと語っていた元債務者のもとへ。
夜明け前、自ら車の下に繋がれたガンドと、それを知らずに車を出発させる元債務者の妻。
このシーンもそのまま見せることはなく、
ただ車が血の筋をつけながら走ってゆくところを遠方から見せています。

ガンドのことを悪魔と呼ぶ債務者たち。
「借りた金を使い込んでおいてよく言うよ」と嘲笑うガンド。
殺されてもいい覚悟でガンドのもとにやってきたように見えたミソン。
ミソンが編んでいたセーターが実は自分のものではなかったと知るが、
寸足らずのそのセーターを着てミソンの遺体に添い寝するガンド。

一部、演技が大げさすぎると感じられたり、
このシチュエーションで起きひんわけないやろ~と思う場面があったりで、
これまでのギドク作品と比べて冷めて観てしまうところもありましたが、
それでもいろんなことを考えさせられ、心が折れます。(T_T)

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『コン・ティキ』

2013年07月17日 | 映画(か行)
『コン・ティキ』(原題:Kon-Tiki)
監督:ヨアヒム・ローニング
出演:ポール・スヴェーレ・ヴァルハイム・ハーゲン,アンドレス・バースモ・クリスティアンセン,ヤーコプ・オフテブロ,
   トビアス・ザンテルマン,オッド=マグヌス・ウィリアムソン,グスタフ・スカルスガルド他

『ザ・ディープ』が第85回アカデミー賞外国語映画賞のアイスランド代表なら、
こちらはノルウェー代表で、ノミネートも果たした作品です。

先週、たまたま時間が合ったというだけで前知識なくTOHOシネマズ伊丹へ。
そうしたら、こんな実話があったのかとシビレてしまいました。
TOHOシネマズでは先週いっぱいで上映終了、梅田ブルク7では明日まで。

1914年、ノルウェーに生まれたトール・ヘイエルダール。
幼い頃から好奇心旺盛で怖いもの知らず。
オスロ大学で動物学と地理学を専攻した後、ポリネシアのファツヒバ島へ。
現地人の生活を1年間送るうち、ある仮説を打ち立てる。

当時、ポリネシア人の祖先はアジアから来たというのが通説。
海流などあらゆる面から考えて、それは至極自然なこと。
ところが、ファツヒバ島の植物を見たトールは、
ポリネシア人の祖先は南米から来たにちがいないと考える。

研究に研究を重ねて10年、トールは論文を書き上げてあちこちへ持ち込むが、
常識をくつがえす学説は嫌われ、学者もマスコミも取り合ってくれない。

ならばペルーからポリネシアへ自力で渡って証明しようじゃないか。
そう決意したトールは、1500年前の材料と技術を用いて筏をつくることに。
そのための仲間を酒場で口説くも、必ず失敗すると一笑に付される。
たまたま酒場に居合わせたのが冷蔵庫販売の営業担当者ヘルマン。
トールが描いた筏の絵に興味を示し、自分も話に乗りたいと言う。

ペルー入りしたトールは、少年時代に氷海に落ちたトールを救出したエリックや、
戦争で心を傷めたままのクヌート、無線技士のトルステインらと合流。
現地の新聞でトールのことを知ったスウェーデン人民族誌学者のベングトも飛び入り、
カメラの技術が確かな彼は、記録映画の撮影は自分にまかせろと言う。

資金調達の目処が立たずに困ると、トールは大胆にもペルー大統領に面会。
ペルーこそがポリネシアの祖先という話を大統領は大いに気に入り、
航海に必要な物品を軍で調達してくれることになる。

こうして8000kmにおよぶ航海に繰り出した5人。
しかし、大嵐、サメの襲撃など、幾多の困難が彼らを待ち受け……。

非常に見応えがありました。
順調に進まなければ、次第に心が荒み、恐怖の心も生まれます。
特にこれまで命を張った経験のないヘルマンは、丸太が腐るのではないか、ロープが切れるのではないか、
そんな不安に駆られ、いつ気が変になっても不思議ではない状態。
そのせいで全員が危機にさらされますが、命を落とす直前だったところをクヌートに救われます。
これによってふっきれ、人間関係も好転してゆきます。

目の前に広がるのはただただ海。
サメに襲われるシーンなどは下手なホラーよりも恐ろしいぐらいですが、
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で見たような美しい光景や、
鳥が飛ぶ姿に大喜びする彼らの姿にこちらも勇気づけられます。

昔の人は、海を障壁ではなく、道だと考えていた。
人につながる道。

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『ザ・ディープ』

2013年07月15日 | 映画(さ行)
『ザ・ディープ』(原題:Djúpið)
監督:バルタザール・コルマウクル
出演:オラフル・ダッリ・オラフソン,ヨハン・G・ヨハンソン,
   スロストゥル・レオ・グンナルソン,テオドール・ユーリウソン他

アイスランドの映画と聞いてすぐに思い出すのは
『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』(2009)ぐらいですが、
本作の監督はアイスランド出身、もともとは役者ながら、
このところハリウッドでも活躍めざましい注目株。
『ハード・ラッシュ』も彼の監督作です。

アカデミー賞の外国語映画賞は毎年各国から1作品のみ出品可能。
本作は第85回アカデミー賞にアイスランド代表として出品されたものの、
残念ながらノミネートには至らず。
今年のGW中にヒューマントラストシネマ渋谷の限定レイトショーにて上映。
6月下旬からTSUTAYAで独占レンタル中です。

1984年3月に実際に起きた海難事故に基づいています。
転覆した船からたった1人生還した男が注目を浴びて……とあるので、
英雄扱いされたり、ひとり生き残ったことを非難されたり、
そんな作品かと思っていたら、ひと味もふた味もちがいました。

アイスランド、ウエストマン諸島の過去に火山が噴火した町。
地元の漁師グッリは、仲間の5人とともに船に乗り込み、漁に出る。
この日は網が岩に絡みついたりして、出足から少し嫌な感じ。
それでも新入りのコックにさまざまなアドバイスを送りながら、
みんなでワイワイ、いつもと変わらぬ漁。

ところが、夜のとばりがおりるころ、ウィンチが故障、船が転覆する。
極寒の海に投げ出されたグッリたち。このまま助けを待つには水温が低すぎる。
はるか遠くに見える陸を目指して泳ぎはじめるが、
グッリ以外の仲間は次々と力ついえて死んでしまう。

グッリは冷たい水の中を6時間も泳ぎつづけ、
雪の積もる陸地にたどり着くと、そこからさらに2時間、裸足で歩く。
ようやく灯りのともる人家を見つけて扉を叩くとそのまま気を失う。
病院に搬送され、意識を取り戻したグッリは世間の注目の的となるのだが……。

これがハリウッド作品なら、ちがう味付けがされていたと思いますが、
この先の展開にはちょっと意表を突かれました。

グッリへのインタビューを目にした科学者が、
彼が生還したことには科学的な理由があるにちがいないと考えます。
そこで、グッリの身体を徹底的に調べたいと希望。
グッリの母親が「奇跡を研究するの?」と尋ねるのがおもしろい。

ネタバレになりますが、調査した結果、グッリの体細胞はまるでアザラシ。
肥満体で運動能力が高いわけでもなく、水泳も好きではない。
そんな彼とマッチョな海兵隊員数名がほぼ裸で氷水の中に入って実験。
海兵隊員たちは寒さに耐えきれず、すぐに水から飛び出します。
耐えようとした海兵隊員は自力では出られなくなり、引き上げられたりも。
普通の人間は5度以下の冷水の中では20分が限界だそうで。

しかし、アザラシ並みの体細胞を持っていたとしても、
普通の人間はそんな状況下では正常な思考回路は保てないとのこと。
グッリがすべての場面で的確な判断をくだしていたのは、
やはり奇跡というしかないそうな。

カモメに話しかけながら、カモメを追って生き延びた彼。
派手な展開はまったくなし、ドキュメンタリーかと思うような真摯な作品です。

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『ワイルド・スピード EURO MISSION』

2013年07月13日 | 映画(わ行)
『ワイルド・スピード EURO MISSION』(原題:Fast & Furious 6)
監督:ジャスティン・リン
出演:ヴィン・ディーゼル,ポール・ウォーカー,ドウェイン・ジョンソン,
   ミシェル・ロドリゲス,ジョーダナ・ブリュースター,タイリース・ギブソン他

またまたダンナが急に飲み会となった日に、109シネマズ箕面にて。
その他の選択肢としては、『劇場版 銀魂 完結編』か『忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦』。
“銀魂”はちょい興味アリですが、“孫悟空”とちがって、
いきなり観に行ってもまったく話がわからないらしく、
チビな“忍たま”よりはオトナな“ワイルド・スピード”ということで。

それにしてもこのシリーズってもう6作目なのですね。
3作目ぐらいまでは観た記憶があるのですが、
以降はどうでもよくなって、すっ飛ばしてしまっていました。
だもんで、誰がどうなったのだかも知りませんが、
この手の作品のいいところは、何もわからなくても楽しめるところかと。

前作で大金を手にしたそうで、それぞれに優雅な逃亡生活を送るドミニクたち。
ところがある日、FBI特別捜査官のホブスがドミニクの居所を探し当て、
メンバー全員の恩赦と引きかえに、捜査に協力せよと言う。

その捜査とは、元エリート軍人のショウ率いる国際犯罪組織を撲滅するというもの。
ショウは、ヨーロッパを拠点に特殊車両を駆使して犯行を重ねているらしい。
彼を捕らえるには凄腕のドライバー、つまりはドミニクらのチームが必要だと言う。

断ろうとするドミニクに、ホブスは1枚の写真を見せる。
そこにはかつての仲間でありドミニクの恋人だったレティの姿が。
死んだと思われていた彼女が生きていたのは嬉しいことだが、
どういうわけか彼女はショウの片腕となって犯罪に手を染めているようだ。

それを知っては断ることができない。
ドミニクはすぐさまブライアンら仲間を招集すると、
レティを救出すべくイギリスへと向かうのだが……。

敵も味方も人数がどんどん増えているようで、
すんごいスピードで走られると、どっちがどっちやらわかりません。(^^;
「徒党を組む」っちゅうのが苦手な私としては、
あんまり仲間意識を強調されると引き気味。
しかしまぁ、こんな派手なアクションは頭をからっぽにして観れば楽しいものです。
そ、それは絶対にムリやろ!てな芸当もやってのけて、ワラけます。

味方の面々は一般人を巻き込まないように気をつけていますが、
敵は“デスレース”ばりに人を轢きまくり、殺しすぎでは。(^o^;

そしてまだまだこのシリーズはつづくのですね。
ヴィン・ディーゼルにドウェイン・ジョンソン、そしてジェイソン・ステイサムまで来たら、
マッチョなハゲだらけになるやんかいさ~。

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