夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ヒッチコックの映画術』

2023年10月11日 | 映画(は行)
『ヒッチコックの映画術』(原題:My Name Is Alfred Hitchcock)
監督:マーク・カズンズ
ナレーション:アリステア・マッゴーワン
 
一時期、アルフレッド・ヒッチコック作品を観まくっていたことがありました。
と言っても劇場では観る機会なく、その頃は配信もなかったからレンタルDVDで。
『めまい』(1958)は幸いにも“午前十時の映画祭”で観ることができました。
それ以外は確か1本も劇場鑑賞していないと思います。嗚呼、観たい。
 
『定本 映画術 ヒッチコック トリュフォー』という本は持っています。
翻訳を担当された蓮實重彦先生はまだご健在なのかしらなどと思いながら(ご健在です)、
シネ・リーブル梅田にて。
 
本作はヒッチコック作品の魅力を分析、考察してゆくというドキュメンタリー。
冒頭、ナレーションと脚本はヒッチコック本人というアナウンスがあり、
へ~、今の技術って凄いな~、生前のヒッチコックの声を繋ぎ合わせるか何かして、
こんなこともできるんだわと真面目に感心していましたが、騙された(笑)。
アリステア・マッゴーワンという人で、日本語のウィキペディアのページはありませんが、
どうやらイギリス出身のものまねタレントのようです。
ものまねタレントは英語で“impressionist”というのだと、このたび初めて知りました。(^^;
 
ヒッチコックになりすました彼が、演出テクニックや映像トリックを解説してくれます。
登場人物が屋内に入るとき、見ているこちらもドアを開けて中に入った気持ちになる。
ドアを閉めるところは映さずに、でもドアが閉まる音はする。
これで見ているあなたも閉じ込められたんですよ、てな感じで。
 
逃げようとするのは何も閉じ込められたときばかりではありません。
たとえば『北北西に進路を取れ』(1959)でケイリー・グラントが激走するシーン。
私もこのシーンはよく覚えています。
 
影の使い方も面白いですねぇ。
実際の作品中のシーンをあれこれ出してくれるので懐かしさいっぱい。
 
おおむね楽しくは観たのですが、この手の作品にしては長尺の120分。
途中で眠気に襲われることしばしば。90分ぐらいにまとめてほしかった印象があります。
とはいえ、ヒッチコック作品はやっぱり面白い。
老後にまた片っ端からもう一度観たい気持ちになっています。

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『僕と幽霊が家族になった件』を劇場で観る。

2023年10月10日 | 映画(は行)
『僕と幽霊が家族になった件』は、2カ月ほど前にNetflixで観た台湾作品。
大好きだったので、機会があれば劇場で鑑賞したいと思っていました。
すでに近所のシネコンではあれとかこれとか前週末に公開になった話題作は鑑賞済み。
観るものもなくなってきたしと、塚口サンサン劇場まで足を伸ばしました。
 
おおっ、Neflixで観たときの自分の感想をあらためて読み返すと、
「そのうち塚口サンサン劇場で上映してくれないかなぁ」と書いていますね。
本作のみならず、『奈落のマイホーム』を観たときもそんなことを思っていました。
心のうちをちゃんとわかってくれる塚口サンサン劇場、大好きです。
 
昔は、ビデオやDVDで観られるものをわざわざ劇場で観なくてもええやんと思ったものです。
でも今は、好きな作品ほど劇場で観たくなる。
 
台湾へは行ったことがありません。
でもなんとなく親近感があって、劇場のスクリーンに大写しになる光景に郷愁すらおぼえる。
 
ミンハン役のグレッグ・ハンとマオマオ役のリン・ボーホンのふたりとも、
中華圏を代表する映画賞“金馬奨”の主演男優賞にこのたびノミネートされたそうです。
これがどの程度の賞なのか知らないのでなんとも言えませんが、嬉しいこと。
 
もう一度くらい劇場で観たいのですけれど、さすがにもうどこも上映しないでしょうか。
またボロ泣きする気満々。

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『PATHAAN/パターン』

2023年10月09日 | 映画(は行)
『PATHAAN/パターン』(原題:Pathaan)
監督:シッダールト・アーナンド
出演:シャー・ルク・カーン,ディーピカー・パードゥコーン,ジョン・アブラハム,
   ディンプル・カパディア,サルマーン・カーン,アシュトシュ・ラーナー他
 
なんばパークスシネマにて、前述の『ルー、パリで生まれた猫』とハシゴ。
 
最近のボリウッドといえば、私の頭の中には『RRR』しかないわけですが、
シャー・ルク・カーンは世界的に人気のあるヒンディー映画界のスーパースターらしい。
個人的には彼やヤシュよりもラーム・チャランのほうが断然タイプだなぁ。
監督は『バンバン!』(2014)や『WAR ウォー!!』(2019)のシッダールト・アーナンド。
 
インド政府は憲法第370条(ジャンムー・カシミール州に特別な地位を与えるという法律)を取り消す。
パキスタン軍の将軍カディルはそのニュースを聞いて激怒。
癌に罹って余命わずかとの告知を受けたこともあり、命ある間にインドに復讐しようと決意。
ジムという人物が率いる民間テロ組織“X”と契約を結ぶ。
 
RAW(インドの諜報機関)のエージェント・パターンは、任務のせいで瀕死になりながらも復活。
精神的肉体的に傷を持つ兵士であっても祖国に尽くしたいと思っている者は多いはずだと、
熱意を持ち続けている兵士を募る。こうして設立された部隊が“ジョーカー”ことJ.O.C.R.。
 
ジムが科学者を拉致してよからぬことを考えていると知ったパターンのチームは金の流れを洗い、
パキスタン人の美人医師ルバイが絡んでいることを突き止め、彼女を追ってスペインへ。
ジムは各国の凄腕エージェントを集めてXを結成しており、そのうちのひとりがルバイだった。
ルバイはジムと結託しているはずだったのに、ルバイはパターンに協力を持ちかけて……。
 
書いているうちに時系列がわからなくなってきました(笑)。例に漏れず長尺ですもん。
消されたはずのパターンが蘇り、ルバイに騙されて拘留され、また出てきて。
どれが先でどれが後だかわからなくなってきたよん。
 
面白いです、とても。ただ、お国柄の違いを多分に感じます。
私もそれなりには愛国心がありますよ。でも、ジムみたいな目に遭わされたら国を恨むでしょう。
というのも、ジムも元はRAWのものすごく有能なエージェント。しかも人徳もある。
彼が復讐心に燃えているのは、潜入捜査がバレて拷問を受け、目の前で妊婦だった妻を殺されたからです。
そのとき、インド当局はまったく助けてくれなかった。
なのにパターンをはじめとするインドの面々は祖国のためにと連呼する。
 
どんな目に遭わされても国のために我慢することなんてできますか。
仕返ししたくても普通はできないけれど、ジムほど有能な人物なら何でも可能。
終始インド万歳!的なところは私にはちょっと理解できません。
もう少し、パターンがジムの心情に寄せるところを見せてくれたらよかったかな。
 
こちらもスーパースターのサルマーン・カーンが友情出演的な出演の仕方。
彼演じるタイガーとパターンが列車内で乱闘を繰り広げ、
その列車が落っこちるシーンはそのまんま『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』で笑った。
別にパクったわけじゃなし、どちらが先だったかもわかりませんけど、ここまで似る!?
つまり、こういうシーンを撮ればどれも同じになるってことでしょうね(笑)。
 
これも続編ありそうです。
最近どれもこれも続編がありそうで、私はすべてを観るまで生きていられるのか不安になってきました。
それにしても綺麗だなぁ、インド人女優。見惚れます。

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『ルー、パリで生まれた猫』

2023年10月08日 | 映画(ら行)
『ルー、パリで生まれた猫』(原題:Mon Chat et Moi, la Grande Aventure de Rrou)
監督:ギヨーム・メダチェフスキ
出演:キャプシーヌ・サンソン=ファブレス,コリンヌ・マシエロ,リュシー・ロラン,
   ニコラ・カサール・ウンデンストック,ジュリエット・ジル他
 
なんばパークスシネマにて。
どう考えても仕事帰りになんばに着くには無謀な時刻からの上映でしたが、
誕生月の割引クーポンの有効期限が迫っていることだし、
初めのほうは見逃してもいいやと思って行きました。
 
ギヨーム・メダチェフスキ監督ってどちらのご出身なのですかね。
本作はフランス/スイス作品ですが、監督デビュー作は『アイロ 北欧ラップランドの小さなトナカイ』(2019)という、
フランス/フィンランドのドキュメンタリー作品でした。
ウィキペディアで調べても情報はないけれど、監督ご自身のHPはありまして、
「私は野生動物映画のディレクターです」と自己紹介していらっしゃいます。
 
その紹介通り、フィクションでありながらメインは
CGではない本物の猫って、やっぱり可愛さが違う。ちょっと感動を覚えるくらいの愛らしさでした。
 
一応の主人公はパリに暮らす10歳の少女クレム。
私が見逃した数十分の間に、クレムと子猫の出会いがあった模様。
屋根裏で母猫とはぐれた子猫はクレムに拾われてルーと名付けられます。
 
クレムの前では仲良く装っているものの、両親は不仲であることが丸わかり。
罵り合う声に耳を塞ぎたくなっているクレムの心を癒やしてくれるのがルー。
 
離婚を決めた両親はそれをクレムに伏せたまま、思い出づくりに別荘へ。
クレムがもっと幼い頃から訪れていたその別荘は森の中にあり、
隣家に犬と共に暮らしている老女マドレーヌのことがクレムは怖くてたまりません。
まるで魔女のようなのです、マドレーヌは。
 
別荘の屋内に留まっていられないルーは、隙あらば表に出て駆けずり回ります。
最初はたやすく見つけられていたのに、だんだん外出時間が増えてくる。
クレムたちがパリに戻る日、いなくなったルーを探してクレムは森の中に入るのですが……。
 
森の中の別荘といっても、小さな子どもが訪れるような場所ですから、
そんな危険な動物がうろうろしているとは思えません。
しかしそこは「野生動物映画監督」だもの、ありえないぐらい獰猛なやつがうろうろしていて(笑)、
クレムはイノシシに襲われそうになったところ、間一髪でマドレーヌに救われます。
 
結局戻ってこなかったルーをパリで毎日想うクレム。
時折ルーを見かけるマドレーヌが捕まえようとしても無理。どんどん野生化していきます。
最後にルーは雪の中、鉄条網に引っかかって動けなくなっているところを発見され、
パリから駆けつけたクレムとマドレーヌが看護することに。
 
子猫だったルーが大きくなって行く過程が捉えられています。
顔つきは可愛いままではあるものの、簡単には抱き上げられないんじゃないかと思う。
外で生きるのは大変だけど、外で生きるのを選ぶのですね。
 
私はとにかくキジトラ好きなものですから、観ている間じゅうニコニコでした。
だけど、うちの猫が遊んでいたときのことを思い出したりもして、たまに涙。
「金縛りやと思ったら、胸の上にミーニャが乗っとった」と弟が話していたことなども(笑)。
弟とミーニャはいま一緒にいるのかなぁ。

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『BAD LANDS バッド・ランズ』

2023年10月07日 | 映画(は行)
『BAD LANDS バッド・ランズ』
監督:原田眞人
出演:安藤サクラ,山田涼介,生瀬勝久,吉原光夫,大場泰正,淵上泰史,縄田カノン,前田航基,
   鴨鈴女,山村憲之介,田原靖子,山田蟲男,サリngROCK,天童よしみ,江口のりこ,宇崎竜童他
 
ファーストデーに109シネマズ箕面にて、前述の『沈黙の艦隊』の次に。
 
原作は直木賞作家黒川博行のベストセラー小説『勁草』。
監督はまだまだ若いと思っていたら、もう70歳をとっくに過ぎているじゃないですか、原田眞人
原田監督は主演に岡田准一を起用した作品が多く、その縁で岡田くんも友情出演。
 
『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』を半ばぐらいまで読んでいるときに観ました。
あまりに舞台が同じで、デジャヴですよデジャヴ
 
いわゆるオレオレ詐欺で高齢者から金を騙し取る特殊詐欺集団。
騙せる相手かどうかを下見して評価を下し、受け子の差配を仕事としている橋岡煉梨(ネリ)(安藤サクラ)。
彼女に指示を出すのは、表向きはNPO法人の理事長でその実は名簿屋の高城政司(生瀬勝久)。
大阪府警の刑事・佐竹(吉原光夫)とその後輩刑事2人(山村憲之介&田原靖子)は、
班長・日野(江口のりこ)のもと捜査を進めるが、なかなかしっぽを掴むことができない。
 
ある日、ネリの異父弟・矢代穣(ジョー)(山田涼介)が出所し、ネリのところへやってくる。
バカでも可愛い弟を見放せず、ジョーに仕事を回してやってほしいと高城に頼むネリ。
ところが高城が億単位の金を隠し持っているとにらむジョーは、
こんな仕事よりも高城から盗むほうが早いとネリをけしかける。呆れるネリ。
 
佐竹らが懸命に捜査を続けるなか、詐欺集団そのものではなくネリを狙う人物がいた。
それは、かつてネリが勤めていたゴヤ・コーポレーションの会長で、
総資産500億ドル以上といわれるグローバルマクロ投資家の胡屋賢人(淵上泰史)。
ネリに手玉にとられたことが許せない胡屋は、部下を使ってネリの居所を突き止める。
 
ネリには内緒で殺しを請け負ったジョーはそれに失敗。
賭けに負けて借金があるわ、殺しに失敗するわでにっちもさっちも行かなくなったジョーは、
ついに高城の事務所へ押し込み強盗に入る。
高城の返り討ちに遭って殺されそうになっているところへやってきたネリは、しばし迷うも高城を殺す。
 
こうして警察と胡屋に加え、高城と連絡が取れなくなった闇組織の人々がこぞって押し寄せてきて……。
 
腑に落ちないところはいろいろとあります。
モデル並みの美人ばかり社員に揃えている胡屋がネリを自分のもとで可愛がっていた理由とか。
安藤サクラに失礼かとは思いますが、そういう美人とはちょっと違うじゃないですか。
本作ではとても美しい人扱いなことにそうなのか!?と思う。(^^;
 
西成の本を読んでいるところだったせいか、釜ヶ崎がこんなふうに娯楽作品のロケ地になることにも違和感。
みんなが寄りやすい街になることがはたしていいのかどうかがわからないのです。
 
宇崎竜童演じる曼荼羅のように、このままの街に住んで生きてゆく。
冒頭に挙げた本のあとがきにあった、住人たちの言葉を思い出します。

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