《さ》
『最悪な子どもたち』(原題:Les Pires)
2022年のフランス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
リーズ・アコカとロマーヌ・ゲレの監督コンビは、これが長編デビュー作にして、
第75回カンヌ国際映画祭〈ある視点〉部門のグランプリを受賞したそうです。
フランス北部、治安の悪さで有名なピカソ地区で映画を撮ることになり、
監督のガブリエルは現地オーディションで選出した問題児たちに演技をさせる。
物語に登場するのは十代のカップル・ジェシーとリリ、そしてリリの弟ライアン。
オーディションを受けるも選ばれなかった子どもたちや、
選ばれたのに台詞もない端役であることを不満に思う子どももいて、
特にもともと「ヤリマン」と言われていたリリは嫌みを言われてばかりで……。
ドキュメンタリーだと思って観はじめたらモキュメンタリーでした。
キャストの子どもたちは実際にオーディションで選ばれた演技未経験者。
映画の中で「演技をする」という演技をする子どもたちが凄い。
この少年少女たちが今後も映画の世界で生きていくのかどうか、楽しみでありながらも無事を祈らずにはいられません。
《し》
『侵入者たちの晩餐』
2024年の日本作品。Netflixにて配信。
新春に放送されたTVドラマですが、映画として紹介することをお許しください。
家事代行サービス会社“スレーヌ”に清掃スタッフとして勤める田中亜希子(菊地凛子)は、
たまに顧客の家で一緒になる料理スタッフの小川恵(平岩紙)と親しくなる。
ある日の仕事帰りに2人で話し込むうち、スレーヌ社長の藤崎奈津美(白石麻衣)の話に。
安い給料で働かされているのは納得が行かない、タンス預金を頂戴しに行こうと。
2人では心許ないと恵の友人でサスペンスドラマに詳しい江藤香奈恵(吉田羊)を誘い、
社長宅の合鍵を作ることに成功した3人は、社長のハワイ旅行中を狙って忍び込む。
ところが、タンス預金など見つからないばかりか、社長が慈善事業をおこなっていることが判明。
何も盗らずに一旦は退散した3人だったが、このままでは罪悪感が募る。
そこで亜希子の提案により、掃除をしに行こうと社長宅に戻る。
一見綺麗でありながら、サッシや排水溝、家具の裏に埃が溜まっている社長宅を磨き上げ、
冷蔵庫に積み上げられていた賞味期限間際のものも有効活用。
満足して引き上げようとしたところ、部屋の片隅に本物の空き巣・重松洋介(池松壮亮)が潜んでいるのを発見。
洋介を縛り上げていると、なんと社長が帰ってきて……。
可笑しくてクスクス笑いが止まらない。キャストも完璧。
なんと面白い作品だったことか。バカリズムってやっぱり天才だと思いました。
《す》
『スペシャル・エージェント 特殊工作員』(英題:Special Agent)
2020年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
日本では何の情報もないのでたぶん劇場未公開。
これで自由の身となるはずが、新たな任務のためにもう一度北朝鮮に戻れと言われる。
その任務とは、韓国人科学者“VIP”の暗殺。
VIPは生物兵器を開発して北朝鮮に拉致されており、そのVIPを消せと。
命令ではなく申し出だと言われて断ろうとすると、
ウォンチョルの一人娘(チェ・ジス)が問題を起こして鑑別所に収監されていると言う。
もしもウォンチョルがこの申し出を受け入れるなら、
娘が前科者にならないようにし、すぐに鑑別所から出所させると。
このように脅されては「申し出」を飲まざるを得ず、北朝鮮に入るウォンチョル。
VIPを見つけて殺そうとしたところ、VIPも娘を人質に取られていると知り……。
この手の作品はたいていスリル満点で面白いものですけれど、かなり地味。
ひたすら国境付近の地雷原で隠れて逃げて殺してが繰り返されるだけ。
アクション自体はキレがあっていいものの、退屈です。
やっとラスボスを倒して一件落着のいい話のはずが、エンドロールでラスボス復活!?
これで続編を作ろうとしているならツラすぎます。
《せ》
『世界が引き裂かれる時』(原題:Klondaik)
2022年のウクライナ/トルコ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
同年の東京国際映画祭での上映時は、原題のまま『クロンダイク』という邦題でした。
2014年に実際に起きたマレーシア航空17便撃墜事件を背景にした作品で、
メガホンを取るのはウクライナ出身の女性監督マリナ・エル・ゴルバチ。
ロシアとの国境近くにあるウクライナ・ドネツク州の小さな村。
出産を控えた妻イルカの体調を心配する夫トリクが病院へ連れて行こうとしたとき、家に砲弾が撃ち込まれて壁がぶち抜かれる。
怪我などはなかったものの、修復に取りかからざるを得なくなってしまう。
この村では親ロシア派と反ロシア派が激しく対立しており、誰がどちらなのか疑心暗鬼。
民間の航空機が撃墜される事件まで起こり、気が気ではなく……。
親族同士でも対立しているものだから、信頼関係が成り立ちません。
イルカの弟ヤリクは親ウクライナ派で、トリクは実は親ロシア派だということがわかる。
夫と弟が絶えず言い争うようになり、イルカはイライラ。
壁のない家でイルカがソファでひとり出産するラストシーンが衝撃的。
《そ》
『ソウェト・ラブストーリー 愛しの花嫁を探して』(原題:A Soweto Love Story)
2024年の南アフリカ作品。Netflixにて配信。
年末、教会での恒例行事を企画した女性ボンゲキレ。
彼女にはいい歳をした息子が3人いるが、揃いも揃って独身で嫁の来てがない。
行事を共同で仕切る女性ブリジットとは親しいものの、オイシイとこ取りをする彼女には時折腹が立つ。
さらにはブリジットの娘が医者と結婚したと得意気に話すから、内心イライラ。
ブリジットに張り合うボンゲキレは、次男が今晩恋人にプロポーズすることをバラしたばかりか、その店にみんなを招待。
ところがそれが見事に失敗してボンゲキレは悲嘆する。
息子たちをなんとか結婚させようと、最初に結婚した息子に家を譲るとボンゲキレは宣言する。
誰も結婚しないならば家は売りに出すと言われ、息子たちはとにかく一番に結婚して家をゲットしようとするのだが……。
長男メンジは料理人でレストランオーナー。母親が家を売れば、自分も店を手放すはめになります。
風来坊のように現れた女性シェフのディナに相談すると、見合い相手を次々に連れてきてくれる。
次男サンディレはかつてはヒット曲もあったミュージシャン。プロポーズ相手のセンテとよりを戻したい。
最終的にはメンジはディナと、サンディレはセンテとくっつき、スカイはゲイではなくてブリジットの娘レモハンとデキていたというオチ。
そもそも嫁探しというのが今の時代には古いように思うけど、国によるのでしょうね。ハッピーエンドだったから良しとしたい。
メンジの店の厨房を見るのがいちばん楽しい程度でしたが、私には何語かわからん公用語と英語の使い分けが面白かった。