めいすいの写真日記

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サウンド・オブ・ミュージック ライブ

2021-06-11 | 映画

                        

                                       wowow 2021/6/9

 史上最も愛されているミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」。
 2013年、一夜限りの舞台上映に全米が涙したという「21世紀版」で鮮烈に蘇る。
 主役のマリアはグラミー賞受賞者キャリー・アンダーウッドを起用、
 サウンド・オブ・ミュージックの名曲の数々が楽しめる。

【監督】
 ロブ・アシュフォード
 ベス・マッカーシー=ミラー
【俳優】
 マリア…キャリー・アンダーウッド
 トラップ大佐…スティーヴン・モイヤー
【公開】2013年、英語、再生時間 2:14:33

ここでは、スタンダードナンバーのいくつかを取り上げてみたい。

■私のお気に入り "My Favorite Things" – Maria and the Mother Abbess
 「♪ バラの上の雫、子猫のひげ、ブリキの湯沸かし、ホカホカ手袋…・・」
  修道院で院長とマリアが一緒に歌います。

 マリアがトラップ家にやって来て、初めて大佐と7人の子供達と会う場面

■ ドレミの歌 "Do-Re-Mi" – Maria and the children
 自己紹介した後、すぐにこの歌を歌います。

 部屋の中を歌い周り、さらに庭に出て盛り上がり、マリアと子供達は仲良くなります。

■ もうすぐ17才 "Sixteen Going on Seventeen" – Rolf and Liesl
 一番年上のリーズルと恋仲の電報配達員ロルフとの二重唱

■ ひとりぼっちの山羊飼い ”"The Lonely Goatherd" – Maria and the children
 雷に子供達がおびえるシーン
「♪ 丘の上の孤独な山羊使い、その声とても大きくて、遠い町まで聞こえました。喉を使った響く声、城の王子も聞きました・・・・・」

修道院でのトラップ大佐とマリアの結婚式

エーデルワイス "Edelweiss" – The Captain
「♪ Edelweiss, Edelweiss, Every morning you greet me.
   Small and white,Clean and bright, You look happy to meet me.
        Blossom of snow, may you bloom and grow, bloom and grow forever.
   Edelweiss, Edelweiss, Bless my homeland forever.」

 コンクールの最後に歌われます。この曲は日本の教科書にも採用されました。

ナチスにより、道路を封鎖され、山道を亡命するトラップ一家。

【感想】やはり、「サウンド・オブ・ミュージック」というと、1965年公開、アカデミー賞5部門
(作品、監督、編集、編曲、録音)受賞の映画を比較対象にしたくなってしまう。
 ジュリー・アンドリュースの歌声とオーストリアのザルツブルグの山々と緑の大地の背景は何事にも
変えられない気がする。

 しかし、今回の一夜限りの舞台のライブの出来映えは素晴らしい。生放送されたとは信じられないほど
見事に演技が行われている。舞台のセットも実に良く出来ている。
2013年のクリスマスに全米1862万人が鑑賞し涙したというのも頷ける。
 マリア役「アメリカン・アイドル」出身のグラミー賞受賞シンガー、キャリー・アウンダーウッドの
フレッシュな歌は心に響いてきた。7人の子供達も歌と踊りを見事に演じていた。特に修道院の修道女の合唱は秀逸。
映画よりも素晴らしいと思えるくらいである。
 「サウンド・オブ・ミュージック」のスタンダードナンバーを改めて聞き、おおいに楽しむことが出来た。

(了)


原田知世主演 映画「時をかける少女」

2021-06-07 | 映画

                          2021/5/31 BS4Kプレミアムシネマ

 筒井康隆のSF小説を映画化した青春ファンタジー。高校生の芳山和子は、学校の実験室で白い煙とともに立ちのぼったラベンダーの香りをかいだ瞬間、意識を失い倒れてしまう。それ以来、時間を移動してしまうような不思議な現象に悩まされるようになった和子は、同級生の深町一夫に相談するが……。本作が映画初主演となる原田知世がフレッシュな魅力でヒロインを好演し、大ブレイクを果たした。

【監督】 大林宣彦 
 【原作】筒井康隆
 【出演】
   芳山和子…原田知世
      深町一夫…高柳良一 
      堀川吾朗…尾美としのり
      福島利男…岸部一徳
      立花尚子…根岸季衣
 【製作】1983年日本

始まりはモノクロのスキー場のシーンから。ロマンティくな雰囲気をかき立てる。

 土曜日の掃除当番、理科実験室でラベンダーの香りを嗅いだ芳山和子は気を失ってしまう。

 その後、不思議な体験をするようになる。

保健室で回復した和子は深町一夫と共に家に帰る。

1日先行した授業を受けているので、この日は漢文の返り点の記入も容易に出来た。

和子の弓が前日の的と同じところに当たる

和子と吾朗との幼少時の出来事が後で深町一夫と入れ替わっていることを知る。

坂の多い町である尾道を駆け抜ける和子。この映画が封切られた後、尾道を訪れる人が増えたという。

 正面の寺の山門の屋根が突然崩れ落ちるのを知っているのため、和子は吾朗が被害を受けないよう急ぐ。

和子は、深町一夫の温室にもしもと感じ訪れるが再びラベンダーの香りの入ったフラスコの液体を嗅いでしまう。

そうすると植物採取をおこなっている深町一夫の奇岩にテレボーテーションしてしまう和子。

奇岩の上から和子は落下。現実の世界とは異なることを知ってしまった和子は異次元の世界に入ってしまう。

深町一夫は「自分は薬学に必要な植物の採取のために、この時代にやって来た未来人であること」を和子に告白する。
自分はもう、生きていた社会に戻らなければならないと告げる。
和子は私を連れて行って欲しいと願うがそれはかなわないことという。
そして、再び後の世、会えるとしてもお互い認識出来ないだろうと告げる。

何年か経ち、大学の薬学部で働く和子。和子は気がつかないが映画では訪ねて来た男は深町一夫?のよう。

【感想】 この映画はSF小説が起こす、テレボーティションとタイムトラベル、そしてそのどちらも起きるタイムリープ。を取り扱っています。
 そして、高校生がのびのびと生きていく世界を明るく表現しています。特に広島県尾道市の歴史ある街、坂が多く厚い瓦屋根が雰囲気を形作る街を描写します。SF小説といいながらも現実の世界とかけ離れないすぎない範囲で演出していて親しみを持ち鑑賞出来るようになっているといえるでしょう。微妙なバランスの上に上手く建って作られました。
 一度見て、そうして、しばらく経って見ても感慨深げに見ることが出ると思います。出来映えの良い映画です。


映画「山椒大夫」・・・ 巨匠溝口健二監督 4Kデジタル修復版

2021-06-01 | 映画

                                  NHK BS4K プレミアムシネマ

 有名な民話をもとにした森鴎外の同名小説を、巨匠・溝口健二監督が映画化。
 平安時代の末、母とともに旅をしていた幼い安寿と厨子王は、人攫(さら)いにあい、母と離ればなれになってしまう。2人は丹後の大地主・山椒大夫の荘園で過酷な労働に苦しめられ、ついに逃げ出す決意をするが…。名コンビのカメラマン・宮川一夫とともに繊細で美しい光と影のモノクロ映像で描き、ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞。


【監督】溝口健二,
【原作】森鴎外,
【脚本】八尋不二,依田義賢,
【撮影】宮川一夫
【音楽】早坂文雄
【製作】1954年製作/日本 
    126分
【原題】:Sansho Dayu
【出演】
 玉木・・・田中絹代
 厨子王・・・花柳喜章
 安寿・・・香川京子
 平正・・・清水将夫
 山椒大夫・・・進藤英太郎

 筑紫へ左遷された平正氏の妻玉木、その子厨子王と安寿の幼い兄妹、女中姥竹の四人は越後の春日を経て今津に出る道の旅を続けていた。
 しかし、人攫いにあい母玉木と安寿、厨子王は違う船に乗せられて引き離される。母は佐渡へ売られ、姥竹は身を投げた。

子供二人は丹後の大尽の山椒大夫に奴隷として売られて来る。

兄は柴刈、妹は汐汲みを始めとして苛酷な労働をやらされ、苦しみながら日々を送っていく。

芝刈りをやらせられる厨子王

 佐渡から売られて来た小萩の口ずさんだ歌に「安寿恋しや・・・厨子王恋しや・・・」と安寿と厨子王の名が呼ばれているのを耳にして、兄妹は遊女となった母の消息を知った。安寿は厨子王に逃亡を勧め、自分は追っ手を食止めるため後に残った。

安寿は厨子王の逃亡を首尾良く見送った後、池に入水し自ら命を絶つ。

追っ手は丹後国「国分寺」までやって来るが、住持曇猛律師が厨子王を匿(かくま)う。

 その後、守り本尊と曇猛律師が書いた推薦状を持ち、都に上った厨子王は元服し正道と名乗る。後に関白師実により、丹後の国主に任じられた。

国主最初の政(まつりごと)として、丹後一国内で人の売買を禁じ、奴婢を解放して給料を払うことにする。

 正道は仮寧(休暇)をとり、佐渡に渡り母を探しまわり、盲󠄃(めしい)となった母を見つける。母は守り本尊を手にし、目に潤いが出て目を開け「厨子王」という叫び声が出る。

【感想】文庫本に森鴎外「山椒大夫、高瀬舟」があり、高瀬舟の方は読んでいたのだが、子供心に「安寿と厨子王」の話を知っており、とても悲しい話であると分かっていたので読む気にならなかった。
 今回、溝口健二監督の映画「山椒大夫」が放映されるというので、映画を見ることにし、その後、小説も目を通した。
 映画は人間の営みを見ることが出来るので自然とこの物語を理解出来た。
 平安時代末期とは言え母玉木とその子、厨子王と安寿の幼い兄妹、女中姥竹の四人が人攫いにあったことは悲惨以外の何ものでもない。しかし、厨子王が正道となり、丹後の国主になり、まがりなりにも母を探し出し、安寿を手厚く弔われたことは心が安まった。
 映画では山椒大夫が国外追放となり、屋敷が燃え落ちるとなっているのは合点がいく。
 しかし、小説では山椒大夫は人の売り買い禁止を受け入れ、奴婢を解放して給料を払うことにした結果、予想に反し農作も工匠(たくみ)の業(わざ)も前にも増して盛んになって、一族はいよいよ富み栄えたとある。こちらは何かしっくりしない結末だ。

 映画そのものは、宮川一夫の映像が綺麗だったこと、香川京子の安寿がとても魅力的で良かったことなど。出演者も好演が目立った。さすが溝口健二監督の作品といえる。

(了)


映画「めまい」・・・ヒチコック監督作品

2021-05-20 | 映画

                                 NHK BS プレミアムシネマ

  舞台はサンフランシスコ。高所恐怖症のため、警察を退職したジョン“スコティ”は、旧友エルスターから妻・マデリンの尾行を依頼される。尾行を始め、次第にマデリンを愛するようになってしまうジョン。しかし、心を病んでいるというマデリンは身を投げてしまう。ところが,失意のジョンの目の前にマデリンにそっくりの女性が現れる・・・。鮮やかな色彩、官能的な演出と音楽、巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の最高作ともされる傑作中の傑作。
 この作品は公開当初、評判は今ひとつだったが、現在は裏窓、鳥、サイコなどを押さえ第一位の人気とのことである。

【製作・監督】アルフレッド・ヒッチコック
 【撮影】ロバート・パークス
 【音楽】バーナード・パーマン
 【出演】
     ジョン・“スコティ”・ファーガソン・・・ジェームス・スチュアート  
     マデリン・エルスター/ジュディ・バートン ・・・  キム・ノヴァック 
             マージョリー・“ミッジ”・ウッド・・・バーバラ・ベル・ゲデス
     ギャヴィン・エルスター・・・トム・ヘルモア
【製作国】アメリカ、1958年 2時間8分年
【原題】VERTIGO

【第1段階】

  舞台はサンフランシスコ。高所恐怖症のため警察を退職したジョンは、旧友エルスターから妻・マデリンの尾行を依頼される。

 高所恐怖症のジョン・“スコティ”は心を病んでいるマデリンの尾行を始めは断る。

しかし、エルスターとマデリンがレストランで食事をしている姿を見、

 その美貌もあってか、翌日から尾行することにする。

 マデリンは、ブーケを買ったり、カルロッタの墓を訪れたりする。      

   

 パレス美術館ではカルロッタの肖像に髪型から首飾りまでそっくりなマデリンが、よく似たブーケを持ち見つめ続ける。

   また、マキントリックホテルは”悲劇の”カルロッタ”が過ごした建物だった。
 窓越しにマデリンを見たのだが、スコッティがホテルに入って調査しようとすると,そこには、マデリンはすでにいなかった。

 尾行を続けてから数日後、マデリンはサンフランシスコ湾にかかるゴールデンブリッジ際から突然、身を投げる。スコティは、なんとか助けることが出来、自宅に連れて帰り手当てする。

 スコティはマデリンに次第に愛を感じるようになり、不安定な彼女を救うために夢で見たという村の古い教会へ向かう。 マデリンはスコティに愛を打ち明けると、カルロッタが自殺を図った教会の塔に駆け上がります。

マデリンは教会の塔から落下する

 


 スコティは追いかけるのだが、高所恐怖症によるめまいが生じ、追いつくことができず、悲鳴が聞こえ、マデリンは頂上から身を投げていた。

   マデリンの転落死は訴訟で事故と処理され、エルスターはスコティを慰めながら、ヨーロッパへ行くと告げる。
 スコティはショックから、精神病院に療養する身となった。

 【第2段階と終末】
   その後、スコティはマデリンと瓜二つのデパート勤務をしているジュディ・バートンに出会います。
   マデリンとジュディ・バートンとは、映画の中では、キム・ノヴァック の一人二役。
   これから、このミステリーサスペンスの謎解きが始まります

   このトリックが寛容出来るか、さらには理解するに十分な内容か?は、視聴者の考え次第で決まることになるでしょう。

  (了)                           


映画「近松物語」・・・巨匠溝口健二監督 4Kデジタル修復版

2021-05-18 | 映画

                                                                             NHK BS4Kプレミアムシネマ

  巨匠・溝口健二監督が、近松門左衛門の浄瑠璃をもとに、不義密通の疑いをかけられた京都の大経師の手代・茂兵衛と主人の妻おさんは、主人の怒りを買い、やむを得ぬ逃避行の中、びわ湖で入水自殺を考える。しかし、二人に真実の愛が芽生えてしまう・・・。封建的な時代のなかで真実の愛を貫こうとする男女を描く傑作である。愛の強さ故に覚悟を決めた終幕の香川京子と長谷川一夫の演技は圧巻。また、おさん(香川京子)の可憐な美しさも魅力。

【監督】溝口健二
【原作】近松門左衛門
【音楽】早坂文雄
【撮影】宮川一夫
【配役】
 茂兵衛   大経師手代  長谷川一夫
 さん    以春の妻         香川京子
 以春    大経師の主人   進藤英太郎
 助右衛門   〃 手代      小沢栄
 玉      〃 女中      南田洋子

【公開】1954年 東宝 1時間44分

  京の四条烏丸に門を構える暦の元締め大経師では、来る丑年の新暦の売り出しに主の以春をはじめ番頭、手代衆達が目まぐるしく働いていた。以春は苗字・帯刀を許されるほどの豪商であった。   

                                                           おさんは茂兵衛に話し、金策を頼みこむ

【前半のあらすじ】
 この日、以春の妻おさんの母が訪ねてきて、実家で物入りが続き、利子の返済に父道順が困っているので、主に内緒で銀5貫調達してくれないかとおさんに泣きつく。

 おさんは、その事情を番頭の茂兵衛に話し、金策を頼み込む。茂兵衛は旦那の印判をつけばすぐに用意できると安請け合いする。茂兵衛はこっそり白紙に印判をつくが、それが番頭の助右衛門にみつかり、盗人の疑いをかけられ、問い詰められる。その窮地に女中の玉が、実は私が頼んだことで、茂兵衛様に罪はないとかばう。

以前から玉に気のあった以春は、さらに立腹し茂兵衛を納屋に閉じ込める。おさんは、玉に礼を言うため玉の寝所を訪れる。 そこで玉から、以春が夜毎夜毎、言い寄って忍んで来ると聞かされ、おさんは懲らしめのために寝所を代わってくれと頼み、夫が忍んで来るのを待ち構える。

 一方、納屋から逃げ出した茂兵衛は自分を助けようとしてくれた玉に礼を言うため、玉の寝所へ忍び入る。そこでおさんと茂兵衛は勘違いしたまま肌と肌を触れ合ってしまう。以春の声に、二人はお互いの過ちに気づき、たちまち不義密通の濡れ衣を着せられ、二人の逃避行が始まる。

逃避行が暫く続くが、追ってが迫ってきて長続きはしない 左おさん、右茂兵衛

 ついに、二人「は死ぬしかない」と琵琶湖に小舟を漕ぎ出し、茂兵衛はおさんの両足を縛る

 茂兵衛がおさんに向かって言う。
 「今際の際なら罰も当たりますまい。この世に心の残らぬよう一言お聞き下さいまし。茂兵衞は今日から、あなた様をお慕たい申し上げております。」「え!私を。」「はい」「おさん様どうなされましたか。お怒りになりましたか?」
「お前の今の一言で死ねんようになった。死ぬのはいやじゃ。生きていたい。茂兵衛」。おさんは茂兵衛に抱きつく。

  手代の茂兵衛と主の妻の愛の告白による大転換の場面。
  主人以春との人間性と30歳という年齢差に初めておさんは茂兵衛との愛に芽生えることになる。

 追っ手が迫ってくるが、噂では捕らえようとしているのは茂兵衛だけで、おさんは見逃す(二人は不義密通ではない)との考えであると知り、一瞬の時を見計らい。茂兵衛はおさんと離れようとする。足を痛めているおさんは、必死で追いかけてやっと追いつく。「大経師は開店させます。どうぞ帰って下さい」「おさん様はよろこんで迎えられます」

 「私を一人にして行ってしまうのか。私がお前なしで生きていけると思っているのか?お前は奉公人ではない。私の夫であり、旦那様だ」「悪うございました。もう傍を離れません。もう離れません」二人は再び抱き合う。

おさんと茂兵衛が「不義密通」をしたと認めたことにより、京都所司代は金は積んだが何の届を出していなかった大経師 以春をお家の取り潰しにする。

 おさんと茂兵衛は不義密通の罪により、市内引き回し、張り付けの刑になる。

「お家(いえ)さんのあんなに明るいお顔を見たことがない、茂兵衛さんも、あんな晴れ晴れとした顔色で、ほんまにこれから死なはるのやろうか」二人を見送る店の人々の声。

【感想】
  溝口健二監督らによる落ち着いたストーリー展開は、二人に追っ手が迫るというスリリングな展開により緊迫感を漂わせている。
   また、封建時代のお家(おいえ)様と手代という乗り越えられない死の柵み(しがらみ)を強い意志で超えて行こうという二人の恋愛感情が真に迫ってくる。濡れ場シーンが少ないのに、とても感動的である。このような恋愛ドラマは最近ではなかなか見られない。
   和楽の三味線、尺八、太鼓、鼓の響きが新鮮で浄瑠璃の世界を彷彿とさせるようで秀逸だった。
 また、宮川一夫の撮影もデジタル修復版となり、美しくなっている。

 香川京子がびわ湖での告白以来、とても若々しく、美しく見えるのは私の思い込みだったのだろうか? 

(了)


加山雄三主演 映画「アルプスの若大将」・・・ 田中邦衛さん追悼

2021-04-27 | 映画

                       NHK BS プレミアム・シアター 2021/4/25

 若大将シリーズは「東宝が1961年から1971年まで製作した全17作から構成される加山雄三主演の青春映画のシリーズ名」です。
 今回の放送は田中邦衛(青大将)さんが2021年3月24日に亡くなられたので、その追悼番組です。加山雄三(若大将)の2枚目俳優ぶりを支え、青大将の3枚目俳優として多くの人気を得ていました。
 田中邦衛さんは他の作品にも多く出演していますが演技派でそのキャラクターが好まれていました。冥福を祈ります。                              
  一方シリーズのマドンナは大学生編(11編)は星由里子、それぞれ苗字が異なるけれど名前は澄子です。
 なお、本作「アルプスの若大将」は  若大将シリーズの中で最大の動員数となりました。

【監督】古沢憲吾
【撮影】飯村正
【音楽】広瀬健次郎
【出演者】加山雄三 ・・・ 若大将 田沼雄一 京南大学建築学部、スキー部
           田中邦衛 ・・・ 青大将 石山新次郎 
     星由里子 ・・・    岸澄子   パン・アメリカン航空勤務
【主題歌】『君といつまでも』『蒼い星くず』「夕陽は赤く」
【配給】  東宝
【公開】 日本の旗 1966年5月28日
【上映時間】 94分

ツェルマットで出会った若大将と澄子。写真は馬車の上。当時は街の中心部も車両通行禁止だったようです。

 ツェルマットのゲレンデも豪華なロッジやホテルは当時なかったようです。

マッターホルンをバックに滑る若大将

澄子にローマのスペイン広場を案内される若大将。階段奥左

トレビの泉にコインを投げ、大学スキー選手権大会の優勝に「願かけ」する右若大将と澄子

 珍しく、部屋の中で「君といつまでも」を歌う若大将。このシーンの前後で若い女性の姿が澄子と入れ替わったりします。「幸せだなー ・・・ 」のくだりでは青大将が入ってきて「誰と話をしているの?」と聞きます。

 パーティーの席での青大将と澄子。

苗場スキー場の奥の休憩所で澄子を暴漢から助けようとしてかえって殴られて怪我をする青大将。たまたま、通りかかった若大将に助けられる。左、若大将、一人置いて青大将、澄子。

苗場スキー場の指導員達の滑り。

大学スキー選手権大会のセレモニー。

【ストーリー】 若大将シリーズのストーリーはほぼワンパターンです。

若大将が澄子と知合い、恋仲となる。
ふたりの間に青大将が割ってくる。若大将が他の女性と親しくなる。
澄子が焼きもちを焼き、当てつけに青大将の誘いに乗る。
二人きりになったところで、青大将が澄子に迫る。
もともと澄子は青大将など目にとめていないので、当然ながら抵抗する。
青大将が抵抗にも怯まず、さらに澄子に迫る。
若大将が現れ、青大将をこてんぱんにやっつける。
しかし、若大将にはスポーツの大会に出場しなければならない。
会場に間に合うか?
こうしたワンパターンのあらすじがかえって人気を呼んだようです。

若大将(加山雄三)は,シリーズにより様々なスポーツを行いますが、
実際にスポーツ万能でこれらををやってのけます。
特に『アルプスの若大将』はスキーですが、国体に2度出場しています。
実際実力通りで急斜面の滑りもスタントマンなしということです。

若大将と澄子のラブシーン。若大将が劇中歌を歌う。
その中でも、「君といつまでも」がメイン。「ふたりを夕闇が包む、この窓辺に~」
他に『アルプスの若大将』の劇中歌は「 蒼い星くず」「 夕陽は赤く」など

【感想】
 とにかく55年も前の青春映画。海外旅行などは一般の人達には「夢の又夢」でした。
 スポーツカーを乗り回したりするのも時代の最先端でした。
 スキーが爆発的に人気スポーツになるのは,団塊の世代からで、この時代以降です。
   スキーの大学選手権大会が、回転、ジャンプ、滑降と3種目を一人の人間がこなしています。特にジャンプでは腕をくるくる回しています。違和感を感じるのは仕方がないところです。
  今年2021年3月に(青大将)田中邦衛さんが亡くなりましたが、2018年5月に(澄子)星由里子さんも亡くなっています。 私は若い頃に若大将シリーズを一回だけ見ていますがとても明るく楽しい映画だったという記憶があります。追悼の番組というのは少し悲しい気持ちになります。


薬師丸ひろ子主演 映画「探偵物語」

2021-04-22 | 映画

                             NHK BS プレミアム・シアター 2021/4/18

 薬師丸ひろ子、松田優作共演の恋とサスペンスの青春映画。 大学生で資産家の令嬢・直美の前に、ボディーガードとして私立探偵の辻山が現れます。直美は1週間後に単身アメリカに渡り父と暮らす予定です。辻山は冷静で寡黙な性格でどちらかと言うと慎重派。行動的な直美のペースにつられて、勢いに流されることもしばしば。その尾行を続ける辻山にうんざりする直美ですが、ある日、辻山の元妻・幸子が殺人事件に巻き込まれてしまいます。直美と辻山は真相を突き止めようとしますが・・・。映画は、この年の邦画興行成績第2位のヒット作。

【製作】 角川春樹
【監督】 根岸吉太郎
【脚本】 鎌田敏夫。
【原作】 赤川次郎
【音楽】 加藤和彦 
【主題歌】 薬師丸ひろ子「探偵物語」(作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一)
【製作】 1983年 角川映画
【出演】
 新井直美(薬師丸ひろ子)
 辻山秀一(松田優作)
 直木幸子(秋川リサ)
 長谷沼君江(岸田今日子)
 永井裕(北詰友樹)
 進藤正子(坂上味和)
 国崎剛造(藤田進)
 国崎三千代(中村晃子)
 国崎和也(鹿内孝)
 岡野(財津一郎)

国崎和也の経営するナイトクラブの片山と直美。バックには歌を歌う幸子

   辻山と離婚した元妻・幸子はナイトクラブの支配人で暴力団の国崎組の息子・和也と付き合っていました。

 その和也がラブ・ホテルの浴室で刺殺され、死の直前まで一緒にいた幸子に容疑が向けられました。
 幸子は無実を主張するので、直美と片山は無罪を晴らすべく活動を始めます。

 幸子は警察に指名手配され、国崎組にも追われます。

 国崎組の組員が片山のアパートにまでやってくる。幸子が匿われていたが直美の機転て逃れる

 しかし、国崎組が執拗な追跡を始め、度重なる脅迫、落とし前として”指詰め” が行われるなど、スリリングな状況となります。でも現在では反社会的な勢力の描写はドラマにあまり取り上げられない気がします。

   一方お色気シーンが頻繁に出て来ます。ナイトクラブのバニーガール、ラブホテルの回転ベッドや部屋から素通しの浴室、葬式の際の喪服での情事などなど。

   ベッドシーンでは女性の上半身が裸体で乳房が見えたりなど、当時は良いとしても、現在の映画では受け入れられないのではないかという気がします。

   直美は好奇心旺盛で、度胸があり少々のことには動じない性格。行動派で、思い立ったら即動くタイプ。とはいえ裕福な家庭育ちでお嬢様女子大生の行動力に驚きます。
  その結果、直美の大活躍で真犯人が見つかることになり事件は解決することになりますが・・・ 。

   成田空港に降り立つ直美

  映画のラスト、アメリカに旅立つ直美が辻山のアパートを前夜に訪れ、愛を告白するシーンから、アメリカに旅立つ直美が,空港で辻山とディープキスを交わすシーンまでは青春映画らしい雰囲気になっていました。

 また、主題歌の曲想は映画に良く合っていて、薬師丸ひろ子の歌もとても上手です。



 

(了)


映画「ウエストサイド物語」

2021-04-16 | 映画

                            NHK BS プレミアム・シアター 2021/4/11

 アカデミー作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞など10部門を受賞、70ミリで製作された映画史上不滅の名作ミュージカル。シェークスピアの「ロミオとジュリエット」をもとに、ニューヨークのダウンタウンの不良グループ リフ率いるジェット団とプエルトリコ人ベルナルド率いるシャーク団の抗争と、トニーとマリアの許されない純愛を、ダイナミックなダンスと数々の名曲で描く。「マリア」「トゥナイト」「アメリカ」「サムホエア」「クール」などの曲はその中でも傑出している。また、当時としては鮮烈なカラー映像が美しく、画像もシャープである。

【監督】ロバート・ワイズ
【原案・監督・振付】ジェームス・ロビンス
【原作】アーサー・ローレンツ
【脚本】アーネスト・レーマン
【撮影】ダニエル・L・ファップ
【音楽】レナード・バーンスタイン (作詞)ティーブン・ソンドハイム
【出演】
    ナタリー・ウッド          ・・・ マリア
    リチャード・ベイマー   ・・・ トニー
        ジョージ・チャキリス   ・・・ ベルナルド 
    リタ・モレノ             ・・・ アニタ
        ラス・タンブリン     ・・・  リフ          他
【製作国】アメリカ 1961
【原題】WEST SIDE STORY

ウエストサイド物語の中では優れた歌とダンスが行われるが、特に全編を通してダンスはキレキレの連続であるが、その名場面のいくつかを取り上げてみたい。

 中立地帯のダンスホールで開かれたダンスパーティでジェット団とが鉢は合わせし、ダンスの技を競う。「マンボ」の曲での踊りは見事である。また、他の場面も含めリフのアクロバティックな動きは優れた体操選手のよう。
 この曲は後にバーンスタインが監修した「シンフォニックダンス」の中でも人気があり、特にグスタヴォ・ドゥダメル指揮シモンボリバル・ユース・オーケストラの演奏がノリノリで凄い。一聴をお勧めする。
 このダンスパーティでマリーとトニーは運命的な出会いをする。

 最も有名な曲の一つ、トニーの歌う「♪マリア」。マリアに魅せられたトニーは恋心を歌う。

  こちらも人気のある曲「♪トゥナイト」。
 「♪マリア」から「♪トゥナイト」まではストーリーは流れるようで見応えがある。

シャーク団の男女の踊り「アメリカ」。難しい人種差別問題をティーブン・ソンドハイムが上手く作詞して場を盛り上げている。
 踊りは、リタ・モレノの独壇場。その上手さは特筆に値する。

 悲劇が起こり追い詰められたトニーとマリアが歌う「♪サムホエア」哀切感が漂う。

 シャーク団とジェット団のお互いの憎しみは頂点に達するが、シャーク団の頭を冷やせと歌う「♪クール」は歌も踊りもスピード感があり、素晴らしい。

【感想】
 ストーリーは二つの不良グループの抗争となっているが、実は登場する人物は真面目で街で非行を繰り返すような青年達ではない。服装も乱れたところはない。
 たまたま?殺人が起こってしまったという内容で、実は中流社会の出来事かと思えるほどである。
 このことが基本にあり、ストーリーが安定して踊りや歌の素晴らしさを際立たせいるのではと思う。
 バーンスタインがこのミュージカルを作曲したのだが、すでにブロードウェイで上演されていたために「映画で使われた新曲」の条件を満たさなかった。このため、アカデミー賞「歌曲賞」の対象にならなかった訳である。なお、「歌曲賞」選ばれるのは一曲だけという。もしかりに新曲だとしたら、何が選ばれたのだろうか?
日本で公開された当時は、「トゥナイト」をよく耳にしたような気がするが・・・。
 いずれにしても、名曲が満載のミュージカルだといえるだろう。

バーンスタイン作曲 「ウエスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニックダンス」・・・めいすいの写真日記  2015-6-16

(了)


薬師丸ひろ子主演 映画「Wの悲劇」

2021-04-14 | 映画

                          NHK BS プレミアム・シアター 2021/4/11

  薬師丸ひろ子主演、劇団研究生の静香は、次回公演「Wの悲劇」のオーディションにのぞむが、ライバルのかおりがヒロインに抜てきされてしまう。そんななか、劇団の大女優にスキャンダルが発生。静香は、その身代わりとなるかわりにヒロインの座を手に入れるが・・・。
   
監督・脚本 澤井信一郎
 原作   夏樹静子
 音楽   久石 譲  
 出演   薬師丸ひろ子 ・・・ 三田静香
      世良公則     ・・・    森口昭夫
      三田佳子      ・・・        羽鳥翔
              三田村邦彦    ・・・   五代淳
      高木美保      ・・・       和辻摩子

 製作   角川春樹   1984

【 ストーリー1】 舞台を演じる女優の成長と元劇団員の男性との恋を描いた青春映画の観点から

 野外ステージのある公演で森口は,初めて静香に出会い一目ぼれする。

 静香の住居

森口は静香に自己紹介をしながら一緒に歩く。

ヒロイン(和辻摩子)はライバルのかおりに決まり、静香は端役となる。花束を持ち、静香の帰り待っていた森口に渡された花束を体に叩きつけるが・・・思い直して飲みに行く。


 オーディションに落ちた静香は、「私ってブス?}と問いかけるが森口は「特別な美人ではない」「そんなことは家に鏡あるから知っているわ」、「でもチャーミングだから好き」、「じゃ個性的?」「演技派という手がある」とのやりとりがある。静香は「昭夫なんとかしてくれっ」と静香は泣きじゃくる。
 さらに森口は友達が小さな劇団にいてその親友でライバルだった男がオートバイで事故ってしまい救急車で病院に運ばれた、共に小さな楽団にいたが、親友は注目をされ始めテレビや映画に出演依頼が来始めていた。親友が訪れた時、花に囲まれて元気そうで、届け物が多くバックにぎゅう詰めにされて持って帰った。次に訪れた時はもっと大きなバックを持って来るようにいわれたが、その時は鼻に管通されて痛々しく数時間後には命を落とした。病室も外に出て暫くすると片付けられてしまい、その友達は役者を辞めた。という話をする。
 静香と森口の二人のシーンはここは見せ場でもある。

そのあとの一夜を森口のアパートで明かした静香は立ち去っていく。

 森口は舞台稽古中の静香に、弁当とお茶を届けるが弁当を受け取ると中に入ってしまう、車に乗せて帰ろうとすると、五代の車に方に走って行ってしまう。森口は五代(三田村邦彦)に、お前は妻子持ちなんだろうというと、私は独身と応え。森口は殴り合いの喧嘩をしようとするが五代はその場から立去ってしまう。

  コインランドリーで浴衣姿の静香は森口と出会う。この日稽古で、五代に対しブロンプしなくてもよい場面でしてしまい叱られた。彼の役に立ちたいという気持ちがあるためだったからと森口に告げる。静香は初体験の五代が好きというので、森口は静香がダメだと知りつつも、自分よりも五代の方に気持ちがあることを知る。

 不動産屋の森口は、この空き家の洋館に静香を連れてきて「結婚し、二人で住まないか」と言う。芝居についての見極めがついてからでいいからという。「成功したらどうするの」の問いに、ヒモになる気はない。その時は楽屋に大きな花束を持っていき、さよならの代わりにすると答える。

★次のシーンからは大阪公演以降の話になるがストーリーが劇的に変わりスピードアップする。

 スキャンダラスなテレビの記者会見を見た森口は怒り、静香に言い訳をするをするように迫るが静香は受け入れない。森口はサングラスをかけた静香の顔を殴る。「顔をぶたないで。私、女優なんだから」
  森口は落ちたサングラスを拾い上げ「サングラスなんか似合わない」と言って立ち去る。
 静香は立ち去っていく森口に向かい「見に来てね私の芝居、見に来てね。」という。

  「顔をぶたないで。私、女優なんだから」という言葉は当時の流行語になったということである。

【ストーリー2】  「スターへの道の選択」の観点から

 看板女優の羽鳥翔はパトロンとの降って沸いた腹上死というスキャンダルを恐れ、たまたま通った静香に身代わりになることを頼む。見返りに大阪公演の後の東京公演ではかおりを降板させ静香を主役に起用すると約束する。女優への道を望む静香は引き受けることにする。

 死体が運び込まれた部屋で、一大決心をしフロントへ救急車の手配をする静香。

  静香のスキャンダルを取材するレボーター役は、梨元勝を始めとする経験者なので辛辣な取材をして真実感が溢れる。

記者会見に臨む静香。

 初めての東京公演の本番、主役しての演技について自信を失いかけている静香に羽鳥翔は「女優、女優、女優、勝つか負けるかよ」と言って勇気づける。

 「女優、女優、女優」という言葉も当時、はやったようである。

 羽鳥翔に最後のカーテンコールは譲ると言われ、自分の演技が出来たことを喜びいっぱい観客に訴える静香。

 舞台が跳ねた後、静香は姿を現すが役を外された元摩子役のかおりが、「静香が羽鳥翔のスキャンダルをかぶり、自分の役を奪った」とナイフを持って襲ってくる。それを見ていた森口が中に入って静香を守り、怪我をして病院に運ばれる。その後には約束の大きな花束が・・・。

 静香は女優として再起することを誓い、森口に別れを告げる。そんな静香の去り際を、森口は拍手で見送る。
 森口にお礼の挨拶をする静香。

 【感想】数々の賞を得た映画であり、確かに見栄えはする。
舞台を演じる女優の成長と元劇団員の男性との恋を描いた青春映画というだけでも一つの作品として認められたと思う。
 しかし、静香が羽鳥翔のスキャンダルを引き受け、劇中劇が加わり羽鳥翔役の三田佳子が熱演し、一気にストーリーが熱を帯び、緊迫度を増す。日本のシェークスビア演出の雄だった蜷川幸雄が舞台を引き受けたことも効果は大きい。
 薬師丸ひろ子がアイドルから大人の女優に成長した映画としても有名であるが、「セイラー服と機関銃」しか彼女の映画を見たことがない私には、ごもっともと思った。
 また、薬師丸ひろ子の歌う主題歌も素晴らしい。

(了)


薬師丸ひろ子主演 映画「セーラー服と機関銃」

2021-04-07 | 映画

                            

                        NHK BS プレミアム・シアター 2021/4/4

 当時10代の薬師丸ひろ子が主演、主題歌も大ヒットした80年代を代表する傑作青春映画。亡くなった父に代わって日高組の組長となった高校生・星泉が、敵対する組員との抗争や、父の死の真相に巻き込まれていくが・・・。赤川次郎の小説を映画化した相米慎二監督が、少女から大人へと成長していくヒロインをみずみずしく描き、とりわけ機関銃を乱射し、「カ・イ・カ・ン」とつぶやくクライマックスが、日本映画史上の名シーンとなった。

【原作】赤川次郎
【監督】相米慎二
【脚本】田中陽造
【音楽】星 勝

【出演】薬師丸ひろ子・・・星泉
    加瀬恒彦・・・佐久間真
              林家しん平・・・目高組トリオ・ヒコ 元暴走族
              酒井敏也・・・目高組トリオ・メイ 泉のボディー・ガード
             大門正明・・・目高組トリオ・政 
      風祭ゆき・・・三大寺マユミ
           柄本明・・・黒木刑事
      寺田農・・・ 萩原
      三國連太郎・・・太っちょ・三大寺一  ほか
 【製作】1981    1時間53分

星泉は、考え事をする時にはブリッジをする。初登場のシーンがこれ。

 泉の唯一の親戚である目高組の組長(叔父)の葬儀。父も母も死んでいるので、天涯孤独となった。泉の取り巻きの3人の同級生と共に祈りを捧げる。

家に戻ると、まゆみという人物がいて、父の手紙を持っていた。手紙には、いっしょに暮らすようにと書いてあった。

星泉を出迎えに来た目高組の4人の組員。後ろに並ぶのはこの日雇われたエキストラ。

  星泉を佐久間が出迎え、ボロ車で目高組事務所に連れて行かれる。

先代の組長からの遺言で四代目組長は遠縁である「星泉」となっていた。泉は当然断るが、「組長には、年齢も性別も関係ない」といわれる。佐久間は受けてもらえねば対立する松の木組みに乗り込んで散り花を咲かすと言う。4人と40人との闘いになるという。それを聞いて泉はやむを得ず組長を受けることにし、女子高校生が目高組長となる。

組長就任を組織のトップ浜口組に挨拶し、馬鹿にされるがご祝儀を貰って、盛り上がる組員達。

 黒木刑事と話をした後、家に戻ると家の中が酷く荒らされていて、まゆみの姿はなかった。(魚眼レンズを使用して撮したという場面)

 その後、まゆみは助けて貰った父の面影を追い、佐久間と男女関係を結んでいることを泉は知る。

 夜、バイクで新宿通りを走り回るヒコと仲間。ヒコの後に泉はヘルメットをかぶり相乗り。 
しかし、組に送り届けて貰った翌日、組員ヒコは殺される。

 ヒコが殺されたことで泉は単身「松の木組」に乗り込むが、反対にクレーンで宙づりにされ、貯留槽を利用したコンクリート責めにされる。しかし、佐久間が松の木組長の息子を人質に取ったので泉は開放される。
 実はヒロを殺したのは松の木組ではなく、「太っちょ」三大寺一の指示によるもので、闇社会を仕切り、事件の背景にはヘロインの存在があることが明らかになってくる。

 メイが泉のボディーガードをしていたところを黒木がやって来て建物内に入ろうとする。これを防ごうとし、メイは刺されてしまう。大事には至らなかったが、泉が治療に当たる。しかし、萩原が入ってきてメイは射殺される。泉は荻原に「太っちょ」の元に連れて行かれる。

「太っちょ」、「三大寺一」のもとで殺されかかった泉を助けてくれたのはまゆみだった。まゆみは三大寺一の娘であった。
 この景色の良い場所で、まゆみはさらに「高価なヒロインは泉の部屋に粉末ではなく水に溶かしてローションの瓶に詰められている。」と三大寺一に告げる。
 また、ヒロを殺したのは「私」と黒木は話す。黒木は刑事であり、かつ三大寺一の手下であった。黒木は急ぎ泉のマンションに出向く。

 追い詰められたのは泉と佐久間だった。しかし、まゆみが父の三大寺一を射殺。三大寺組の解散を告げる。 

 萩原は三大寺一の部下であったが「浜口物産」に寝返り、先回りして泉のマンションでヘロイン入りのローションの瓶を手に入れ、黒木刑事を殺害する。
 「漁夫の利」を得たのは「浜口物産」だった。

泉と佐久間と政の目高組の三人は新宿の高層ビルにある浜口物産に殴り込みをかける。

 泉は機関銃を乱射、浜口組を倒す。左に政(この時の銃撃で死亡)右に佐久間

 この機関銃の乱射のあと、泉は「カ・イ・カ・ン」とつぶやく。

以下、ネタバレ御免

■ 泉と佐久間の別れの言葉

「終わったのね。」
「ヒコもメイも政も死んじまって目高組、これでお終いです。」
「ごめんなさいね。私が組長になったばかりに組をつぶしてしまったみたいで。」
「とんでもねぇ。お陰で最後の一花、どんと花火見たいに咲かせることが出来ました。死んじまったあいつらも、先代に褒めて貰っているでしょう。お礼申し上げます。」
「やだ、他人行儀ね。」
「もう他人ですよ。組がなくなりゃ,組長はもとのセイラー服のお嬢さん。」
「佐久間さんはどうするの?」
 「東京を離れて、どこかの田舎町でひっそりと暮らしてみようと思います。」
「じゃー、ヤクザは?」
「切った、貼った稼業から足を洗います。」
「本当に?」
「ヤクザの世界は所詮、後ろ向きです。仁義だ、男だと力んでみても本音は先へ進むのが怖いんですよ。だからちっとも前を見ようとしねぇ。臆病なんですよ。ヤクザもんは」
「そのことを組長に教えてもらいました。」
「組長はやめて、もう目高組はなくなったんだから。」
「じゃーお嬢さんお元気で。」
「佐久間さんも。」
「約束して,しっかり堅気になるって。」
「しっかり堅気になってもう一度,あのマンションを訪ねます。誓います組長。」
「ほらまた」

■ 泉と佐久間は「め組みの纏」を燃やします。

その数か月後、警察に呼ばれた泉は佐久間の遺体を確認します。佐久間は、喧嘩を止めに入り、刺されたのでした。泉は佐久間にキスをします。そして、係員から佐久間の名刺をわたされます。稚内市の建設会社の営業課の名刺で裏には「泉様 新入社員の挨拶の出張で東京に来ました。お留守でしたので、いずれお目にかかるのを楽しみに」と書かれていました。泉は小さく切ってビルのテラスから投げます。

■ 薬師丸ひろ子が歌う主題歌のシーン

 それからセーラー服のまま赤いハイヒールを履いて新宿通りに出ます。新宿伊勢丹前を数百m離れた新宿東映屋上から500mmの望遠レンズで撮影したという。

マリリン・モンローの地下鉄の送風口のシーンを連想させるシーン、薬師丸ひろ子はあまりの羞恥心のため、役に集中出来なかったという。

「生まれて初めての口づけを中年のおじんにあげてしまいました。わたくし愚かな女になりそうです」

【感想】

 この映画の大ヒットについて考えてみたい。当時はシネマコンプレックスもなく、上映館は限られていた。
 また、完全入れ替え制もなかったため、混んで席に座れないばかりか壁によりかかるスペースさえもなかったという。驚くべき大ヒット映画だといえるだろう。この映画の主役として薬師丸ひろ子はすでに中学2年の時から名前が挙がっていたという。そして高校2年の時に配役が決まったという。
 何故、これだけ人気が出たのだろう。やはり薬師丸ひろ子の美貌があったことはもちろんだが、セイラー服というのは、純潔が感じられ魅力あるということ。女子高校生そのものが人気がある。さらにヤクザの世界で活躍するというのは、考えられない異質の世界であり、かえってその対比に興味が湧くことによるのではないか。映画もその点を上手くまとめていると思う。さらに付け加えると、組長星泉は、ヤクザの世界で血の流れること、殺し合いを嫌っていたことである。また、麻薬を始めとする悪事も好ましいと思っていなかった。最後に組織のトップ浜口組を倒し、周りの悪の世界を一掃し、正義を取り戻した。「カ・イ・カ・ン」といったのは、まさにそこにあったのだと思う。目高組が解散し幹部である佐久間が「堅気」の世界に戻ったことは、映画を見た人には、すっきりとなった世界を見て爽快な気分になったと思う。

 あとは、やはり主題歌である。薬師丸ひろ子は俳優として名前は売れていたが当時歌手としては無名だったようである。この歌が魅力的な上に、薬師丸ひろ子は歌が上手であった。これが大きく人気を盛り上げることになった。薬師丸ひろ子は、その後日本アカデミー賞で主演女優賞を取ったり、お母さん役で助演女優賞を何度も取ったりしている。最近も朝ドラにも出たりしており、いまでも好感の持てる演技をしている。この映画を礎に良い人生を送っていることが好ましく思える。

  この映画のラストシーンで言った「 わたくし愚かな女になりそうです」という風にならなくて良かった。

(了)


映画「子鹿物語」

2021-04-04 | 映画

                         NHK BS  プレミアム・シアター 2021/04/04

 昔、この地を開拓し故郷とした人々がいた。彼らは飢餓と闘い、懸命に働いた。現代の繁栄と自由は、彼らの忍耐と苦労のたまものなのだ。そんな彼らに本作を献げる。 我々は彼らを忘れない。

【原作】 マージョリー・キナン・ローリングス
【監督】 クラレンス・ブラウン
【撮影】 チャールズ・ロシャー、レナード・スミス、アーサー・アーリング
【音楽】 ハーバート・ストザート
【出演】  グレゴリー・ペック・・・父親ペニー
     ジェーン・ワイマン・・・妻のオリー
     クロードジャーマン・ジュニア・・・息子ジョディー

   製作  アメリカ 1946 2時間9分
   原題  THE YEARLING

  1878年4月フロリダのジョウジ湖。南北戦争闘った私は、数年前、この湖にやって来た。そこから船で川に向かい文明社会に別れを告げ 、住む場所を求めて密林に入った。
 奥に進むほど森は鬱蒼としていて、草木自身、空気を求めて苦闘している。私は原点に回帰していった。都会と戦争から離れゼロから始める。私は船を下り、森の中に入っていった。低木が茂るこの地、少数の開拓者のみが住む。私は近くの村で妻と出会い、一緒に樹海を切り開いた。そして開墾した土地を”島”と呼んだ。こんな感じだあれから我々は何年もの間、苦楽をともにしてきた。これが我が家、バクスター島だ。

【ストーリー】
  フロリダ北部のやぶ地帯の空地にバクスター一家は自然と戦いながら農作をしている。父親のペニイはやせて背の高い男で未開の原野を開墾し、家畜を育て、家畜荒らしに来る野獣を退治するのが仕事である。母オリーはブロンドの小柄な女であるが1日中、台所仕事に追われ、遊び盛りの11歳の息子ジョディーを小うるさく叱るが根はやさしい働き者だ。

 ある朝、豚や子牛など家畜荒らしをする大熊を狩るため、足跡をたよりに、ペニイとジョディーは猟犬を連れて出かけた。沼地近くで熊を追い詰めるが、運悪くペニイの旧型の猟銃は逆発(バックファイア)したため諦め、熊を逃がさざるを得ず、勇敢に闘った猟犬のうち一頭が重傷を負う。

  熊の喉にかみつくペニーの猟犬、しかし反対に叩きつけられる。

 壊れた鉄砲では一家がそのものが危険なのでペニイは隣人フォレスター家を訪ねる。フォレスター一家は父と母のほかに大男の息子達アーチ、ミルホイール、ギャピイ、バック、レムの5人と背骨の曲がった末子フォダークウィングがいる。ペニイは連れて行った猟犬とレムの最上の銃とを交換する。レムが犬好きなことと、その小犬が臆病で熊と闘わなかったのに、怪我もしないほど強いと信じこんだのである。結果的にペニーはレムをだまして銃を手に入れることになった。

 この夜、ジョニーは戸外に作られたフォダークウィングの小屋で夢を語らいながら過ごす。

  母親から「あなたたち毛布はあるのめ?」と訪ねられる二人。

 

 後日、ペニイは作物を売りにヴォルージアへ出掛ける。お共をしたジョディーは彼が崇拝するオリヴァーが旅から帰って、恋人のツウィンクと結婚すると聞いて喜ぶ。ツウィンクにはレムもほれていて、オリヴァーがレム達と会うと大喧嘩となり、ペニイ親子もオリヴァーの見方をして戦った。

 このため両家は不和となり、バクスターの豚が盗まれたのもフォレターの仕業だと考え、ペニイは取り返しに出掛ける。その途中ペニイは大毒蛇(ガラガラヘビ)に足をかまれ、近くにいた雌鹿を射殺してその肝臓と心臓とで毒を吸いとる。一方殺された雌鹿の子鹿は森の中で鳴いていた。
 ペニイは雌鹿の肝臓と心臓で応急処理をしたが、死にひんし、フォレスター家の力を借り、医者の治療を受けることになる。

ペニーは蛇の毒が回り寝込んでしまうが、奇跡的に助かる。

 ペニーが助かったのは雌鹿のおかげだから、といってジョディーは雌鹿が残した子鹿を家で飼うことを許される。早速、ジョディーは雌鹿の撃たれた近くで子鹿見つけ出し、家に連れ帰り飼うことにする。後に尻尾が白いことからフラッグと命名し、子鹿と遊んでしばらく楽しい日々を暮す。

しかし、フォダークウィングを訪ね、仔鹿を見せようとするがフォルダーウィングは、亡くなっていた。何の前触れもない死であった。

ペニーは、フォダークウィングのお墓の前で父親に頼まれて祈りを捧げる。
 「全知全能の神よ。我々に善悪などは分かりませんが、この子の不自由な体が不憫でした。
でも主は埋め合わせもなさった。動物と親しむすべてと血と優しさを授けられたのです。
この子は不自由とは無縁の世界に召されました。この子は主に足を伸ばしていただき自由に歩き回ると我らは思っています。この子に赤い鳥とリスかアライグマをお与えください。
この子が寂しくならないように。天国に数匹動物を置いてください。御心(みこころ)の行われんことをアーメン。」

 その葬儀が終わった後から、嵐が始まり、1週間以上も雨が降り続く。

雨の中、収穫物を家に運ぼうとするが・・・・。

農作物は腐ったり、カビが生えてしまったりで、この水害により、大きな損害と被ることになってしまった。

家の前が水につかり悲惨な有様だ。

 ペニーはいう「人は徹底的に打ちのめされるとやり直す気力も失ったと思いがちだ。でも、残されたものが少しでも、それに感謝しよう。」

 太陽だ

 「母さんいい天気だ。死人も目を覚ますぞ。トウモロコシやタバコをまくよ。
 ササゲ、ジャガイモ、青菜もだ。母さんどんどんまくよ。世界中に種をまきそうね。
  そうしたいよ。ジョーデイ 全部まくからな。タバコが育てば、水くみが必要なくなる。(井戸は家から1kmもさきにあった)
  家の前に井戸が出来るぞ。今日は忙しかったな。」

 オリヴァーとツウィンクの結婚式が行われることになり、バクスター一家は待ちに出かけていく。
 結婚したオリヴァーとツウィンクは船でボストンに旅立つ。

しかし、結婚式から帰ってきた一家を待っていたのは育てた農産物を食い荒らす成長した子鹿だった。

 その子鹿の食害を防ぐために一家は様々努力するのだが・・・・。

 畑を開墾しようとして腰を痛めてしまうペニーに変わって、ジョディーはトウモロコシの苗が育つ前に、鹿が入れない背の高い柵を作れという父との約束を果たすのだが・・・・

【感想】
 アメリカの開拓時代という古い時代を描いた映画であるが、厳しい大自然の中で起こる苦難を乗り越えていく少年の成長を題材にした映画である。素晴らしい内容だと思う。
 少年達は動物を愛玩するけれど、生活がかかった家庭の中では母親のような割り切りは起こりうる話である。
 また、父親が小鹿とジョディーのために、もう少し頑張るべきではないかという意見も多いようだ。無論一理ある。
 しかし隣のフォルスター家の言葉を借りればペニーは「農業の天才」といわれているし、バクスター島(我が家)を無から作り上げ才能は評価しなければならないと思う。精神面はしっかりとしている。

 ジョーディについては、子鹿との日々をどう過ごしたのかはもちろん大切だが、同年代の子供達との付き合いもどのように描かれているかが大切だ。まず、夜の戸外の小屋で親友のフォダークウィングと足が不自由になった時の話を子供らしく聞き出して、話をする心の優しさを感じるし、反対にペニーと馬車で町に買い物行った時、店の娘、ペニーのいうジョーディの恋人?ユーラリーが奥から出て来たので挨拶をするようにといわれるが彼女がジョーディーに向かってベロを出したり、アカンベーをしたりするので彼女に向かって芋を投げつけ、それが尻に当たる。今度はペニーが彼女に対し謝れという。そうすると父親の店の主人からサービスとしても貰っていたハーモニカを突き返して外に出て行くというシーンがある。ジョーディの毅然とした態度は一人の人間として、また男として、なかなかだ。ユーラリーの父親さえも「威勢が良くて結構」の褒め言葉が・・・。これらの話の方が、映画の中ではずっと輝きを見せる。

 今後、ジョディーの将来を考える時、農業者として生きていこうという強い意志がある限り、この大きな精神的な痛手を乗り越えて、立派な人間としての明るい未来が待っているものと思える。

〈完〉


チャプリン 映画「モダンタイムス」

2021-03-04 | 映画

                           NHK BS シネマ 2021/3/3

 資本主義社会や機械文明の発展した社会を題材にした作品で、労働者の個人の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を笑いで風刺した作品。1936年の製作だが、現在でも通じるような発想の斬新さとチャプリンの演技力に驚く

【製作・監督・脚本・音楽】チャールズ・チャプリン
【撮影】ローランド・ドザロー、アイラモーガン
【出演】工員・・・チャールズ・チャプリン
          少女・・・ポーレット・ゴタード

大規模な製鉄工場で働くチャーリーは流れてくる部品のボルトをスパナでひたすら回し続けるという単純作業をする仕事をしている。

昼休みの食事時間を短縮し、仕事の効率を上げるために作られた「自動飲食マシン」。チャーリーはその実験台にさせられ、散々な目に遭う。

 誤ってベルトコンベアーの別のルートに吸い込まれると歯車の中に取り込まれてしまう。中央の歯車の下にいるのがチャーリー。映画だからだが、大けがか死亡かというところである。チャーリーは次第に精神を病み、病院に入れられる。
 その後は、ふとしたことから警察に捕まったり、釈放されたり、再び拘置所に入れられたりしながらも、造船所の技師の助手、デパートの警備員、キャバレーのウェイターなどの仕事を行うが長続きしない。
 しかし、護送車の中で知りあったパンを盗んだ浮浪少女ポーレットと意気投合する。二人のために家を建てるという夢を心に持つようになり、仕事を求めようという気持ちになる。

 せっかく少女ボーレットの踊りの道が開け、チャーリーも見世物の「ティティナ」を歌って成功し、未来が開けたと思ったが鑑別所から逃げ出したボーレツトに追跡の手が及ぶ・・・・・
 それだけにラストシーンは美しく感動的である。
【感想】
 無声映画からトーキー映画にと映っていく過渡期の作品、チャーリーが「ティティナ」を歌うまでは、この映画では人物は言葉を発しない。チャプリンが初めて肉声をフィルムに入れ込んだ作品である。。 
 製作・脚本、演出、監督とこなし、アクロバテックな動き、踊り、歌と彼の持つ全てをつぎ込み映画にした才能を称えずにはいられない。現在になっても惹きつけられる作品である。


映画「ロープ」 ・・・ ヒッチコック監督作品

2021-02-13 | 映画

                                                                                                                             NHK BS シネマ 2021/02/10

 実話をもとにした舞台劇を映画化したサスペンススリラー。2人の青年、フィリップとブランドンは、自らの優秀さを証明するために完全犯罪をたくらみ、友人デイヴィッドをロープで殺害、部屋に死体を隠す。2人は、その部屋に被害者の親や婚約者を呼んでパーティをするが、大学教授のルパートは2人の異常な行動に気づく・・・。

【監督】アルフレッド・ヒチコック
【原作・戯曲】パトリック・ハミルトン
【脚本】アーサー・ローレンツ
【脚色】ヒューム・クローニン
【撮影】ジョセフ・バレンタイン、ウィリアム・V・スコール
【音楽】レオ・F・フォータブスタイン
【出演】大学教授のルパート ・・・ ジェームス・スチュアート
    青年 ブランドン・ショー ・・・ ジョン・ドール
    青年 フィリップ・モーガン ・・・ ファーリー・グレンジャー
      デイヴィッド・ケントレー ・・・ ディック・ホーガン
【製作国】アメリカ 1948年 カラー 1時間22分
【原題】ROPE

 舞台はニューヨーク、摩天楼を見渡せるアパートの一室となっている。これは周辺を撮した導入部、二人の人物のうち新聞を持って歩いている男性がヒッチコック監督である。

 アパートの一室にカメラを据え、上映時間とドラマの進行時間を一致させ、映画全編をワンシーンの映像で描いた斬新な演出の異色作である。
 もとは舞台劇であったのものを映画化した。
 当時のフィルムは10から15分の連続撮影が限界だったので、実際には背中やチェストの蓋を大写しにするカットを入れ繋がっているように演出している。このため、映画そのものも1時間22分と短くなっている。

  パーティはピアニストのフィリップの送別会であり、左のピアノ演奏もあり、料理やシャンペンなどの飲み物が並べられた。料理を飾ってあるチェストには死体が入れられている・・・。

  しかし、いつまで経ってもデイビットが来ない。連絡には几帳面な筈なのにと心配した父親が息子と連絡しようとする・・・・。様々な事柄が起こるが,このパーティはつまらないと結局、送別会は解散となる。

  招待客が帰る中、 この場にいないデイビットのイニシャル入りの帽子を間違えて出されたルパートは、デイビットの死を確信する・・・。

【実話について】
 1924年シカゴで起きたロープ&レオポルト事件で、ロープとレオポルトはシカゴ大学の学生であり、同性愛の関係にあった。共にニーチェの超人思想の信奉者で、どちらも非常に知能指数が高く、逮捕される恐れを一切感じることなく完全犯罪を成し遂げる力があると信じていた。ローブの隣人の金持ちの遠縁にあたる16歳のボビー・フランクスをレンタカーに誘い込み、殺害。身代金目的で殺害したように工作した。
  二人の前途は洋々とした未来が開けていて殺人などする理由は全くなかった。
  あまりにおぞましい事件なので、当時はアメリカ中を騒がせる事件だったようだ。殺人が無期懲役、誘拐が99年の執行猶予の刑となった。弁護士が死刑廃止論者であり、懸命な弁護を続けたために死刑を免れたらしい。
 【感想】
   この映画も同じように、おぞましいストーリーである。死体を隠した部屋で死者との親近者と共に、パーティを行うなどは通常の神経の人間には出来ないだろう。
 それだけにストーリー展開はどうなるのだろうかと興味をそそられる。
 ヒチコックは、そうした点を上手く演出して、彼らしいサスペンスに仕上げている。
  ラストのシーンはなるほどと納得させる内容になっていた。
 ヒチコック監督の初めてのカラー映画ということだが、とても美しい画面であることが驚きだ。
  【映画の題名】
 ロープという題名は実話の人間ロープから取ったのか、殺害に使ったロープなのか?その両方なのか?どこにも載っていなかったので私には、今のところ分からない。


裏窓・・・ヒチコック監督作品

2021-02-05 | 映画

                                   NHK BS シネマ 2021/02/03

 カメラマンのジェフは事故で足を骨折し、車椅子生活を余儀なくされる。そんな彼にできる唯一の楽しみは、カメラの望遠レンズなどを使って裏窓から見る隣のアパートの住人達の人間模様の観察・「覗き」であった。

【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【原作】コーネル・ウールリッチ
【脚本】ジョン・マイケル・ヘイズ
【撮影】ロバート・バークス
【音楽】フランツ・ワックスマン
【出演】
 カメラマン・ジェフ・・・ジェームス・スチュアート
 ジェフの恋人リザ・・・グレース・ケーリー
 看護師ステラ・・・セルマ・リッター 他
【原題】REAR WINDOW
【製作国】アメリカ 1954年 カラー 1時間53分

 向かいの部屋では、若い女性が下着姿で踊りを踊ったりする。
 ただし覗きは大昔は眼をくりぬかれる刑、当時でも6カ月の矯正施設送りだと看護師ステラはジェフに告げる。
 主人公も最後には窓から落ち、命は取り留めるものの右足だけだったギブスが両足にはめられることになる。これは、原作者がジェフに対して行ったペナルティーだとか・・・。

 

 また、作曲を行う男の部屋があり、この映画の曲が聞こえてきたりもする。こちらを向いているのはヒチコック監督であるとのこと。
 他に、新婚の夫婦や独り者の女性など様々な人間模様が映し出される。

 骨折中ジェフの世話をしている看護師ステラは、覗きよりも恋人リザとの結婚を考えるべきだと釘を刺す。ジェフはリザを愛していたが、ライフスタイルの違いから結婚を躊躇していた。
 リザ役は、後にモナコ王妃となったグレース・ケーリー。その華麗な美しさが印象的である。果たして、この二人の恋の進展は如何に? それは、この映画のラブロマンスでもある。
【左 ジェフ(ジェームス・スチュアート)、右 リザ(グレース・ケーリー)】

 ある日、いつも口喧嘩が絶えなかった向かいのアパートの中年夫婦の妻が突如として姿を消す。セールスマンの夫ラーズの怪しい挙動を観察していたジェフは、数々の状況証拠から殺人事件ではないかと疑惑の目を向ける。

    肉切り包丁を新聞紙に包む

 トランクをロープで縛る

ジェフ「昨夜から妻の姿が見えないんだ、夫婦げんかや夜中の外出、包丁、のこぎり、ロープで縛ったトランクもな」

 始めは懐疑的だった恋人リザも興味を示すようになり、看護師ステラとともに調査に当たる。ジェフは友人の刑事ドイルに電話をして来てもらう。

 事件を認めようとしないドイルの調査結果により、ジェフとリザは意気消沈しながらも事件の終わりを受け入れざるを得なかった。
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 しかし突然響いた泣き叫ぶ声。アパートの住人が飼っていた子犬が誰かに殺されてしまったらしい。住人がいっせいに顔を出す中、ラーズだけが現れないことに気づいたジェフ。ジェフは庭の花畑を掘っていた子犬を殺害したのはラーズだと確信し、その理由に迫ることに。
 事件は急展開し、一歩踏み込み、確たる証拠を掴もうとするジェフとリザ2人に危機が迫る……。


【感想】
  人の私生活をのぞいてみたいという人間的な欲求を満たすために、映画に映る建物全体をセットにしたという効果は日常感を出しながらもよく伝わって来る。様々な人間模様を見ることが出来る上に、サスペンスドラマとして作り上げたヒチコック監督の手腕は見事である。
  主人公のジェフがギブスを付けており、自由に歩くことが出来ず事件が思うように進展しないイライラも良く計算されていて、それが事件の終盤に向けての緊迫感や速度感・・・そして迫り来る恐怖感を際立たせていると思う。


映画「鳥」・・・ヒチコック監督作品

2021-01-29 | 映画

                                   NHK BS シネマ 2021/01/27

 突然、人間を襲い始めた鳥たち・・・。華麗な映像テクニックを駆使して理由なき恐怖を描く傑作アニマル・スリラー。

 サンフランシスコのペットショップで出会った弁護士のミッチに好意を抱いたメラニーは、ミッチが母と週末を過ごす小さな漁村(サンフランシスコ州ボデガ・ベイ)に彼の妹キャシーの誕生日のプレゼントの小鳥(ラブ・バード)を持ってひそかに訪れるが、ボートの上でカモメに襲われる。その後、次々と鳥たちが人間を襲い、次第に激しさを増していく。村はとうとうパニック状態に。メラニーが来てから起きるようになったと彼女は「魔女」呼ばわりされる始末。ブレナー家も鳥の大群に二度も襲われることになる。そしてメラニーもついに大けがをする。
 メラニーとブレナー一家はボデガ・ベイの周辺地域から脱出できるのか・・・。

【製作・監督】アルフレッド・ヒチコック
【原作】      ダフネ・デュ・モーリア
【撮影】      ロバート・バークス
【音楽】      バーナード・ハーマン ・ レミ・ガスマン・オスカー・サラ
【出演】      社交界の名士・・・メラニー・ダイエルズ・・・ティッピ・ヘドレン
       弁護士 ミッチ・ブレナー・・・ロッド・テイラー
       ミッチの母親 リディア・・・ジェシカ・タンディ
       ミッチの妹キャシー・・・ヴェロニカ・カートライト
       小学校の先生 アニー・ヘイワース・・・スザンヌ・プレシェット
 【製作国】アメリカ 1963年
 【原題】THE BIRDS 、 カラー

 メラニーはサンフランシスコから100Km離れたボデガ・ベイへスポーツカー(アストンマーチン)を運転して訪れる。

 さらに、ブレナー家へは裏口からこっそりと行くために、モーターボートをひとりで運転していくが、帰り道の桟橋でカモメに襲われて怪我をする。メラニーの訪問に気がついて追いかけてきたミッチがメラニーの手当てをする。

暖炉から大量の雀が部屋に侵入してブレンダー家は騒乱状態になる。その後、鳥たちは去って行く。

烏やカモメでびっしり埋まったブレンダー家の周辺

 鳥への恐怖という映画の主題がありますが、メラニーとミッチの恋愛関係、ブレナー一家、特に息子離れが出来無い母親やキャシーと小学校などの雰囲気。そしてミッチの元彼女のアニーとメラニーの対話、ボデガ・ベイの人々がこの事件についてどのように考えているか、などなど人間関係もよく描かれているといえます。これも名作と言われる所以でしょう。

  製作された1963年というと今から58年前、映画の全てがアナログで作られていたことを考えると、特撮がいかに優れていたかが分かります。多くの鳥が集まっているシーンの撮影もどうやって取ったかと感心せざるを得ません。
 襲ってくる鳥が、カモメであったり雀であったり、カラスであったりしますが、カラスは、まれに本当に人を襲うことがあるので怖いですね。まして、映画の中でずらりとカラスが並んだ様子はまさに恐怖そのものです。
 また、日本ではまだ自家用車を持っている人は限られていたのに、当時のアメリカ社会は進んでいるように感じました。