5月15日(日) NHK-Eテレで放映されたクラシック音楽会「N響 第1831回」でカティア・ブニアティシヴィリが登場し、「シューマンの
ピアノ協奏曲」をパーボ・ヤルヴィ指揮で演奏しました。
シューマンのピアノ協奏曲は私の最も好きな協奏曲の一つでもあります。LPでのリヒテル、ルプー。CDでのツィマーマン、アルゲリッチと親しんできました。
2年前の8月18日にNHK BSプレミアムでカティア・ブニアティシヴィリの「森の中のコンサート」が放映され、素晴らしい容姿と演奏テクニックで私たちを魅了してくれました。
パーボ・ヤルヴィと音楽的に親密な関係にあるという話があり、いつかパーボ・ヤルヴィが共演者として連れてくるのではないかと思って
いましたが予想以上に早く実現しました。世界の人気ピアニストをいち早く連れてくるとは流石N響首席指揮者です。
「森の中のコンサート」・・・めいすいの写真日記(2014 年8月18日)
番組の中でパーヴォ・ヤルビィとカティア・ブニアティシヴィリの対話ありましたが、シューマンのピアノ協奏曲について、とても興味深い
話がありましたので、ここに載せてみることにします。
●パーヴォ×カティァ シューマンピアノ協奏曲についての対話
P:この協奏曲での共演には、良い思い出があるね。フランクフルト放響とのツァーの様子が動画サイトに上げられているけれど、クラシック音楽では一番といえるほどの人気で100万回以上再生されているよね。
K:あなたのおかげね。
P:違うよ君のおかげ。でも、それからは弾いていない?
K:そうなのよ。だからちょっと怖かったわ。長いブランクがあったし。普段のレパートリーにある曲じゃないから。でも、あなたとの共演はいつも楽しい。この曲のフレーズを生き生きと繊細に演奏するのは、とても難しいと思う。テンポや表情が変わる時には間髪を入れずに変えなくてはいけない。シューマンの性格もそうだったから、貴方はそれを巧妙にやってくれる
P:僕はシューマンが大好きなんだ。交響曲も声楽曲もね。この曲はとても室内楽的で指揮者なんていらないと思えるよ。オーケストラがピアノの音を聞いてついていきクラリネットソロのときには君がそれを聴いて・・・そんな絶妙なやりとりがうまくいかないとこの曲はうまくいかない。チャイコフスキーやブラームスでさえどこか交響曲的だけど、シューマンは・・・演奏家がお互いに聞いて一体になり、柔軟に反応しないといけない。
K:ちょっとショパンみたいね。
(この曲の特別な思い出は)
K:最初に聴いたのは子どもの頃でした。母がカセットテープを買っていたんですが、ジョージアで手に入るのはオリジナルじゃなくてコピー品。
合法じゃなかったわね。でもお店で売られていて、母は出来るだけたくさんの音楽を手に入れようと買ってきて、その中にシューマンがあったのを覚えています。姉と寝る前にテープを聴いていました。お気に入りはモーツァルトのレクイエム。毎晩それを聴く7,8才の女の子なんて魔女みたいよね。父は「明日私が死んだら」お葬式でかけても良いけど、今日はやめて」と。かなり参ってたみたいです。シューマンもその中にあったので聴くといつも当時を思い出します。シューマンの音楽はとても純粋なので子どもの時代の思い出にあっているかも。悲劇的なところも多いけれど悲劇の中にも純粋な側面がある。
P:僕はシューマンの音楽はとても詩的だと思う。
例えばマンフレッド序曲やゲノヴェーヴァ」などの大曲は実話に基づいていたり、文学作品を描いているでしょう。この協奏曲でも、文章や歌詞はなくても物語が感じられる。オーケストラにいつもこう言うんだ。ただ2つの音を出すのでなく、「クララ」と聞こえるようにと。クララとシューマンを思い起こすことで優しさが表れる。2人の物語が真実じゃないとしても、いい話だしイメージがわいてくる
K:私は真実だと思う。 情報より直感に頼る方が作曲家をよく理解できると思うわ。この協奏曲ではシューマンの恋心が感じられる。これは恋の音楽よ。カデンツァで統合失調症的なところが出てきている以外はね。これは私の主観的なイメージなんだけど、恋をしている彼の目にはすべてが素晴らしく見えているの。ただシューマンはふつうの恋する男性になりたいのになれない。常軌を逸した天才だったから。精神的な問題を抱えていたと言われるけど何が本当かは分からない。とにかく恋をしていてすべてが美しく見えているのにカデンツァだけは精神的に不安定なところが顔を出している。この恋は長く続かない運命だという強迫観念があるんだわ。
「シューマンのピアノ協奏曲は恋の音楽」というのは女性ピアニストらしい感覚。パーヴォの「オーケストラにいつもこう言うんだ。ただ2つの音を出すのでなく、
「クララ」と聞こえるようにと」いうのもおもしろい。
お気に入りはモーツァルトのレクイエム。毎晩それを聴く7,8才の女の子なんて魔女みたいよね。「レクイエムの怒りの日」を聴いている姿を想像すると小さい時から人と違う感性を持っていたのかもと思います。
パーヴォヤルビィ指揮 N響と「シューマン作曲 ピアノ協奏曲」で共演するするカティア・ブニアティシヴィリ
観客の拍手に応えるカティア・ブニアティシヴィリ。
演奏は第一楽章の出だしの部分から迫力ある音で始まりました。カティア・ブニアティシヴィリの音は女性らしい流麗な音と女性とは思えない
力強い音、加えて超絶技巧的な演奏力もあります。それを支えるパーヴォヤルビィとN響の演奏も素晴らしいものでした。
それにしても素晴らしい美貌とスタイルです。パリ在住ということで服装のセンスも抜群です。「全世界の女性の敵」かも知れませんね。