フランコ・ゼフィレッリ(1923-2019)の映画は、「ロミオとジュリエット」(1968)、「永遠のマリアカラス」(2002)を含め素晴らしい。
彼はメトロポリタン歌劇場(MET)や欧州各地の歌劇場で活躍した。METの「ボエーム」や「トゥーランドット」のプロダクションは、現在も使われている。映画監督としてもオペラ演出家としても才能豊かであった。また、時代考証に忠実で豪華な舞台をお金をかけて作り上げた人でもあった。
映画「椿姫」は1982年の作品なので38年前ということになる。。
ヴィオレッタ・・・テレサ・ストラータス
アルフレード・・・プラシド・ドミンゴ
ジェルモン・・・コーネル・マックネル
ジェームス・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
ストラータスのヴィオレッタは舞台をよく動き回り熱演しています。声は録音が古いのでなんともいえないが、コロラツール・ソプラノとしては、よく知られていた人のようだ。
ドミンゴは当時41才、三大テノールの一人といわれたときそのものであり、アルフレードの魅力を十分に表現している。
この映画で注目すべきなのはレヴァンインの指揮するメトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団が演奏を行っていること。レヴァンインは、1971年MET初デビュー、1986年からは芸術監督に就任した。METと関わりの深いドナルド・キーンは、「レヴァインの就任する前はオーケストラのレベルは酷いものであったが、今やオケの響きが格段に精妙になり、コンサートオーケストラとしても一流となった」といっていた。
この作品では、映画の長所を上手く利用して効果を上げている。
第1幕 ヴィオレッタのサロン
大きなシャンデリア金色の燭台には多くのろうそくがあり光り輝く、豪華な室内、いくつもの部屋をヴィオレッタは歩き回る。円形の広い食卓には酒類と数々の料理が並べられている。そこで「乾杯の歌」か歌われる。カメラはいろいろな角度から映し出す。
アルフレードはサロンから外に出ると雨が降っている。
第2幕 パリ郊外の別荘
出入りは2頭立ての馬車。屋敷内も馬で移動。敷地内には、大木があり、美しい花々が咲き乱れ、白い鳩が十数羽も飼われてた、しゃれた鳩舎がある。
小川が流れ、そこに架かる丸木橋があり、渡ろうとしてヴィオレッタと小川に落ちてしまう。アルフレードが助けに飛び込み、抱擁する。
第2場 ヴィオレッタの友人フローラのサロン
こちらも豪華な室内である。そこで、行われるジプシーの踊り、カードの賭博を行うお金が拡げられている広いテーブルに乗りジプシーが一人、裸足で舞う。
闘牛士の踊りも素晴らしい。何人かが闘牛士の服装で登場し、赤い布(ムレタ)をなびかせ、牛の頭をつけた人も登場し、ジプシーとともに盛り上げる。
第3幕
ヴィオレッタの静養するパリのアパート
復活祭構えの通りを通るのをカメラは映し出す。アパートの窓から顔を出すヴィオレッタ。
もう一つ、ゼフィレッリが演出したのが、
第1幕への前奏曲と第三幕への前奏曲そして第三幕の一部に登場する、作業員と思われる少年が登場すること。もう一人ヴィオレッタを見守る人がいるということ・・・?
以上は映画でなければ、オペラの舞台では表現できないことだと思う。映画とオペラを知り尽くしたゼフィレッリの面目躍如というところである。
最後に付け加えると、このDVDは輸入盤しかなく、日本語の解説が付いていないということである。私は数多くオペラ「椿姫」は見ているので、支障は少ないとも言えるが、やはり、この点は少し残念だ。