ソメイヨシノ (染井吉野) はエドヒガン系の桜とオオシマザクラの交配で生まれたサクラの園芸品種です。
江戸末期から明治初期に、江戸の染井村(現在の東京都豊島区駒込)に集落を作っていた造園師や植木職人達によって育成され、売り出したのが始まりとされています。
ソメイヨシノは、山桜と異なり、花の咲くときには葉が出ていないので、花だけ。これがあでやかに見えることから人気が出たようです。
また、ソメイヨシノには実がなりません。つまりサクランボは出来ないと言うこと。このため、挿し木などにより増やすことになります。
染井という地名の残る、ここ東京都営の「染井霊園」(東京都豊島区駒込5丁目)には約100本のソメイヨシノが植えられており、発祥の地とされています。
染井霊園には、高村光雲、高村光太郎、智恵子のお墓があります。
あどけない話 高村光太郎
智恵子は東京に空がないと言ふ、
ほんとの空が見たいと言ふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
レモン哀歌 高村光太郎
そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白いあかるい死の床で
私の手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関ははそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう
智恵子抄より
PENTAX K5 + PENTAX DA18-135mm F3.5-5.6で撮影