マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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上深川八柱神社の造営奉祝祭

2014年11月12日 07時17分51秒 | 奈良市(旧都祁村)へ
かつて上深川村は隣村の針ヶ別所村・小倉村・下深川村・萩村・馬場村とともに山辺郡に属していた。

平成17年4月の市町村合併によって旧都祁村に属する上深川は奈良市に編入された。

平成25年の1月に八柱神社の造営委員会を立ち上げた奈良市上深川町。

八柱神社の造営は18年に一度の本殿造り替えの一大事業である。

伊勢神宮の式年遷宮は昨年の平成25年に行われた。

内宮、外宮の二つの正殿の他、14の別宮などの社殿を造り替えて神座を遷す20年に一度の大事業である。

ニュース報道或いは特集を組むなど報道機関は盛んに放映していた。

一方、世界遺産に登録されている春日大社では平成27年3月の仮殿遷座祭を経て平成28年11月には本殿正遷宮が予定されている。

春日大社も同じように20年に一度の大事業をされるが式典の正式名称は式年造替である。

上深川の氏神さんは八柱神社。

なぜか判っていないが、18年周期で行われている造営事業である。

氏子たちの話しによれば、山添村片平の氏神さんも八柱神社。

当地も18年周期に行われると云う。

他所においてもそのような事例があるのだろうか。

探してみれば菅生は12年周期だった。

地域によっては12年もあれば18年もある造営周期に興味をもった。

前回は平成8年に行われた御造営事業。

それから18年経った神社は本殿、参籠所、玉垣、手水舎などなどを改築工事された。

造営委員会を立ち上げて、村の総会で決定した造営。

平成25年の3月には仮殿を祀って氏神さんに遷ってもらった。

それから順次、改築工事に移った。

すべての工事が終わったのは9月である。

翌月の10月には鮮やかに蘇って新しくなった本殿に遷した。

造営の儀式は平成26年の4月。

23日には18年ぶりに行われる祭典儀式を滞りなくするためリハーサルも行っていた。

上深川に始めて訪れたのは平成14年の10月12日だった。

題目立が演じられる様子を拝見したく出かけた。

その後の平成16年、18年、23年にも拝見した。

平成23年には演者の練習にあたる「ナラシ題目立」も拝見したことがある。

上深川の年中行事は題目立の他、神社行事である8月の風祈祷、12月の注連縄掛けもあれば、元薬寺で行われる行事も取材したことがある。2月の初祈祷乱上柳のオコナイ、3月の念仏講、7月のゲーである。富士講の営みである富士垢離も取材してきた上深川。

顔馴染みになった人たちと接することが多い。

3月7日にメールが送られてきた。

お彼岸に関する事項であるが、元薬寺では彼岸の行事は存知していない。

もしかと思って度々お世話になっている送り主のOさんに電話をした。

話しを聞けばどうやら間違いメール。

親族関係者に送るべきメールが誤って私にも送られたのである。

その際に伝えられた八柱神社の造営事業。

4月26日に行われると教えてくださった。

正式にご連絡をいただいたのは4月6日だった。

なんとか都合をつけて立ち寄ることを伝えた。

4月23日にはリハーサルを終えた直後にその様子も伝えてくださったOさんに始めてお会いしたのは平成16年の2月だった。

それ以来度々お話を伺う機会を得て、上深川で行われる数々の行事を取材してきたのである。

祭典当日は青空が広がる晴々とした日になった。

村人誰しも心待ちにしていた造営の祭典に相応しい天晴れ日だ。

ハレの日は村の祝いの場。

目出度い日に届けた祝いの酒を持参してきた。

式典を教えてくださったOさんは造営委員を勤めている。

題目立保存会会長のTさんは造営委員長。

いつもなら「おーい、写真屋」で応えるフレーズもなく、晴々とした笑顔で手を握る。

長老たちもお元気な姿をみせる。



晴れの最低に相応しい正装で集まった村人たち。

和服姿の婦人たちもみられる。

村から出た外氏子もこの日は装ってやってきたハレの祝いである。



本殿のほか、末社の八坂神社、厳島神社も美しくして、高々に御造営の日の丸御幣を掲げている。

竹を立てた鳥居にも日の丸御幣を括りつけていた。

受付を済ませて登った祭典会場には氏子たちが作法をする槌もあれば、紅白の綱も準備されていた。

槌は前回同様の文様。

18年前に祭典で受け取った槌は会所や各戸で大切に保管されていた。

それらを見本に作ったという槌には朱書きされた宝珠文様がある。



八柱神社の神宮寺は元薬寺。

上深川ではお寺の行事も継承されてきたのである。

八柱神社の宵宮行事に「題目立(だいもくたて)」が奉納される。

ユネスコ無形文化遺産に指定された神事芸能「題目立(だいもくたて)」は、数え年17歳の青年たちが演技する伝統奉納である。

貴重な伝統行事に着用する衣装は文化庁、県、市の支援を受けて新しくなった。

その姿で披露するのはこの年だ。

新しくなった本殿下で演じられる。

造営祭典は三部構成になっている。

一部は「御造営奉祝祭」で、手水、参進、開式の辞、修祓、斎主一拝、御扉開扉、献饌、祝詞奏上、奉祝氏子幣奉幣、弓矢清祓い、紅白曳き綱、槌打神事、棟梁寿詞奏上、御神楽奉納・太神楽奉納、玉串奉奠、撤饌、御扉閉扉、斎主一拝、閉式の辞で終える。

次の二部は「造営奉祝式典」。

列席された関係各位の祝い・お礼のご挨拶である。

開式の辞、造営委員長挨拶、事業報告、来賓挨拶、外氏子代表挨拶、感謝状贈呈(工務店代表)、閉会の辞で終える。

三部は「祝賀式」で、太神楽、御供撒、鏡割、乾杯、直会を経て散会で終える。

祭典斎主は山添村室津の奥中弥寿司宮司だ。

兼務社にあたる各地域で行われる神事行事でお世話になっている。

住まいする室津のお渡りにも来てほしいと願われた。

奥中宮司が写し記した大正4年調の『東山村神社調書(写し)』は私にとって貴重な史料になった。

手元にもっておられた写し帳を拝見したのは平成18年12月23日のことだった。

山添村室津の戸隠神社で行われる申祭り取材のときだった。

神職を勤めることになった宮司は精魂を込めて村に保存されていた大正4年調の『東山村神社調書』を判読されて書き写したのである。

全編を写し終えたのは平成18年の11月だった。

拝見したできあがったばかりの調書写しはその後も見直しをしてきたと話す。

この史料は山添村の六所神社のマツリに出仕される峰寺・松尾・的野の三カ大字の廻りで奉納されるジンパイで参照させてもらった。

六所神社で行われてきた古い作法や経緯も参考にさせていただいた貴重な史料は、県の緊急伝統芸能民俗調査に於いて、相当な箇所で引用させていただいたありがたい調書である。

元文書は筆で書かれた文字。

漢字は特に判り難いく、その後も検証を続け、一部は新しく書きなおしたと話す。

御造営祭典のメインは紅白の曳き綱と槌打神事。



長老らがその作法をする。棟梁が「エイ エイ エイ トー」と掛け声すれば、曳き手が「エイ エイ エーイ」で応えて綱を曳く真似をするのだが、棒立ちであるため何をしているのか判り難い写真になった。

数か所で県内事例を取材したが、いずれも同じようで判り難い絵面になってしまう。

次は宝珠の文様がある木槌を打つ。



棟梁が掛ける「せんざい トー」に合わせて、一同は揃って「オー」と返し、トンと槌を打つ。

「まんざい トー」で槌打ちトン。

「えいえい トー」で槌打ちトン。

「せんざい」は「千歳」、「まんざい」は「万歳」で、「えいえい」は「永々」の意がある。

村が永遠に栄えるよう、益々の繁栄を願った目出度い詞の槌打ちの作法である。

上深川の八柱神社の御造営の正式名称は御造営奉祝祭。

「造営」と書いて「ゾーク」と呼ぶ。

奈良大和の東山中では一般的な呼び名だが、西側の葛城山系ではそう呼ぶことはない一部修理で継いでいる。

棟梁の寿詞奏上に続いて御神楽と太神楽を奉納される。



本殿下に設えた仮舞台で舞うのは石上神宮の巫女さん。

奉納神楽の「豊栄の舞」が美しい。



改築に伴って石垣造りにした。

植生している大杉の根っこが起こす土崩れの防止を兼ねてほぼ全面に石垣で囲った。



次に登場したのは室生神楽保存会が演じる奉納太神楽の「鈴の祓い」だ。

背景に石垣を入れたのは造営の儀式に奉納された状況を記録するためである。



今年の題目立は新調された装束となってこの場で演じられる。

二部は「造営奉祝式典」にお礼の挨拶された造営委員長。

「少子化になった上深川。氏神さんのご加護を受け継いで村が発展してきた。」と述べられた。

次に挨拶されるⅠ治委員長も「18年に一度の造営の詞に・・・、本殿および末社の八坂神社、厳島神社も新しくなった」と御礼の挨拶をされた。

御造営の祭典は「御造営奉祝祭」、「造営奉祝式典」、「祝賀式」の三部構成。

祝いの詞や挨拶などの「奉祝式典」に続いて、再び登場する室生神楽保存会が演じる獅子の舞。

奉納と違って氏子のために舞いを演じる。



「鈴祓い」から口に銜えた獅子が舞う「剣の舞い」に転じる演技には高々と獅子頭をあげる所作がある。



黒毛の獅子舞が終わって、次に登場する獅子は赤毛。



演目は「荒獅子」に移った。



太神楽を終えて御供撒(ゴクマキ)に移った祭典。



モチ搗きした一石二斗のモチは桶に入れていた。

一段高い石段より撒く紅白のモチが境内に飛んでいく。

そうして、鏡割、乾杯を経て直会に移った。

(H26. 4.26 EOS40D撮影)


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