昨日は8月23日から27日まで、渋谷の「伝承ホール」で上演中の群像劇「獅子」を、夫と観てきました。
『激動の昭和を舞台に、戦争という渦に巻き込まれていきながらも、それぞれの運命を切り開くべく必死にもがく若者たち。
そんな若者たちの夢や恋、青春を、時代という波は容赦なく呑み込んでいく。
日本本土、満州・中国大陸、太平洋戦線を網羅した一大大河演劇。』
(チラシより)
観に行く切っ掛けとなったのは、8月14日の東京新聞に掲載された紹介記事。記事は『93歳の俳優・矢田稔さん 若い世代に戦争伝える』の見出しと共に、『少年期に歌手として戦意高揚のための童謡を歌い、戦後は俳優・声優として活躍してきた矢田稔さんが5年ぶりに舞台に立つ。出演するのは、戦時期の映画界を描く演劇で、戦争体験や長い俳優キャリアから白羽の矢が立った。』と、矢田さんに焦点を当てた内容になっていて、(長年の知人として、)これはもう是非とも見に行かなくては!ということになりました。
公演はダブルキャスト制で、矢田さんは「飛翔班(Aグループ)」で主役「昭和を代表する映画監督・進藤栄太郎」の<現代>役を演じます。(<過去>を演じるのは平道元喜さん(写真・右)。彼も素敵でした。)
戦争の時代を何とか生き延びて、再び映画を撮れるようになった進藤監督が、あの戦争を描く映画を撮影中、若い二人の兵士が夕日を眺める場面で、「夕日の赤が違う!」と痛切な声を上げる。そこから舞台は暗転し、時代は過去に戻って行きます。
そして、チラシの文章にあるとおり、希望を持って映画作りをしたり、友人とビールを酌み交わしたり、ほのかな恋心を抱き合ったり、、、と今の私たちと変わらない若者たちの穏やかな日常に、次第に戦争の影が落ち始め、やがて夫々に赤紙が届けられて、「バンザイ」の声に送られて、戦地に送られていく、という状況になります。
その後、舞台では、南京虐殺、特攻、沖縄戦とガマの悲劇、東京大空襲、広島原爆、、、と、私たちの知るあの戦争の悲惨が次々に繰り広げられ、青春の只中にあるはずだった彼らも巻き込まれていく様が描き出されます。
ポツダム宣言受託後に、ソ連軍の占領阻止のために命を捨てると決めた守備隊の最後の戦いで、進藤が周りの友人兵士たちと共に銃弾を浴びて倒れるところで、舞台は再び暗転。舞台には、怪我はおったものの生き延びた<現代>の進藤栄太郎監督が、再び登場します。
という感じで、3時間にわたり、あの戦争の実相=悲惨を突き付けられ続けて、とても疲れましたが、一方で戦争の最中にも人々は、今と変わらず友情や愛情を大切にし合って、一生懸命、けなげに生きていたのだということを感じ、同時に、矢田さんの「若い人たちのために平和を護らなくては」の思いがひしひしと伝わってきて、クロージング場面では、拍手をしながら感動の涙が湧いてきました。
矢田さん、俳優・スタッフの皆さん、素晴らしい舞台を有難うございました。あと3日、頑張ってください!(三女)