村上春樹の本のことを書いたときに書いた蕎麦屋の出前持ち云々は、この本の「蕎麦屋の出前持ちまでが(これは差別発言ではないかと思うが)<モーニン>を口ずさむほど、ジャズ・メッセンジャーズはよく知られたグループであり、世は「ファンキー。ファンキー」で盛り上がっていた。」という一節でした。
1931年生まれで東大大学文学部美術史学科の学生のころからジャズの真横にいて、評論家という立場になっていった著者がつづる日本のJAZZ史、これは一度ちゃんと読んでおくほうが良いだろう。
「1950(昭和25)年当時学生だったものにとって、ジャズを耳にする機会はラジオかレコードしかなかった。と始まる1章から著者が身を以て体験していく日本のジャズの息遣いが書かれます。
参考までに章立ては、第1章が「カルチャーショック - 史上最大のブーム到来」以下
第2章 「椅子取りゲーム - 本家アメリカのお墨付きは?」
第3章 「ファンキーブーム - それはフランス経由でやってきた」
第4章 「“モード”の時代 - アイデンティティ追求にむけて」
第5章 「発想の転換 - やっと答えがみえた」
第6章 「テイクオフ - 異種格闘技の密林をぬけて」
第7章 「目下飛行中の日本ジャズ - 菊池成孔との対談」
となっていて、頭の文は4章の枕になっています。
ニュー・ジャズ傾向の強い著者ですから、ジャズ評論の軋轢もはさみながら、ジャズの現場がすぐ横にあるようなエピソードがかなりうれしい。
第1章のジョージ川口とビック・フォーのエピソードや2章の秋吉敏子の苛立ち、3章での白木秀雄の行動とか4章での来日したコルトレーンやモンク、エルヴィン・ジョーンズのエピソードはまさにそれを体験しない者の、しかし彼らを知っている者の溝を埋めてくれる。
本は若干話題のために時代が前後してしまいますが、私の実際とかかわって売るのは6章の178ページ、「山下の復活と70年安保の影」だからほとんど終盤、その後16ページでその章は終わって、あとは菊池成孔とのたいだんだから、そちらはパス。っていうことで私の聞いてきた40年以上はほとんどなしなわけだけれど、著者自体が、もはや興味なしというのだからしょうがない。
問うことで全史とあるけれど、20年ぐらいJAZZを聴いている人でも、至高の日本JAZZ前史っていうほうが正確かもしれません。
そう思えばとても楽しい本です。
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