図書館は結構利用させていただいていますが、松葉杖ではとしばらくご無沙汰したら、貸出期限が過ぎた本が貯まってしまいました。
まだ家に2冊残しているのに、気になった本が有ったので、すまぬと言いながら貸していただきました。
若くして膀胱癌に倒れた松田優作というヒーロー的俳優がいました。
TVドラマ「太陽にほえろ」で脚光を浴びた、特出したキャラクターの持ち主ですが、私は特にヒーローとしてあがめた事は有りません。
好きだった鈴木清順監督のの映画「陽炎座」で(久しぶりに清順の映画見たくなった。)面白いと思い、その後森田義光監督の「家族ゲーム」でのキャラクターが好きでした。
遺作となった「ブラック・レイン」の演技も確かに凄いと思いましたが、日本映画の方が記憶には強く残っています。
この松田優作について、結婚をし、一児をもうけた松田美智子が評伝しているのがその本です。
「ブラック・レイン」の撮影にガンの進行を承知でのぞみ、死期を悟った鬼気迫る演技で誰をも圧倒し、そして芸に殉じたのだという一般に流布していることに関して疑問を呈した本だそうですが、私には別の興味がありました。
松田美智子はノンフィクションライターとして社会の暗な部分で起こった事件について、硬派にしっかりと書き込む方と当初より思っており、松田優作の奥さんなどということは関係ないライターだと好意的に思っていました。
作品には「女子高生誘拐飼育事件」「美人銀行員オンライン横領事件」などを覚えています
。
その人がかって夫君を、それも離婚した相手を評伝すると言うことはどのようなことなのでしょう。
ノンフィクション作家として、真実以外を書くことは出来ず、又ある意味隠すこともはばかられる状態、松田優作のその後の連れ合い、いや優作を奪ったような存在の松田美由紀の存在も重たくあるはずです。
私の興味は身近な人を表現する行為、それは自分の娘の父親でもある人物を文字にし残す行為、そこにはライターとして超えなければならない多くのものがあったはずで、それを越境した松田美智子そのものの表現に興味がわいたのでした。
本の方は
序章 去っていく後ろ姿
1章 出会いから同棲へ
2章 おいたち
3章 スターへの道
4章 離婚
5章 闘病、そして死
終章 片目の男
からなっていて、松田優作と松田美智子、又優作を取り巻く人々の関わりから優作のアイデンティティを浮き立たせた労作だとおもいます。
残念ながら身近な者を書くと言うことの焦燥感や不安を読みとる事は出来ませんでしたが、この本を書くために20年の歳月が必要だったと松田美智子自身がいっているように、優作に対して許しを与える事を自身に許した結果の著書で有るように読めました。
そこには素直な松田優作への目が存在し、3章までは深い思いでの有る部分であり、生き生きした優作が伝わってきます。
4章以後は、優作自身と関係ないと割り切ったのか、離婚にいたるドロドロや、松田美由紀の存在感は希薄で、引き続きその重みが読みたかった。
20年を経て松田優作への自信と愛が深く感じられる作品は、やはり当事者の重みでかかれたものでした。
今年は昔に敬愛した詩人や俳優の知らない部分を読んだ事となり、そんなことあるわけないけれど、自分の重みが少し増したような気になりました。
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