キースのアルバムを取り上げたことはありますが、それは思い出として語ったことで、アルバムの内容に関しては一切レヴュー(もちろん良いとは書いている)みたいなことは書いていません。
キースのここのところ来日で、はとても良い席で見ることが出来ています。何年かに一度キースにあうことがいつまで続くのでしょうか。
このアルバム2001年に来日した折の東京録音です。
1曲目、Horace Silverの“Strollin'”がとてもリラックスして良い、難病からのカンバック後の初来日、カンバック後に録音した「The Melody At Night」の雰囲気が出てるような力まない,よくスイングする演奏です。
4月30日のメトロポリタン・フェスティバル・ホールと4月24日のオーチャードのサウンドチェック時の録音で、2曲目も、ジャレットの普段のスタンダードよりストレートに、メロディのラインを大切にした生き生きとした感じです。
この年の来日公演の模様はすでに「Always Let Me Go」という2002年にでたアルバムに録音されており、その内容はスタンダードでないフリー・インヴィゼーションが中心でした。
私はこちらの4月23日オーチャードホールに行ったのでした。
久しぶりのキースは開演からぶっ続けでインプロヴィゼーションするのに驚いたことをおぼえていますが、その後のメディアで、ほかのコンサートではスタンダードを演奏したと知って、それも聴きたかったと残念に思ったことを思い出しました。
そしてそれを聴くことが出来ることになりました。
3曲目“Yesterdays”を聴いているとジャレットもフレーズを紡いでいく他のピアニストと同じ,とても素直にプレーしているなどと変なことを考えてしまいます。
4曲目、そうは言っても圧巻のタイムとメロディが聴ける1曲、完全に復調していてとても元気が伝わりますし、それに合わせるディジョネットとピーコックが喜びに満ちた音を出しています。
5曲目の“You've Changed”、G・ピーコックが確りした音で(残念ながらこのごろ指の動きとか強さにかげりが・・)とてもいいものを聴くことができました。
そして6曲目スタンダード演奏としてはおなじみのナンバー“Scrapple From The Apple ”でも思う存分弾いている感じです。
7曲目、キースのスタンダード演奏の中でもこれほどゆったりとした、和んだ演奏があったでしょうか、キースのうなり声が実に楽しそうに聞こえるのです。
8曲目“Smoke Gets In Your Eyes ”のイントロから曲のテーマに入り、展開していく感じは、その後のスタンダード・トリオの一番好きな形のなりました。
9曲目は“Stella By Starlight”でこの曲は公演の曲でなく、オーディオ・チェックの曲とのこと、このアルバムに通じるキースの硬さを抜いて、でも曲に迫るようなところがチェックから出たのでしょうね。
チェックのためにドラムスもベースも思い切り自分の音に入っていることが面白い貴重な録音のように思います。
私の見に行ったフリースタイルの演奏も、このアルバムのどちらの場面にあっても、それが真摯な演奏であれば感動はあるのです。それを二つこなす、キースがいたのですね。
どちらが良いという問題でなく、この二つがともにあったこと、ひとつだけを知っていた者にとっては、このアルバムはある意味、本当の(当時の)世界を知ることが出来たうれしい一枚でした。
キースがフリーに冒険した1枚、キースが気持ちをリラックスして自由に1枚みたいに思うこと、キース・ファンには解ると思います。
Yesterdays / Keith Jarrett
Keith Jarrett(P)
Gary Peacock(B)
Jack DeJohnette(Ds)
April 24 and 30, 2001
1. Strollin'
2. You Took Advantage Of Me
3. Yesterdays
4. Shaw'nuff
5. You've Changed
6. Scrapple From The Apple
7. A Sleepin Bee
8. Intro - Smoke Gets In Your Eyes
9. Stella By Starlight