キース・ジャレットが好きでずっとともに歩んできた感があります。
キースの演奏が物心付いたときにはすでにあった若い世代のピアニストが、キースの感覚を当たり前に弾くことは、決して悪いこととは思いません。
キースが一番影響を受けたのはビル・エバンスだと思うのですが、キースがピアニストとして名声を得ていく途中で影響を与えたと名前を雑誌で見たことがある2人のピアニストがいて、そのピアニストの演奏を聴きたいとずっと思っていました。
一人はエリック・ドネーで去年アルバムを仕入れることが出来ました。
そしてもう一人がジョン・コーツ・jrでソロを手にいれました。
キースに影響を与えたといっても1977年の録音、もはや影響など関係ないような時代だと思うのですが、ただプレーはとても面白い演奏です。
70年初期のキースがフォークやゴスペルの曲を素材に演奏して、それはとても私の心にしみるものでしたが、このアルバムその後数年たって、その演奏を再び実現しているような感じです。
ジョン・コーツは、キースより7歳の年長32才のときの演奏です。
1曲目から確かにキースに似ています。キースがジョン・コーツに似ているとは言われることがないでしょうから、こんな表現も許されたい。実はキースのほうがジョンをずっと聴いていたのでした。逆ではありません。
左手のブロックの感じにていますし、うなり方までいいタイミングです。
ジョン・コーツという人はペンシルバニア州の小さな町ポコノのクラブでジャズクハウスピアニストとして活動をし続けた人、その枠をあくまで守って、そしてこの演奏ですので孤高の感があります。
そしてこのアルバムも最後の曲を除いて、そのクラブでのライブです。
2曲目はただひとつのスタンダード、コーツの実力がわかるところですが、この演奏を聴くと、たとえばアート・テイタムとか確り盛り込まれたすばらしい演奏だと解ります。
3曲目、キースに影響を与えたというエリック・ドネーのアルバムでも感じた、サザン・クロスの風、南部のアーシーなブルースをいつもインプロのベースにもっているキースととてもクロスするのです。
それこそ、77年にこのピアニストに出会っていたら、キースが前衛に行ってしまったと、こちらを大好きになっていたかもしれません。
ジョン・コーツという人、こうして聞いてくると、中央で活躍はしていませんが、テクニカル的にも凄い演奏で、それはキースに似ているといわれていることでもわかるのですが、タイム、ハーモニーなど、ソロでここまで聴かせるのです。
ハウス・ピアニストとしてこのようなソロばかりでなく、もっとあっけらかんと弾いていたことが、多かったのではないでしょか、ジャ家の二人の姉妹との写真を見るととても幸せそうなオジサンです。
しかし6曲目に“Homage”など内省的なしっとりした演奏もしています。
7曲目はラグも難なくこなす、ハウス・ピアニストの、ところがこのメロディラインが凄いのです。これって驚くべきラインなのです。
8曲目はやさしく自然を楽しむような、カントリー調の好きな曲、この調子もうまいと思いますが、その前なども考えると、このピアニスト本当に只者でなかった、このような人が田舎に留まって弾いていたのだと、その凄さを思い知るのでした。
最後の曲だけ大学での講演の模様で整然としていますが、その前がよいのでまあいいかのエピローグです。
キースが影響を受けた、キースに似ている、そんなことで聴きたいと思ったピアノストですが、もっとそこにはコーツ自身のすばらしい音楽があったことを、当然に思える演奏です。
ALONE AND LIVE / Jhon Coates.Jr
Jhon Coates.Jr piano
1) PROLOGUE (NO.39)
2) WHEN IT'S SLEEPY TIME DOWN SOUTH
3) NEVER HAVE KNOWN AN ESTHER
4) SKETCH
5) MIXED FEELINGS
6) HOMAGE
7) SOMETHING KINDA SILLY
8) THE END OF THE BEGINNING
9) THE PRINCE