都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

都市危機のアメリカ(矢作弘):アメリカの知識は使えるが、論文まとめで一貫性がなく、文章も問題

2021-10-17 03:12:37 | 都市計画

 全体にまとまりがない論文寄せ集めだが、情報として使えるものがある。文章のおかしなところや繰り返しが多く、論旨のフローに欠ける。知見は:

 

創造的都市

・リチャード・フロリダの17年の転向で自説の欠陥を指摘、創造階級3Ts Tolerance, Talent, Technologyから都市間、都市内での不平等の拡大→エンリコ・モレッティがまとも( https://blog.goo.ne.jp/n7yohshima/e/2d4a51a44f7b5970c431b115b475a38d )ポスト・コロナでも対面の重視を指摘

ジェントリフィケーション( https://en.wikipedia.org/wiki/Gentrification )

・アマゾンの大型開発によるニュー・ヨーク植民地化→大型開発の手法が問題であり、分棟型で用途別にスケールを区分する手法が有効( 拙論 http://www.eonet.ne.jp/~n7ohshima/TosinkoushinPro.pdf )

・割れ窓防止と創造階級の誘致、既存のコミュニティの破壊と格差の増大→開発は容積の有効利用であり、大型化し、都市の中の「都市」を作るのが問題なのでは、足元の商業や広場の賑わいを負担させるなど代替を考えるべき

・経済の外部不経済( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E9%83%A8%E6%80%A7 )家賃の高騰による転出などは成長のオーヴァー・シュートと考えるべきでは

 

ポスト・コロナ

・Death of Distance(1997)から、都市の中でファースト・クラス(テレワークできる)とエコノミー・クラス(エッセンシャル・ワーカー)の分断

・スペイン風邪は「忘れられたパンデミック」で都市に回帰とイケイケ時代に

ラストベルトの格差

・コネチカット(武器産業のメッカ)の勝ち組グリニッジ(ニュー・ヨークの出島、ヘッジ・ファンドのクラスター)と負け組ブリッジポートの格差拡大、教育が問題

・ネクロポリス(荒廃都市 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%B9 )から甦るラストベルトの一部都市:コロンバス、クリーブランド、シンティナティ、アクロン(オハイオ)、セントルイス(ミズーリ―)、フィラデルフィア、ピッツバーグ(ペンシルバニア)、ロチェスター(ミネソタ)、ロウエル(マサチューセッツ)、シーダラピッズ(アイオワ)そしてデトロイト(ミシガン)

・ボストン、ワシントン、オハイオが実質給与所得(給与―生活費)ベスト3

・コトキンのハイテク分類:コーダー系(IT)とエンジニア(製造)系に二分

 

ショッピング・センターの終焉

・2007年に新規開店0

・スーパー・ リージョナル:620ヶ所、床面積3.4万坪、リージョナル:600ヶ所、1.6万坪

・アンカーはデパート→デパート自体が不況

・デトロイトのノースランドセンター(シカゴのハドソン百貨店 1954年)が第一号、V. グルーエンがウイーンのリングシュトラーセをモデルに用途混合、住宅も設置予定で、コミュニティのTransfigration(変容)の核と位置付けたが失敗、単なる商業に

・稼げるショッピング・センターはA. トープマン:売り場効率を重視、その後ディベロッパーは開発し転売をし、テナントもナショナル・チェーンで金太郎飴になる

・郊外は均一志向で利己的、コミュニティとしてまとまらない

 

郊外学は

・勝ち組と負け組(住民層による)の格差

・エッジシティ(郊外衛星都市)の変化

・都心のアメニティや集積を持つ郊外都市

 なにやら尻切れトンボで情報レポートに近く論文の主旨とフローが弱い。教授で東京と京都ぐらしというが、バブルの頃のアメリカ開発情報みたいだ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イノベーションの歴史(橘川... | トップ | コロナ禍が峠を過ぎ、対面、... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

都市計画」カテゴリの最新記事