二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

夜空の眼(ポエムNO.3-02)

2018年04月08日 | 俳句・短歌・詩集
年老いて無感動になってしまった黒い牛が
ゆっくりと夜空をわたっていく。
星が消えたりまたたいたりするので それがわかる。
しっぽがぼくのおでこを ときおりこする。
よだれの飛沫も飛んでくる。

夜空の黒い牛は足音をたてない。
牛は立ち去る
そして時代を伐りひらいた 大いなる人物も。
明日は・・・明日はだれのための時間だろう?
人生の締め切りがせまってきた 

ぼくやぼくの友人たちにも。
大都会の納屋の片隅で
髪を振り乱したあわれな女が泣いている。
夜空から黒い牛の大きなまなこが
それを黙って 見下ろしていてね

この世は「取り返しがつかないこと」だけでできている。
そのことを悟るために なんと
六十有余年がかかったんだ。
帆船の帆のようにはためくもの
きみをきみ足らしめているもの

石の中に固い眼があるように
夜空にも無数の眼が 埋め込まれている。
昨日も純白のリネンにつつまれた高貴な人を 見送った。
やがて ぼくの順番がやってくる。
それはたしかなことさ。

もうすぐ夜空から
この世を見下ろすことになるだろう ぼくも。
牛ではなく 一匹の
一匹のキリギリス であったとしても
その声をきみは聴きわけることができるかなあ。

とりあえずさよならといっておこう
それがいえるいまのうちに。


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