二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

その光なのさ(ポエムNO.4-17)

2020年09月01日 | 俳句・短歌・詩集
   (2017年5月 前橋市)



里芋の大きな葉陰でだれかが
だれかを呼んでいる。
時はしぶきを散らし もんどり打って
ぼくたちのあいだを流れてゆく。
ひとときも休まず。

見えるものと見えないもの
大空を滑空する鳶
ふところをくすぐるキリギリス
急ぎ足で目のまえをかすめてゆくセセリチョウ
見えないものとはなんだろう。

それは存在するんだけど
ぼくたちは普段は意識しない。
おやおやあれは 家持さんではないか?
永遠に古くはならない万葉集からはいだして
里芋の葉陰で二番目の妻といちゃついている。

この透明な絵具で描かれた壁画のなかに
活気に満ちた人びとが暮らしていた。
いまだって 里芋の葉陰でいちゃついたり
水を飲んだり 飯を食ったり
そしてあまり意味のない会議に余念がない。

宇宙船地球号のうえで
千年二千年がまたたくまに過ぎてゆく。
芋の葉からしずくがしたたり
キラリと光って消えてゆく。
その光なのさ ぼくたちは。

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