二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

写真家・葛飾北斎

2015年11月29日 | 写真集、画集など
わが国最大・最高の画家(絵師)はだれだろうか?
そういう質問をしたとき、わたしが決まって思いえがくのは、葛飾北斎である。
とにかく巨大、スケールの大きさでは、他の画家をまったく寄せ付けない。
はじめて北斎の画集を手に入れたのはいつごろだろう?
普及版で紙質はよくなかった。しかも製版の技術も、現代と較べると劣っている。1960年代70年代の本である。

古本屋で見つけては、集英社の画集をバラで買いあさっていた時期がある。その中に北斎もあったが、そのころはあくまで「すぐれた浮世絵師の一人」という認識であった、
写真に対して意識的になって、図書館通いしながら写真集を読み漁ったのは90年代の初頭ではなかったろうか? そのとき、北斎の画集をたまたま手にして見はじめ、「眼からうろこ」の体験をした。

大げさなようだが、まさに驚愕だった(*゜∀゜*)
なぜ驚愕したかというと、わたしは北斎の中に一人の傑出した写真家を発見したのだ。
望遠、標準、広角、マクロ。北斎の眼は変幻自在のレンズである。
ここでトップにあげた一枚をよくよくご覧いただきたい♪
これは「冨嶽三十六景 尾州不二見原」と題された作品である。なんのために使用するのか、桶職人が、背たけほどもある大きな桶を作っている。それが前景となって、田や木立が中景に見える。そして遠景・・・はるか彼方に小さくのぞける富士。
北斎は構図を生み出す天才であった。これは写真的にいえば、35ミリくらいの画角によってとらえられている。



こちらは「神奈川沖浪裏」としてだれ知らぬ者のない有名な一枚。これは・・・う~ん、24ミリ、いやいや20ミリの広角レンズが使われているように思える。
魔物が手のひらをひろげて掴みかかるような波頭が、大きくうねっている。小舟はいまにもその激浪にのまれてしまいそう(゜Д゜;) 北斎にしか描けない、大胆極まりない構図である。
北斎の画集を眺めていると、構図の大博覧会である。
写真をやっていく人が、構図について学ぼうとしたら、下手な解説書をひもとくより、北斎の画集をじっくりと眺めたほうがいいとわたしは思う。


「北斎? ああ、冨嶽三十六景か。うん、見たよ。いいよね」
それだけで大抵はすましてしまう。
しか~し、写真を本気で趣味にするなら、もっと本気を出し、腰を据えて北斎にかかっていったほうがいい。「見る」ということの本質は、絵画も写真も同じだからだ♪ 彼は彼の肉眼一本槍であらゆる画角に対応したのである。フォトグラファーとしてのわたしは、ただ敬服するよりほかにない。
北斎は浮世絵版画ばかりでなく、かなりたくさんの肉筆画も残している。当時小型カメラがあったら、きっと写真も撮っていただろう。



これまた超有名な北斎の春画。はじめて見たときはショッキングだった。
こんな奇想の絵画は、北斎以外には描けなかったろう。単純な意味のエロ&グロではない。
歌麿も英泉もすぐれた画業を後世につたえているが、北斎と比較すると、やや色あせてみえる。
画狂人、画狂老人とも号した北斎。彼は「なんでも」描こうとした。彼を意識した写真家に荒木経惟さんがいることはよく知られているだろう。荒木さんは、一時期写狂人と名乗っていた。



この一枚は今回はじめて知った。
ネットにつぎのような解説があるので引用させていただく。
《長野県にある岩松院の天井に描かれた天井画。そのサイズはなんと畳21枚分。この大作を86歳から87歳までの1年かけて仕上げたというからすごい。とにかく迫力が半端ない!ビビッドな色味、鳳凰の目力も尋常じゃない。まさに魂が込められているような力強さがびしびしと伝わってくる。ちなみに天井画は今も当時の色彩と光沢を保っているという。》
葛飾北斎に関してはウィキペディアに非常に詳しい記事が掲載されているので、興味のあるかたは参照して欲しい。当代にならぶ者のない、破天荒な人物であった。

以下わたしのコメントはくどくなるから省略し、代表作を2、3陳列するにとどめよう/_・)/_・)







つい先日、BOOK OFFを散策していたら別冊太陽「北斎 決定版」というのを見つけて買ってきた。
これを拾い読みしているうち、北斎にたいする情熱が再燃した。3万点を超える作品を発表したといわれる北斎。



小布施の北斎館へいくか、すみだ北斎美術館へでも出かけてみようか。わたしの知らない北斎、凄味のある傑作・秀作が数多く存在するに違いない。



※本の写真以外はネット上から引用したものです。いちいちお断りはしておりませんが、この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

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