二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

朝比奈隆とブルックナー

2019年12月29日 | 音楽(クラシック関連)
名指揮者といわれる人の多くが、晩年、最晩年にいたって、ブルックナーにたどり着く。わたしがすぐに思い出すのは、カラヤンであり、ヴァントであるが、小沢征爾も、数年前にブルックナーの全曲盤をリリースしたらしい。

ところで、一昨日からわたしもブルックナー熱が再発し、CDラジカセやらミニコンポ等で、ブルックナーに入り浸っている(^^♪
どう表現したらいいのかわからないが、ブルックナーの音楽につつまれていると、気持が落ち着き、ある特別な安らぎに満たされる。

その中心にSymphony NO.8ハ短調がある。
これはいまのわたしには“至高の音楽”といえるもの・・・大げさだけど。

CDだけでは見えないところがあるので、DVDが欲しいなあと思っていた。そうか、待てよ!
そしてYoutubeを検索してみたら、これが出てきた!

■大阪フィル 2001年
https://www.youtube.com/watch?v=HIailLD2Rr0

ここは東京サントリーホール。
朝比奈隆さんは、2001年12月29日、93歳で逝去。とすれば、この演奏、最晩年の朝比奈さんの指揮ぶりをつたえていることになる。
登場するときの様子は、さすがに少し痛々しいものがある。だけど、指揮台に立って、指揮棒を手にすると、矍鑠たる表情が漲ってくる。ときおり見せる鋭いまなざしに、しくじった奏者は震え上がるかもしれない。

いつもいつも、最高・最良の演奏ができるわけでじゃないのだ。それがすべて、創立者・統率者たる朝比奈さんの耳には入っている。
しかもライブならなおさらだろう。観客のいないホールで、録音のため、何度も演奏し直したわけではない。

こんなにもわかりやすく、各パートの奏者に細かい指示を出す人だったのか?
右手で指揮棒を振り、左手でそのうえ何事かを奏者につたえる。開始のタイミングなのか、強弱なのか、テンポなのか、一人一人の表情まで、彼には見え、出す音が聞こえているわけだ。
向き合っている相手は手勢の大阪フィルなのに。
涙、涙、涙。
涙。
泣いているわけではないのに、涙がこぼれて仕方ない。
2001年7月25日、東京。この日、わたしはいったい、どこで何をしていたろう。

この8番、日本人がつくりあげた最良のブルックナーだろう。
モーツァルト、ベートーヴェンにはどうも不感症になってしまったわたしが、ブラームスをへてたどり着いたのがブルックナー。
5番もいいが、少々長すぎて余計なおしゃべりが耳につく。7番もいいが、第4楽章が力不足。第9番はすごい音楽だけど、第4楽章を欠いている。

自分のパートにしか責任をもたない奏者たちが仰ぎ見るのが指揮者。どれほどの名人芸を誇っていようが、Symphonyの中では、構成要素の一部なのだ。いうまでもないことだが、音楽を、いまそこで、つくっているのは指揮者なのである。
Youtubeのこの映像を眺めていると、フルートやオーボエ、ホルンがどこで参加し、退き、打楽器が舞台に躍り出たかと思うと、ヴァイオリン、チェロ、バスが絡み合って、分厚い弦を奏しながら上昇し、下降する。そのありさまが、手に取るように見えてくるではないか(*・д・)

この交響曲はカラヤン&ベルリンフィルのものでも、ヨッフム&ドレスデンのものでもない。
朝比奈隆と、大阪フィルハーモニー交響楽団の数十人のメンバーによって、「この場」で作り出された音楽なのだ。
朝比奈さんの全身から、いまここで生まれてくる音楽。
それが聴衆にライブとしてつたわっていく。皆さん、そのことに感動している。だから、15分近くも歓声と拍手が鳴りやまなかったのだ。

一方こちらはN響とやった8番。(参考)
https://www.youtube.com/watch?v=KVIxR5ifIP4&list=RDHIailLD2Rr0&index=4

わたしが聴いているCDはあくまでCDなので、つくられた音である。そのうえ、わたしのパソコンのスピーカーは最低レベル。しかし、ここから推測はできる。
8番は骨格がしっかりし、美しいディテールに満ちている。しかもムダがいっさいない。
各パートの奏者にとって、腕の見せ所はいくらもあるし、だれがやっても“名演”になるといってもいいのかもしれない。
オーケストラの実力が試される、メンバーにとっては“怖い”曲だろう。

あれも聴きたい、これも!
わたしの聴き比べなどタカがしれているけどねぇ(*゚v`)ノ
クラシック・ファンの愉しみといえば、そこにいきつく。

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