
人は何をするためにこの世に生まれてきたのだろう?
だれもがモーツァルトや
ロバート・フランクになれるわけではない。
ああ 今夜もワイン 安物の赤ワインを呷っているね
かすかに鼻歌をまじえながら。
夕べ 見知らぬ男が
コツコツ コツコツと靴音を響かせ
ぼくの夢の底を歩きまわっていた。
その男が朔太郎であったのかボードレールであったのか
しかとは確認することができない。
無名の男にだって
「無名の男」という 名がある。
銀貨か銅貨の裏側みたいな。
そこから退屈な 退屈な
長い物語がはじまっている。
人は何をするためにこの世に生まれてきたのだろう?
すでに六十をとうに過ぎてしまったぼくには
そんな問いを問う資格があるはず。
築後五十年はたった ほの暗いバーの止まり木に腰かけ
だれかが現われるのを待っている
今夜も そして明日も。
たぶんそうして いつのまにか歳をとってしまった男。
モーツァルトを待っていたのかフランクを待っていたのか
いまとなってはたしかめる術とてありはしない。
Adieu!
ぼくの夢の中に
飲み残したワインの一口のように
ため息だけを残して
立去った男 無名の
背の高いひょろりとした男よ。
きっといつか現われる・・・
華やかな衣装をまとい
輝かしい名声につつまれて登場すると信じて
自分自身を待ちつづけていた 男
男よ。
だれもがモーツァルトや
ロバート・フランクになれるわけではない。
ああ 今夜もワイン 安物の赤ワインを呷っているね
かすかに鼻歌をまじえながら。
夕べ 見知らぬ男が
コツコツ コツコツと靴音を響かせ
ぼくの夢の底を歩きまわっていた。
その男が朔太郎であったのかボードレールであったのか
しかとは確認することができない。
無名の男にだって
「無名の男」という 名がある。
銀貨か銅貨の裏側みたいな。
そこから退屈な 退屈な
長い物語がはじまっている。
人は何をするためにこの世に生まれてきたのだろう?
すでに六十をとうに過ぎてしまったぼくには
そんな問いを問う資格があるはず。
築後五十年はたった ほの暗いバーの止まり木に腰かけ
だれかが現われるのを待っている
今夜も そして明日も。
たぶんそうして いつのまにか歳をとってしまった男。
モーツァルトを待っていたのかフランクを待っていたのか
いまとなってはたしかめる術とてありはしない。
Adieu!
ぼくの夢の中に
飲み残したワインの一口のように
ため息だけを残して
立去った男 無名の
背の高いひょろりとした男よ。
きっといつか現われる・・・
華やかな衣装をまとい
輝かしい名声につつまれて登場すると信じて
自分自身を待ちつづけていた 男
男よ。