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昨日は中学校以来の友人Aさんが開催した「私の本もの美術館」展へいってきた。
なにかの手違いで案内状が手許にとどかず、最終日にようやくまにあったのだ。
十年ぶりか、もっと長らく会っていなかった。
はじめは画家志望だったが、25才ころから、コレクターの情熱にとりつかれたらしい。
コレクターというのは、ある種のライフスタイルだろうとおもう。
男性なら、あるいは女性にだって、コレクターとしての資質をもった人が大勢いる。
しかし、大抵は数年、せいぜい10年で、そういった情熱にかげりがさすものである。
ところがこのAさん、会期中に還暦を迎えたのに、コレクター熱はまったく衰えがないようである。
しかも、元手がかかるコレクション。
家が一軒建つくらいの資金をつぎ込んでいるといっていた。
「私の本もの美術館」
http://www.amazon.co.jp/%E7%A7%81%E3%81%AE%E6%9C%AC%E3%82%82%E3%81%AE%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8%E2%80%95%E7%B5%B5%E7%94%BB%E8%92%90%E9%9B%86%E4%BD%99%E8%A9%B1-%E7%A7%8B%E5%B1%B1-%E5%8A%9F/dp/493874080X
つまりそれだけの犠牲を払って、この一筋につながっている。
「絵は大好きですよ」といっても、わたしなどはせいぜい画集を集めるというレベル。
ところがAさんは「本もの」を買って、愛蔵してきた。
昨年は造本・装幀ともに、自費出版としては贅沢な本を刊行し、評判になった。
25才からはじめたとして、35年間。
決して雄弁家ではないが、語りはじめると、情熱のうねりが波濤のように打ち寄せる。
地元在住の大勢のアマチュア画家や、絵画の愛好家がやってくる。
新聞に紹介記事が掲載されてからは、応対のいとまがないほどだったらしい。
「芸術の中で、文学や音楽や映画と較べ、絵画は愛好家が少ないとおもっていたけれど、今回の展示で、そうではないことがわかって、じつに有意義だった」と彼はよろこんでいた。
彼が所蔵する絵と、本の中でめぐり逢って、ぜひ本物を見たいと青森県からやってきたファンや、会期中、3回も会場を訪れるという熱心なアマチュア画家が彼を勇気づけたのである。
所蔵作品は400点を超えている。その中で、今回展示できたのは、半数に満たない。
いつごろ、どんな経緯で、いくらで手に入れた作品かを彼はすべて覚えている。
小学校だか中学校だかの教員をしながら、絵画を眺め、気に入ったものを買って、それを所蔵する。資産家でもないし、高給取りでもない。
「この情熱はなんだろう?」
ある意味で、無償の情熱といっていいだろう。
はっきりいえば、そういう種類の情熱とは、わたしは、バルザックの小説の中でしか、出会ったことがないのではないか・・・とかんがえた。
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<会場風景1>
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/77/10975903d934292a1f18700df669f242.jpg)
<会場風景2 地元画家Tさんと記念写真>
「気に入れば、有名、無名は関係ない。ただし、気に入ったからといって、必ずしも手に入るわけではない。そこがおもしろいですよね」
ふむむ~。
版画は別だが、基本的に絵画は一点ものである。写真がいくらでも複製できることとは、まったく違った存在のありようである。
わたしはこの会場で、絵画と写真の違いについて、ずいぶんいろいろなことを感じたり、考えさせられたりした。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/e0/5bafb84c2af1dc0d054fc8ba7a91bc52.jpg)
<2点とも、わたしの好きな版画家北岡文雄さんの作品>
とくに下の一枚はAさんがコレクターを意識するようになってはじめて買った作品なので、ひときわ愛着があるという。
わたしは現代絵画についてはまったくのところ、無知蒙昧(^^;)
さきに書いたように、絵はもっぱら画集にたよって、愉しんできただけ。だから「本物」にこだわるAさんの熱意のピュアな輝きがまぶしいのである。
「さあ、これを見て下さい!」
彼はそういって、作品を指さす。あとは・・・原則として作品が語るにまかせる。すぐれたものは、有名、無名を問わず、必ず人を引き寄せるという、信念のようなものが、彼をここまでつれてきたのだろう。
実生活の上では、Aさんにしたって、いつも順風満帆でここまでやってきたわけではあるまい。あれこれと想像すると、ただなんというか、こうべをたれたくなるのは、おそらくわたしだけではないのである。これが、この盛況となってあらわれた。
おめでとう! とあらためていっておこう。きっと、まだ道半ばなのだろうけれど。