二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

夜逃げとタチアオイ

2016年05月27日 | Blog & Photo
今日は「夜逃げ」をした女性(仮にBさんとしておく)の部屋を開けて、検分をしなければならない日である。お天気同様、なんとなくどんよりとして、気分が重い。
わたし一人で立ち入るのではなく、賃貸保証会社の担当者が同行する。警察官に「立ち会い」をもとめるケースも考えられる。

Bさんは入居したあと、半年もしないうちから、家賃の滞納がはじまり、保証会社に対応を一任してあった。わたしの管理物件に、他社が客づけしてくれたから、わたしは彼女の顔は知らない。まだ二十代の前半、職を転々とし、いまはどこに勤めているのかわからない。

「夜逃げ」といっても、夜逃げるわけではない。家財の全部、または一部を室内に残したまま、行方不明となり、連絡がまったくとれなくなってしまうことを、この業界では「夜逃げ」と称している。このBさんの場合、月額家賃は48,000円。それを3ヶ月あまり滞納。

最初は「同棲カップル」として入居を希望し、保証会社の審査が通ったが、そのお相手とはすぐに別れたらしく、別な男性とくっついた。男性や職場を転々とし、しばしばウソをつく。いい逃れのためのウソ(^^;) 家賃ばかりでなく、水道料金、電気代、ガス代なども滞納している。
Bさんとはこれまで紆余曲折があったが、とても書ききれない。

わたしがおつきあいしている人の中には、有価証券、預貯金、不動産評価額あわせて、23億円という資産家がいる。10億円程度の資産家がほかに数人。その一方で、3万円の家賃の支払いに苦労する人があるし、生活保護者がいる。
こういう目がくらむほどの「格差」の中で、仕事をしている。また大勢のうちには、クレーマーといえるようなたちの悪い人もいて、うっかりしていると、金を脅し取られる。
夜逃げにあうのはこれがはじめてではない。首つり自殺をとげてしまった人がいるし、たばこの火の不始末から、一酸化炭素中毒死した入居者もいる。
不動産管理とは、社会の縮図をそのまま見せられているようなものである。

トラブルがつづくと「仕事いきたくない」病に陥る。年をとったため、以前にくらべ、ケアレスミスがふえ、入居者にご迷惑をかけることもある。人は卑小なことで、ときに深刻に争う生きものである。
どうしたらイイのか、暗然たる思いに胸をふさがれる日がある。
仕事場というのは、半分は戦場のようなもの。修羅場をくぐり抜けねばならぬとき、致命傷を負わないよう、せいぜい気を付けることだ・・・と自分にいいきかせる(/_;)

さてトップにあげたのは、この時期、アジサイとならんで巷に彩りをもたらしてくれるタチアオイ。
少年のころ、祖父や母の手伝いをしていたが、昔の麦刈りは、とても不愉快な重労働だった。庭先にタチアオイの花が咲いていて、わたしはそれを眺め、眺め、チクチクと肌を刺してくる麦の穂やもうもうと立ち込めるホコリとたたかっていた。肌を守るため、軍手をはめ、首に手ぬぐいを巻くと、この時期の蒸し暑さが骨身に応える(~o~)

タチアオイ=麦刈りの季節=辛い肉体労働





わたしのイメージではこの三つがセットになっている。機械化がすすみ、現在では「辛い肉体労働」がぐんと軽減された。
タチアオイが、わたしを遠い少年の「あの日」へと誘う。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 背景のコントロール | トップ | 橋の下 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Blog & Photo」カテゴリの最新記事