二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

猫に向かってシャッターボタンを(ポエムNO.4-26)

2020年09月19日 | 俳句・短歌・詩集
   (2018年4月 前橋市)



世界はおれを待っている。
そんなことをぶつぶついいながら
墨染の衣を着た男が街角を曲がって
一昨日のむこうへ見えなくなった。

世界はあたしを待っている。
そんなことをつぶやきながら
スパンコールのドレスを着た女が
あさっての方角からやってくる。

すれ違ったとき火花が散った
だれもが日常の中で散らしている 目に見えない火花さ。
あっけにとられながらぼくは缶入りウーロン茶を飲んだ。
ついさっき自販機で買ったばかりの。

それを飲んで息をととのえながら
すれ違っていった人たちのことをかんがえた。
見とどけたい驚異は日常のうちにこそある。
それを射止めるためにカメラを持ち歩くんだ。

泥の飛沫が飛び散ったような時間が流れる。
ベンチに腰をおろしていたら猫が足許に寄ってきた。
おおそうかおまえもか そういいながら
そこにいた 猫に向かってシャッターボタンを押すのだ。

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