二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

とゆりこうゆり揺られ歩く(ポエムNO.4-23)

2020年09月12日 | 俳句・短歌・詩集
   (2019年3月 前橋市)



現実はそうはいかない。
そうはいかないものが現実なのだから。
落葉樹の下にいるとうなじに秋の訪れを感じることができるんだ。
このあいだ山頭火が教えてくれた。

街角から消えたものがあるってえのに
だれも消えたことに気がつかない。
シアワセであること
フシアワセであること。

あざなえる縄のごとき日常の底辺を
とゆりこうゆり揺られ歩く。
たしかに山頭火 偽山頭火を名のったっていいだろう。
ことばだけでいいならなんとでもいえる。

新たに出現したものにばかり気をとられている。
それが人間たるものの習性。
ヤマバトもイナゴもそんなもの見向きもしないよ。
進化しつづける しつづけなければならない矛盾。

とゆりこうゆり揺られ歩く。
じぐざぐ じぐざぐ揺られ歩く。
あざなえる縄のごとし日常の底辺を。
愉しそうな顔をするのにも飽きたなあ。

どこへ向かっているのかも知らず
男たちはだれもが国会議員みたいにふるまいたがるし
女たちは昔もいまも愛の獲得合戦。
街角から消えたものに気づくヒマなし。

今日の顔はどんな顔の山頭火。
鉄鉢のかわりに古めかしい金属製のカメラをぶらさげ
どこへ向かう どこへ。
あんたがどんな人種か すぐにわかるよ。



※ 「とゆりこうゆり揺られ歩く」は「梁塵秘抄」の歌番号339の今様を下敷きにしています。
「と揺りかう揺り揺られ歩(ある)け」が元歌で、遊女が男をののしったことば。

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