二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

写真を撮る人(ポエムNO.2-36)

2014年05月25日 | 俳句・短歌・詩集
その意味はことばで問えば失われてしまうだろう。
だから見つめるだけ。
考えず 感じるだけ。
そんなにも曖昧で 毀れやすい
一瞬の光景をとらえるために
フォトグラファーはいのちを削る。

途方に暮れたようにたたずんでいたかと思うと
走るように歩いていく。
彼の右手には小さなカメラが握られている。
視線が到達する その一歩先にあるイメージに向かって
彼の指が動く。
・・・動く。

写真には愛情か・・・愛か悲しみかわからないが
とにかくそんなものが写っている。
彼は「それ」を息苦しいほど
感じ
感じて
ことばのはるかこちらに立ち止まる。

一枚のフォトから 別の一枚のフォトまでの
気が遠くなるような段差に躓く。
タイトルや説明はないほうがいい。
タイトルをつけると あるいは説明しようとすると
ありふれたフィクションやウソが混じりこむから。
考えるよりはやく はやく感じること。

つかまるかつかまらないか
一瞬で勝負はついてしまう。
見ることと感じることは一枚の硬貨の裏表。
油断しているとすぐに錆びる。
フォトグラファーはつねに眼を研く。
眼を研く人なのだ。

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