吉村昭は、以前書いたように、書店に出かけるとたくさんの本が、現在でもならんでいる。地味な存在ながら、人気作家なのだ。
ごく個人的な感想をいわせていただくなら、わたしのこの“吉村昭ブーム”は、2021年10月13日、「漂流」からはじまっている。「そうそう、こういう本が読みたかったのだ(゚ω、゚)」
わたしは強い満足感を覚え、新刊書店やBOOK OFFへいっては、吉村さんの本を買った。城山三郎の本を横目で睨みながら、吉村さんの主として文庫本を、つぎつぎと買った。
個人名をカテゴリーの名称としたものは、
塩野七生 23件
吉村昭 19件(つぶやきをふくむ)
の書評をこれまでUPしている。
近い将来、塩野さんを超えることは間違いない。
わたしの場合ノンフィクションの旗手といったら、いまのところ吉村昭にとどめを刺す( ´◡` )
さて、昨日読み終えた「島抜け」について、簡単にメモっておこう。
本書を読んで、わたし的には、吉村昭の本領は長編小説にあり、というかんがえに傾いている。
「なんだか普通の小説だなあ。これじゃ吉村さんじゃなくても書けるよ」と。
「島抜け」は3篇の作品を収めている。
表題作「島抜け」は短編というより、中編といってもいいボリューム。「欠けた茶碗」「梅の刺青」は短編である。
恒例となったBOOKデータベースの情報を、ここでもコピーしておく♪
《読んだ講釈が幕府の逆鱗に触れ、種子島に流された大坂の講釈師瑞龍。島での余生に絶望した瑞龍は、流人仲間と脱島を決行する。丸木舟で大海を漂流すること十五日、瑞龍ら四人が流れついた先は何と中国だった。破船した漂流民と身分を偽り、四人は長崎に送り返される。苦難の果て、島抜けは見事に成功したかに思えたが……。表題中篇をはじめ、「欠けた椀」「梅の刺青」の三篇を収録。》
「島抜け」は、吉村さんの“漂流記もの”として読ませていただいた。“漂流記もの”では、ほかに「アメリカ彦蔵」「大黒屋光太夫」」の大作があり、そのうち読むつもり。
主人公、講釈師瑞龍は助かるのかと思って、多少ハラハラしながら読みすすめたが、やっぱり捕縛され、斬首となる。元ネタがあるようで、そのことを例によって、あとがきにしるしておられる。まずまずの読み応えあり・・・と思えた。
「欠けた椀」は飢饉で倒れていく人々の話で、想像力だけでお書きになったものだろう。手慣れた仕事だが、内容は希薄。勢いで読んだが、物足りない仕上がりである。
「梅の刺青」は献体の話である。
エピソードをつらね、黎明期の献体と人体解剖のことを、縷々綴っている。400字詰め原稿用紙に換算して、100ページくらいのボリュームかな?
切れ味の鋭さは、吉村昭の作家的力量をうかがわせる。
しかし、ラストの雲井龍雄のエピソードが、他のエピソードに比べいやに力がこもっていて、浮き上がってしまった・・・と思えた。これでは、歴史小説からの引越し荷物である。なぜそうなるか理解できぬではないが、このシーンとなると、不自然なほど作者の声が大きくなる。
評価(平均3.5)
「島抜け」 ☆☆☆☆
「欠けた碗」 ☆☆☆
「梅の刺青」 ☆☆☆
ごく個人的な感想をいわせていただくなら、わたしのこの“吉村昭ブーム”は、2021年10月13日、「漂流」からはじまっている。「そうそう、こういう本が読みたかったのだ(゚ω、゚)」
わたしは強い満足感を覚え、新刊書店やBOOK OFFへいっては、吉村さんの本を買った。城山三郎の本を横目で睨みながら、吉村さんの主として文庫本を、つぎつぎと買った。
個人名をカテゴリーの名称としたものは、
塩野七生 23件
吉村昭 19件(つぶやきをふくむ)
の書評をこれまでUPしている。
近い将来、塩野さんを超えることは間違いない。
わたしの場合ノンフィクションの旗手といったら、いまのところ吉村昭にとどめを刺す( ´◡` )
さて、昨日読み終えた「島抜け」について、簡単にメモっておこう。
本書を読んで、わたし的には、吉村昭の本領は長編小説にあり、というかんがえに傾いている。
「なんだか普通の小説だなあ。これじゃ吉村さんじゃなくても書けるよ」と。
「島抜け」は3篇の作品を収めている。
表題作「島抜け」は短編というより、中編といってもいいボリューム。「欠けた茶碗」「梅の刺青」は短編である。
恒例となったBOOKデータベースの情報を、ここでもコピーしておく♪
《読んだ講釈が幕府の逆鱗に触れ、種子島に流された大坂の講釈師瑞龍。島での余生に絶望した瑞龍は、流人仲間と脱島を決行する。丸木舟で大海を漂流すること十五日、瑞龍ら四人が流れついた先は何と中国だった。破船した漂流民と身分を偽り、四人は長崎に送り返される。苦難の果て、島抜けは見事に成功したかに思えたが……。表題中篇をはじめ、「欠けた椀」「梅の刺青」の三篇を収録。》
「島抜け」は、吉村さんの“漂流記もの”として読ませていただいた。“漂流記もの”では、ほかに「アメリカ彦蔵」「大黒屋光太夫」」の大作があり、そのうち読むつもり。
主人公、講釈師瑞龍は助かるのかと思って、多少ハラハラしながら読みすすめたが、やっぱり捕縛され、斬首となる。元ネタがあるようで、そのことを例によって、あとがきにしるしておられる。まずまずの読み応えあり・・・と思えた。
「欠けた椀」は飢饉で倒れていく人々の話で、想像力だけでお書きになったものだろう。手慣れた仕事だが、内容は希薄。勢いで読んだが、物足りない仕上がりである。
「梅の刺青」は献体の話である。
エピソードをつらね、黎明期の献体と人体解剖のことを、縷々綴っている。400字詰め原稿用紙に換算して、100ページくらいのボリュームかな?
切れ味の鋭さは、吉村昭の作家的力量をうかがわせる。
しかし、ラストの雲井龍雄のエピソードが、他のエピソードに比べいやに力がこもっていて、浮き上がってしまった・・・と思えた。これでは、歴史小説からの引越し荷物である。なぜそうなるか理解できぬではないが、このシーンとなると、不自然なほど作者の声が大きくなる。
評価(平均3.5)
「島抜け」 ☆☆☆☆
「欠けた碗」 ☆☆☆
「梅の刺青」 ☆☆☆