二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ひぐらしが鳴いている  2022-19(11月23日)

2022年11月24日 | 俳句・短歌・詩集
ひぐらしが鳴いている。
かなかなかな かなかなかな
かなかなかな かなかなかなかな
同床異夢
異床同夢。

シャガールの絵から抜け出してきたものたちが
あたりをひぐらしのように飛び回っている。
ひぐらしは蜩 日暮しとも書く。
長い一日の涯の夢。
シャガールが夢みた恋人たちの夢。

かなかなかな かなかなかな
かなかなかな かなかなかなかな
むすうのひぐらしが
谷いっぱいに潜んで
花束をシャワーのように投げる。

眼の大きな牛が一頭歩きだす。
家路につく人と
牛の乳を搾る人。
夢のかたわらの偲び愛を
異床同夢というのだろう。

ああ ひぐらしが鳴いている。
「もうすぐ一日が暮れるよ
もう暮れてしまうんだよ」
と鳴き騒ぐひぐらし。
千人の夢の底をゆるがす大合唱。

ほら また何かがきみの顔にふれて
ふれては飛びすさってゆく トンボの翅のようなあれ・・・
あれは天使のつばさかもしれないね。
この世に生まれてきたことを祝福してくれた
あの天使の。

ああ ひぐらしが鳴いている。



※ ご存じマルク・シャガール Marc Chagall(1887- 1985年)は、20世紀のベラルーシ出身のフランスの画家。

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